彼女が幸福を諦めた日
蛇が死と再生のシンボルと言うのなら、スリザリンこそ神と言える存在なんだろう。
リドルの考えた闇の印にも蛇がいる。
多分、死と再生のシンボルなんてことは考えていないと思うし、ただ自分がスリザリンの継承者だから、髑髏と蛇という印にしたに違いない。
この印に文句なんて言えば、リドルは私を殺しかけない。
あんなにも、頭がよく大人に気に入られる術を知っているくせに、私に対しては癇癪ばかり起こす。
まるで、子どものようだ。
そんなことを、リドルに言えば「お前は何様のつもりだ」と言われてしまう。
きっと、リドルにとって私は罵るだけしか価値がない存在であって、それ以上でもそれ以下でもない。
特別、闇の魔術に対して秀でているわけではないし、ヒーラーなみの治癒能力があるわけではない。
「何故だ!何故なんだ!」
「…っ、リドル?」
「うるさい!黙れ、黙れ」
何があったのかは、わからないけれどリドルはとても悔しそうな顔をしている。
今にも人を殺しそうで少し怖い。
それでも、私は罵倒されるだけで今まで一回も磔の呪文をかけられたことはない。
「あの老いぼれが」
「ダンブルドア先生のこと?」
「その名を口にするな。あいつは、俺様の邪魔しかしない。お前は俺様よりあいつの元に行くのか」
「そ、そんなこと…ないよ」
癇癪を起こすリドルの瞳が赤くなるたびに、私は恐怖する。
なんで、こんなにも私はリドルを恐れているのに、いつまでも側にいるのだろう。
自分自身でわからないことは、他人にもわからない。
アブラクサスさんのように純血主義であるわけでもないのに、ただの落ちこぼれスリザリン生だった私にリドルはなんで執着のように側に置きたがるのだろう。
「何も出来ないお前が俺様から離れれば、どうなると思っている。さぁ、ジェミニー答えろ」
「……殺される」
「いや、殺されるんじゃない。自ら命を断つだよ。役立たずのお前は誰からも必要とされない。だから、俺様が面倒を見てやっているんだ」
何処までも傲慢な態度をとるリドルに私は逆らえない。
恐怖で身体が支配されているから。
20130426
title:彼女の為に泣いた