泣かない獣
帰宅した暮人様が帝鬼軍の制服を脱ぐ姿を、横目でチラチラと盗み見ている自分は、どうにも変態だと思う。
それでも、暮人様がかっこいいのがいけないのだ。そう、言い聞かせるが私のしている行為を暮人様が気付いていないわけがない。
「先ほどから、落ち着きがないようだがどうした?」
「えっ、そそそんなことはないですよ。ただ…」
「ただ、何だ?」
「暮人様が…」
「俺がどうした」
「カッコいいのがいけないんです!!」
顔に熱が集中するなから、視線を逸らす。
クローゼットの閉める音が聞こえた。隣のソファが沈む。
暮人様が隣に座られたのだ。
「カレン。お前はいつになった俺に馴れる」
「もしかしたら、いつもで経っても馴れないかもしれません」
「何故、そう思う」
「ますます、暮人様がカッコよくなるからです」
その回答が気に入らないのか、眉間に皺が寄っている。
そっと、眉間を抑えてみると暮人様はにやりと笑った。
「か、確信犯ですね!!」
「だったら、どうする?」
言葉とは裏腹にそっと抱きしめてくる暮人様の力は少し弱々しいもので、いつもの自信たっぷりの暮人様とは似ても似つかない。
背中にそっと手を回し、子どもをあやすように撫でれば少し腕に力が入る。
この空間で一番苦しい思いをしているのは暮人様。それだけは私にはわかった。
私が暮人様を癒すことが出来るなら、そのためだけにこの柊暮人という男に仕えよう。
この空間で私は自分自身に誓いをたてた。
そして、そっと触れるだけのキスを暮人様の頬に落とす。
20170610
title;彼女の為に泣いた