大嘘が人生を切り開く


愛する者の死はとても怖い。 
いままで一緒にいた時間を奪われた感覚にさえ陥ってしまう。


「あれ、リドル久しぶりだね」

「そうだね。キミが結婚して以来かな」


人のいい笑を浮かべながら私の元へやってくるのは、学生時代の友人と呼べるかはわからないが知人くらいのレベルなんじゃないだろうかっていうリドル。
そんなリドルに、誰が私の夫が死んでしまったことを伝えたのだろうか。
夫はリドルと仲が良かったわけでもなく、スリザリンでもなければ顔見知りにもならないはずなのに、何で私が結婚したことまで知っているんだろう。


「キミの夫はとても有能な魔法使いだったよ」

「そうだろうね。闇祓いだったしね」

「死喰い人の仕業って聞いたけど」

「うん、そうみたい。私はその場にいたわけじゃないけど、近くにいた人がそう言ってた」


淡々と語る私には悲しみがないのかと言われてしまえば、悲しみはある。
平常心を保つには、淡々と話をすることしか私は知らない。
それなに、リドルは私の心を乱すかのように夫のことを話し出す。


「ねえ、リドルはなんで知ってるの?」


ただ、疑問だった。レイブンクロー出身の彼のこと知っているなんておかしい。
それに、「有能な魔法使いだった」という言葉にも引っ掛かりを覚えてしまう。


「何度か会ったことがあってね。よく、ジェミニーのことを話していたよ」

「へぇ。あの人が私のことをね」


世間話のように聞こえて私には何かが違うと思えた。
リドルが何を考えているのかは昔からわからなかったけれど、いまのリドルは美しさに全てを隠しているようにしか見えない。
学生時代の優等生として過ごしていた姿とは似つかない。


「それにしても、リドルは詳しいね。あの人のことに」

「仕事柄かな」

「嘘ばっかり。リドルって、嘘つくとき少し口元が上がるんだよ。知ってた?」


嘘ばっかり。その通りだ。
だって、仕事柄ってなに?リドルとあの人が交わることなんて一生ないくらいに職業が違うのにだ。


「そろそろ、本当のこと言ってくれてもいいんだよ」

「何をだい?」

「リドルが殺したの?」


核心を着いたのか私の言葉でリドルの表情は、冷たくなってしまった。
さっきまでの人のいい笑みはどこに行ってしまったのだろうかってくらいに。


「キミを迎えに来たんだ。ジェミニーには僕こそがふさわしい」


リドルはそう言いながら、私を逃すまいと杖を額に向けてくる。
きっと、Noと言えば悲しい顔をしながら私を殺すのだろう。
Yesと言えば満足するのだろうか。
私はその答えをすぐに出せずにいる。
だって、リドルが闇の帝王って知ってしまったから。


20140312
Title:空想アリア


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