1日のはじまりとも言える1限目から保健体育。
健全な高校生からしてみれば、恥ずかしい内容もあり気の進まない教科のひとつに挙げられる。
高校生になればそれなりの知識もある。また、それが性ついてなら尚更だ。
インターネットが発達し情報化社会が進むなか、スマホを持っている私たちが調べられないことなんてない。
そんな授業を担当するのが学生と変わらない性格をしている永倉先生。
そしていま、授業でやっている内容が正に”性”についてだ。
朝から触れていい話題ではないと思いながらも、授業だからと少し諦めが入る。
でも、やっぱり女子としてはあまり気持ちのいい話題ではない。きっと、クラスの女子の半分はそう思っているに違いない。男子はどうだか知らないが。
朝から爽やかなというよりも、暑苦しい笑顔で教室に入ってくる永倉先生をみていると本当に体育の先生だとは思う。
でも、保健は永倉先生よりも原田先生のほうがどちらかといえば適任ではないだろうか。
原田先生は、先生とは思えないほどの色気をお持ちで、まるでホストかよってくらいだけれど、永倉先生は体育会系のノリを引き継いだ筋肉バカにしか見えない。
それでも、親しみやすさからか男女問わず人気はある。
授業が始まったらしく「ここのページ読んでくれる奴いねぇか」なんて聞いているけれど、誰もてを挙げない。
思春期真っ盛りのためか、恥ずかしさが邪魔をする。


「誰も、挙げないのか。だったら、こっちから指名するぞ」

「(まじかよ…)」


誰もが下を向く中、じーっと先生を見ていたら「目があったから大崎」と、指名されてしまった。「そうか、大崎はそんなにも読みたいか仕方ないからお前に読ませてやるよ」なんて、バカみたな顔で言ってくるから、少しイラっときた。
それに、そんなことひとことも言ってないのに、どうやったらそんな解釈できるのか聞きたい。
脳筋の勝手な妄想だとわかっているけれど、どうしても納得いかないな。


「先生、それセクハラ。土方先生に言うよ」

「セクハラって俺は授業でやってんだから、そんなもん無効だ、無効。それに、土方さんだってそれくらいじゃ何も言わねえよ」


土方先生の名前も何の効果も発揮されないまま、私は読まされることになった。
「卵子と精子が受精して…」って、何でこんなの読まなくちゃいけないの?本当に、セクハラな奴だな


「…母体は環境そのものなのです」

「ありがとうな。今、大崎が読んでくれたように……って、お前ら何寝てんだよ。ほら、起きろじゃないと減点するぞ」


減点までは行き過ぎだけれど、こんな話朝一番からは聞きたくない。
私だって読まなくてよかったら、寝たふりはするな。と思いながら、寝たふりをしている人たちが恨む。
ひとりひとりを起こしに行くあたりは先生だなと思うけれど、起こし方が最悪だ。
何というか、生徒同士がイタズラをしているように見える。
その前に、授業自体が生徒の会話みたいな感じだから仕方ないか。
「お前ら俺の貴重な授業で何寝てんだよ!!」と、教壇に戻ってから言ってるけれど何だか自分で貴重って言うあたりが貴重じゃないんだよな。


「貴重って、言うより先生と雑談会みたいな授業じゃんか」

「小池、今なんて言った!もう一回言ってみろ」

「雑談会」


小池くんは勇者だと思う。堂々と「雑談会」と言いながら、先生のヘットロックを食らってるあたりが尊敬に値する。
小池くんと永倉先生を見ていると生徒同士の戯れあいにしか見えないから不思議なものだ。


「せんせー。先生の初体験って、いつ?」

「ななな何言ってんだよお前は」


小池くんを守るかのように、どこからともなく男子が気を逸らすかのように発言をした。
その発言に動揺して力が緩んだのを見計らい逃げるあたりが、やっぱり痛かったんだろうな。


「お前ら、何でそんなこと聞くんだよ」

「興味があるからじゃない…」


つまらない授業に相槌を打つよりはマシだと思い言ってみたら、「そうなのか?」って、聞いてくるから「いや、知らない。でも、私は興味ないよ」って答えてあげると「期待させんなよ」と顔を真っ赤にしながら言うから、こいつは何なんだと思った。
私の彼氏でも何でもないのに、何を言うんだ。
それに、セクハラ発言でしょ。


「先生ってもしかしてまだどう「うわぁあああ、なに言ってんだよ。そんなわけ無いだろ」

「せんせー。今のセクハラ発言。土方先生に言う」

「んなわけねぇだろ。大崎、本当にそれだけは勘弁」

「嫌だ。…って、ね」

「マジで、心臓に悪い冗談やめろって」


「ごめんね」と、上目遣いで謝れば顔を真っ赤にする永倉先生がいる。
いや、本当にこの教師は何なんだよ。
永倉先生はチャイムが鳴った瞬間に逃げるように教室から出って行った。


20150720

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