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なんとかなってる

 ま、まさか武将から私に接触してくるだなんて思わないじゃないですか。
 それも、松永久秀がだなんて、一体誰が予想できる。アッ死んだ、と思いました。もっと優しいところから慣らしてほしかった。心の準備くらいさせてくれよ。絶対寿命縮んだ。そういえば私はもう死んでいるんだった。
 謁見だなんて、もうね。緊張と不安のクロスオーバーでで吐くところでした。伊達政宗でも精一杯を越えていたのに松永久秀って、何。私は武将キャラとのエンカウントなんて率先するつもりはなかったんですよ。自己満足でもまずは下地から固めていく予定だったんですよ。勘弁してほしい。

 滅びた都こと平城京を一緒に散策しようぜ! と誘われた。なんでもそこに魔獣が住みついてしまっているから、探索をするにも安全を保障したいらしい。だから噂をツテに魔獣使いを探していたんだって。正直武将に私ガードなんていらねぇと思うんすよ。
 そんなこんなで松永さんの拠点である信貴山城を経由して、平城京へやってきた。面子は私と松永さん。それから柊さんっていう、ゲームにはいなかった忍者の男性だ。
 本物の忍者を見るのは初めてなのでドキドキなのだが、近づきがたいオーラを放っているのが私でも分かる。雇い主曰く、この人は従順で仕事もできるが、気難しい性格らしい。近寄らんとこ。

 いざ、滅びた都。

 踏み込んだ廃墟で見事に迷ったのは、探索開始から三〇分ほどが経過してからだ。しかも同行していた松永さんと柊さん、プラス、ジラーチとはぐれた。泣きたい。
 平城京は、ゴーストタイプの根城となってしまっている。あっちもこっちもゴーストゴースト。手厚く歓迎されて、分断されてしまったのだ。
 向こうにはジラーチがいるし、すんでのところで捕獲できたゲンガーとヨマワルを渡してあるからたぶん大丈夫だろう。魔獣の戦わせ方も簡単に教えてあるし、必要とあらばジラーチがレクチャーできる。それに、いざとなったらお二人とも戦えるでしょう。……ジラーチには気苦労かける。
 問題は、私だ。
 ミロカロスのトレミーとアチャモのヒナ。ふたりとも、体力が残り少ない。さっきのバトルで大勢を相手にしたから、だいぶ消耗させてしまった。指示がへたでごめんね。……回復させようにも、場所が悪い。無防備でいるところを襲われたら、危ないのは私だ。
 即席で手持ちを繕うにも、ふたりをうかつに頼れない以上それもハイリスクだ。いけっ、私! なんてとてもできない。マサラ出身の少年じゃあないんだ、悪いな。

 物陰からコッソリと表通りを伺う。ふえぇ……野生のポケモンがたくさんいるよぉ。虫よけスプレーもないんだよね。どうしようかな。詰みでは? と脳裡でささやく冷酷な私をシッシと追いやる。どうにもできない、じゃない。するんだよ! ジラーチ離れをするいい機会だ! この世界に来てから、すっかりあの子への頼り癖がついてしまっている。安全面においては依存しているといっても過言ではない。それを悪いことだとは思わないが、しかし今後の為にも、私一人でも考えて考え抜いて、なんとかしないと。
 とりあえず隠れながら、あっちとの合流を目指そう。裏から忍び足で移動しよう。
 きびすを返す。するとつま先に引っかかる何か! 転ぶ私! 顔面強打は避けた! 振り返る私! カナメは 謎の石を 見つけた!

「いや謎の石っていうか、これ、どっかで……」 

 見たことある、ような気がする。
 おそるおそる、さわってみる。プリン型の、変な模様が描いてある石――…………えっ、これ、もしやミカルゲなのではありませんか!? ダイパ初見殺しと名高いおんみょーん先輩なのでは!? こんなところで!?
 で、でも本物なのだとしたら、この状況下では上手くできればかなり助かる。指示を聞いてもらえなくても、私はなんでもするぜ。土下座だってするぜ。なにがなんでも守ってもらうぜ。

「も、もしもし……」

 ノックをしてみても、反応はない。寝てるの? それとも封印モードなの?
 ええいままよ! イチかバチかで空のボールを取り出して、石に近づけてカチリと開閉スイッチを押し込んだ。大きく口を開けたボールに石は吸い込まれていく。ぱちんと閉じる。ゆら、ゆら、ゆら、かちん! ……。…………。

「み、ミカルゲゲットだぜ……」

 このあと、ゴビットも捕まえて無事に平城京を突破した。





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