それは敬愛


親愛なるトム・リドルへ

今更、手紙を書くようなことなんて何ひとつないと思いますが、いつか私がリドルくんの前から消えてしまったときのために、書いておきます。
そうしないと、なんだかいけないような気がして仕方がないからです。
きっと、この手紙を見つけたときのリドルくんの反応は下らないもので終わりもしれないけれど、私はそんな形でも最後にリドルくんが私を覚えていてくれればいいと思ったりしています。


リドルくんと出会って、はじめて今まで自分が研究していた闇の魔術が役に立ったと思います。
それに、あの狭い箱庭のような魔法省から私を連れ出してくれたことに感謝しています。
だからこそ、あなたが闇の帝王となってこの世界に君臨することを望んでしまうのかもしれません。
それでも、私は逃亡者でありリドルくんの側近であることが知れたために、これ以上、リドルくんに迷惑はかけられないと思いました。
そのため、私は英国魔法界から出ていきます。
アジアにでも行きのんびりと研究を続けるつもりです。
全てが完成した時に、あなたの…リドルくんの元に戻ることを約束します。
破れぬ誓いをいまたてられればいいのだけれど、それをしてしまったら私が手紙を書いた意味がなくなってしまうので、それはしないで去ることにしました。


それでは、またいつか会いましょう。


ジェミニー・ライリー



そんな手紙を置いていき、私が英国魔法界を去ってから3年後にリドルくんが倒されたという報せが届いた。
そんなことは、嘘だと思いながらも梟便で届いた日刊予言者新聞は私にとっては受け入れがたい文字しか書かれていなかった。

それから、15年。
私は英国魔法界に戻った。
ルシウスの手引きもあったために、簡単に戻ることが出来たがリドルくんがいない世界なんて意味がない。


「我が君があなたをお待ちです」


バーティーに招かれた屋敷には変わり果ててしまったリドルくんがいた。
言葉を失うことしができないで私にリドルけんは「俺様の前から何故消えた」とだけ告げる。
その声はとても冷たくて声だけで人を殺せそうだ。


「手紙置いていったのに、読んでないの?」

「そんなもの読むに値しない」

「だから、だよ。リドルくんのために、私は英国魔法界から消えたのに、何で読まなかったのかな」


身体が完全に復活していないリドルくんに私は自分が考え出した魔法を使う。
禁忌に近いかもしれない人体の魔法。


「ほら、素敵なリドルくんが戻ってきた」

リドルくんをもっとも美しかったあの時期に戻す私は、なんでこんな魔法を研究していたのだろうかとも思ってしまった。
でも、これでリドルくんの最高に強くて暗黒とされた時代が戻ってくるのならという高揚が拭えなかった。
そっと、リドルくんの手の甲にキスを落とす。


「何なりと命じてください、我が君」



そう、私はあの箱庭から逃げることが出来た日からリドルくんの虜となってしまったのだ。
これが、忠誠心からか愛情からかはわからないがきっと、この2つが調和された感情なんだろう。


20140522


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