クリティカルヒット
テレポート。察して舌を打つ。してやられた。こいつ本気で本命が私なのか。
見覚えがあるような、ないような場所だ。人里からは遠いらしく、人の気配は目の前にしかない。ざらつく地面と茂っている木々。日ノ本はこんな場所ばかりだから、デジャヴがあるのも当然か。
天候は曇天。雲はにわかに黒々としている。雨、降るかもしれない。
「ここはね。知ってる? 僕があいつを殺した場所さ。オーベム、サイケこうせん」
「プロメテ、だましうち」
オーベムのわざを食らいながらもとまらないミカルゲの必中わざ。騙し打たれた相手が呻いてよろめいた。
「なんだ。思っていたよりも冷めているんだね。そう大事な物でもなかったってことかい? かげぶんしんで囲め」
「四方にあくのはどう」
まともに当たった闇色の大波に、オーベムが目を回した。急所にでも当たったかな。
「あんたに、訊きたいことがあるんだけど」
「いいよ。なんでも訊いてよ。ネンドール」
ネンドールか。戻ってプロメテ。
「トレミー頼んだ。……なんで、殺した」
するとチヅキは声を隠して笑った。ふふ。ふふふ。子供がいたずらに成功したときに立てるような、愉快を噛みしめているときの声音がカンに障る。
「君に僕を意識してもらうために殺したに決まってる。本当は生かしておいてもよかったんだ。でもそしたら、君はきっと僕でなくてあいつを見るでしょう? ならこっちのほうが効率的だよねって」
「トレミーれいとうビーム!!!」
「だいばくはつ」
圧縮された極寒を受けてもネンドールは落ちなかった。持ち物を何かなんか持たせてやがるな。ズタボロのまま接近してきたネンドールが光を帯びている。トレミーは私の前をどかない。
「トレミー!!」
「……ふぉ…………」
「カラマネロ」
「っ戻ってトレミー! サイカ、メガホーン!!」
命中率八五パーセント? 関係ないね。
サイカはカラマネロに特攻、エネルギーをまとったツノをもってその腹に突撃する。木に叩きつけられたカラマネロは、動かない。
カラマネロをボールに戻しながら、チヅキは満足そうだ。――来る。
「レジギガス。前は二人がかりで挑んできたよね。今度は、倒せるかな?」
サイカが私を一瞥する。目が合う。頷くと、サイカは一歩引いてジョーカーに向き合った。
「サイカ」
私の左腕には、サイカが渡してくれた宝物が光っている。不安がある。罪悪感がある。ごめんなさい、ソウキさん。私はこんなろくでもない形で、あなたの痕跡に手をつける。お借りします。
私にならいいよと、彼女は資格を与えてくれた。申し訳ない反面、どうしようもないくらいに嬉しい気持ちがあった。だってそうだ。これができるということは、それだけ彼女は私に心を許してくれているということ。
「インファイト」
駆け出すサイカの体が、鮮烈な輝きをまとう。メガシンカを経た彼女の痛烈な一撃が、スロースタートにとらわれているギガスに吸い込まれていく。
二人がかり? バカ言うな。私たちがあのとき、たった二人で戦っていたように、お前には見えたのか。
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