重なる鼓動に永遠をのせて




3月14日にプロポーズをされた。
「俺のそばにいてくれ」ただその言葉が嬉しくて言葉に詰まり、泣いてしまった私を優しく抱きしめてくれた。
泣きながらも「一生そばで支えさせてください」と答えを出せば、「ありがとう」という言葉が頭上から聞こえてきた。
こんな私が土方という姓を名乗るのは少しハードルが高いんじゃないかと思いながらも、全てを見透かされているようで「お前がいいんだ」と言ってくるあたりが大人だと思う。
私はまだ学生という身分でありながら、6歳上のトシさんにプロポーズされるなんて夢に思っていなかった。
そんな幸せを噛み締めながら新年度を迎えた。


「ぼーっとしてどうした?」

「えっ、ああー、卒論のこと考えてたんだよ。先生が帰国したのはいいけど、いきなり来月までに計画表だせって言うから」

「そうか。あんまり悩むなよ。前にやりたいっていうテーマがあっただろ」

「んー、何か文献とか結構古くなっちゃってて。最新の議論はやっぱり欧州になっちゃうからね」

「そうか。大変なんだな」


PCと睨めっこ状態だった私の横に帰宅したばかりなのに座ってくるところが、少し嬉しい。
タバコを吸いながら画面を眺めてくるところ、私の卒論内容が気になるのかな。と思いながらも、トシさんの身体が気になる。


「トシさんよりは大変じゃないよ。だって、今日だって遅かったのに私の話に付き合ってくれるし、はやく寝ていいんだよ」

「お前だってこんな遅くまで俺を待っててくれたじゃねぇか」

「授業ないからいいの。どうせ、毎日家で花嫁修業+就活するだけだし。それに、トシさんと一緒にいたいの」


言ってから気づいたけれど、トシさんが近すぎる。
顔なんて見れないと思い、キッチンにお茶を取りに行こうとするけれどタバコの火を消したトシさんに捕まって身動きすることが出来ない。


「たく、んなこと言ったら風呂にも行けねぇじゃねぇかよ」

「…お風呂入りなよ」

「なら、一緒に入るか?」

「はっ、えっ、バカ。お風呂だけは絶対に一緒は嫌」

「そこだけは頑なだよな。よし、…待ってろよ」


頷くしか出来ずに、浴室へ向かう姿を横目で追いながら見えなくなってから、やっとお茶を取りに行けた。
コップいっぱいのお茶を飲み干してから、すぐに寝室へ向かって布団を被る。
こうすれば、トシさんがやって来るまでに寝られるはず…と思いながらも興奮しすぎて眠れない。
少ししてから、部屋に入ってきたトシさんはお風呂に入る前の甘い顔なんかじゃなくて、よからぬことを考えている表情だ。


「おい、怜奈。何寝室にいるんだ。俺は待ってろって言っただろ」

「だって、トシさんよからぬこと考えてそうなんだもん」

「わかってんじゃねぇか」

「今日は嫌―っ、トシさん明日も早いんだからもう寝よう」

「週末の楽しみにするか」


そう言いながら、私を横抱きにしなが今日の出来事を離してくれる。
総司くんの小テストは落書きで終わっていたとか、永倉さんがいきなり職員室で脱いだとか、そんなたわいもないことを話してくれた。
その話がおもしろくて笑ってしまう。
まるで、子どもが絵本を読んでもらうような感覚だった。


20140615
Title:檸檬齧って眠る

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