輝く日々はきみと共に


「不器用な人は器用な人の真似しないことが一番だよ…特に女の扱いなんかもってのほか」
そう言いながら、綺麗な目を伏せるかのようにして涙を流すのが彼女の悪い癖だ。
自分の恋心を自覚していながら、それを隠す気があるのかないのかで言ったらないのだろう。
誰かに押し付けるかのようにする感情は好きではない。そのため、僕は彼女が嫌いだ。


「悪いけれど、キミが婚約者であることを僕は認めていないよ」

「なに、それ。ただの意地悪で言ってるの?」


笑いながら話しているが、それでも心のどこかでは涙を流している。
もう、ずっと昔から見ていたから知っている。僕のそばから離れなかった幼馴染が女の子と呼ばれる分類から女性へと変化を遂げる過程であるこの時期に、僕だけしか知らない彼女はまったく希なんじゃないだろうか。
そんな恋心を抱いた彼女もいずれか誰かの元へと嫁いでしまう。それが純血の家に生まれし者なら誰もが納得する女性の末路でもある。


「マルシベールは自分がかっこいいって思ってるでしょ」

「…容姿は武器である。そう、あの方は言っていた」

「ふーん、やっぱり一番はあの人なんだ」


どうしてそんなことを聞くのだろうか。あの方が一番であるのは間違えのない事実で、純血至上主義ならば迷うこともないだろう。
それに、女性は従順であるべきだというのが僕の考えでもある。


「いつか、刺されるよ」

「それは、キミにかい?ジェミニー」


きっと、彼女にはそんなことをする勇気はない。
この僕が刺されるだって。そんなことは、あるはずがない。
僕の服従の呪文はあの方からも称賛されているものなに。


「違うよ、私じゃない他の人に。だって、マルシベールはあの人とは違う。あの人の美しさにみんなが酔いしれる。それでも、マルシベールの美しさに酔いしれる人はきっと私しかいない」

「それはキミの望みだろ」

「それが私だけの望みではいけないの?」


馬鹿な女だと思う。
ここまで来ると馬鹿を通り越して滑稽だ。
だけれど、そんな彼女を邪険にするわけでもなくそばにいることを許可している僕も滑稽そのものなんだろう。


20140718
Title:寡黙


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