※霧野目線。
バチバチ。
神童と狩屋、2人の雰囲気を効果音で表すのなら、こうだ。
火花を散らして、睨み合う2人。
鋭い視線をお互い相殺しあい、両者一歩も譲らず無言の威圧感を醸し出している。
「……ふ、2人とも、どうしたんだよ」
困惑。
まあ、無理も無いのでは。と、内心自分を擁護。
だって2人とも、俺を挟んでバチバチしてるんだぜ。しかも、腕を当たり前のように絡めてきてるし。ぎゅうって、すごい密着してくるし。
右に神童、左に狩屋。
まさに両手に花だな!
…なんて、野郎相手に思う訳がないだろう。
男三人が、部室の椅子を陣取って団子三兄弟よろしく陳列している今の現状。
相当、むさ苦しいと思うのだが。
「そろそろ時間的に帰らないとだぞ。2人とも、どうしたんだ?」
本日2度目の質問。
今度は、ちょっと語気を強めて言ってみる。
と、
ほぼ同時に、2人の視線が此方に集結した。
二つの鋭利な眼差しが突き刺さり、思わず怯む。
茶色のたれ目と黄色のつり目。
対照的な瞳が、此方をまじまじと凝視してくる。
ち、近いんだけど!
そんなに見られると恥ずかしいんだけど!
なんで無言でみつめてくるんだ。
何か言えよ!!
「…霧野はどっち派?」
あ、神童喋った。
と思ったら意味不明なこと聞かれた。
「…どっち派って、なにが?」
「霧野は、幼なじみで親友で霧野とずーっと一緒にいる俺とただの後輩、どっちと帰りたい派?」
「…え?え?なに、どういうこと?」
「もちろん、俺だよな」
にこーっと微笑みかけられる。
なんだろう。優しい微笑の筈なのに、何故か圧力を感じる。
そんな、神童の脅迫の念が孕んだ笑顔から目が離せないでいると、俺はただの後輩じゃねーよ!とか何とか言いながら、狩屋が俺の顎を掴んできた。
顔が強引に狩屋の方へ向けられて、
「俺は、先輩にとってただの後輩でいるつもりありませんからね?」
とか、言われた。
此方も同様に笑顔だったけど、ただならぬ雰囲気を醸している。
え?
なにこの状況。
俺、なんか取り合いされてる?
「ってことで霧野先輩、俺と帰りましょうか。DF会議でもしながら。俺と先輩は同じポジですもんねー?」
「あの、え?…2ふ、2人はどっちが俺と一緒に帰るかで睨み合ってたのか?」
「まあ、そんなところです」
なる程。
もう外、結構暗いもんな。
2人とも、ひとりで帰りたくないって訳か。
案外、恐がりなのな。2人とも。
でもさ、
そんなの、みんなで一緒に帰れば済むことだろ。
この調子じゃ、どんどん暗くなるぞ。さっさと帰ろうぜ。
そう提案しようと口を開きかけた。
しかしそこに、邪魔が入る。
「おい狩屋、霧野から手をどけろ」
神童が、横からガバッと抱き締めてきた。
吃驚して、全身が強張る。
「な!?…キャプテン、ちょ、…ズル!!」
狩屋の手が離れ、顔が自由になった。
が、狩屋も何故か俺に抱きついてきたのでトータル的に考えると自由度は少なくなった。
…えー。
2人とも、そんなに怖いのか?
まだ、屋内なのに。
「霧野は俺と帰りたいよな?」
「先輩は俺と帰りたいですよね?」
「…み、耳元でしゃべんな!くすぐったい!」
「狩屋、霧野を困らせないでくれないか」
「キャプテン、先輩困ってますよ?離れれば?」
なんで2人とも俺の耳元で言い争ってんの!?
「キャプテン、先輩の幼なじみだからって調子乗んないでください」
「狩屋だって、後輩だからって霧野にくっきつすぎだ」
「えー?なになに。もしかして、同じポジションの後輩の俺がうらやましーんですかぁ?”きりのせんぱーい!“とか、呼んでみたい感じ?」
「…うっ、羨ましくなんか、ない!」
「その反応は図星ですね。ふふん」
「…べ、別に、いいさ。俺はなんてたって霧野の幼なじみなんだからな!!」
「ふ、ふーん…あ、そーですか」
「お前だって、俺が羨ましいんじゃないのか?」
「べ、別にぃ?羨ましくなんかないですー」
「その反応は図星だろ。ふふふん」
「…ま、まあ?幼なじみも良いと思いますよ?ただ、俺は後輩だから?先輩に頭撫でられたことありますし?”偉いぞ“とか褒められながら頭撫でられましたし?」
「俺だって、霧野に“痛いの痛いのとんでけー”ってしてもらったことあるけどな。泣きそうになりながら心配されちゃったしな。うるうる霧野可愛かったんだぞ?」
「あとあと、俺なんかポジション近いから何かと話し合いますし?いつかぁ、合体技とかやっちゃいますから!!”ハンターズミスト!“とかやっちゃいますから!!」
「ポジションが違ったって、俺と霧野の絆が揺らぐことはないさ!だって幼なじみなんだからな。」
なんでお互いの立場自慢大会してんの。
帰ろうぜ。
結局、
小一時間、2人の言い争いは続きましたとさ。
あーあ。
三人で帰れば済む話だったのに。
独り占めしたいのさ
(2人きりになりたかったの!)
‐‐‐‐‐‐‐‐
2012/04/09
ひとこと
神童くんと狩屋くんは、霧野くんと2人きりで帰るために、相手が先帰るのを待ってた…という解釈お願いします…。
蘭ちゃんの取り合い楽しいです!
リクエストありがとうございました!
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