Songs for you 02

「ありがとうございました」
お礼を言って○○は再び歩き出す。
『不死鳥の羽根』と訊いて、聞いたこともないと不思議そうな顔をする者、夢物語を語っていると馬鹿にする者、或いは急ぐからと質問さえさせてくれない者。
尤も尋ねる相手には自分に危険のなさそうな人物を選んでいたのだから、仕方ないのかもしれないが。
一向に進展のない聞き込みに、○○の顔に疲れが見え始める。

少し休もうと、坂の上の高台に足を運ぶ。
海を見下ろす景色は美しく、○○は大きく伸びをした。
高台の周りに人気はなく、まるで自分がその景色を独占しているような気持ちになる。
そんな喜びと開放感から、○○は思わず歌を口遊んだ。

パチパチパチパチ…

不意に後ろから手を叩く音が聞こえ、○○は慌てて振り向いた。
そこには、高級感漂う装いを見事に着こなした老人…いや、紳士と形容した方が相応しいかもしれぬ風貌の男性が立っていた。
真っ白な髪と顔の皺からは明らかに相当な高齢を思わせるのに、背筋はすらりと伸びて上背もある。
気品溢れるその老人は、○○に微笑みながら拍手をしていた。

「あっ、すみません…気付かなくて…」
無防備に口遊んだ歌を聴かれてしまった気恥ずかしさと、ひょっとして自分が老人のお気に入りの場所を奪ってしまっているのではないかという気まずさから、○○は思わず謝る。

「いえ、素敵なものを聴かせていただきました」
そう言うと、老人は○○に軽く会釈をしてから、坂道を消えていった。

その姿を見送りながら、○○は考える。
(そろそろ…酒場に行かなくちゃ)
傾き始めた太陽に、○○は高台を後にした。


○○が酒場に着くと、既に他のメンバーは集まっていた。
「あっ、○○ちゃん!良かった。何かあったのかと思ったよ」
ソウシが○○を見つけて笑顔で言う。
「こんな時間まで何やってたんだ」
ナギに尋ねられ、自分なりに聞き込みをしていたと答える○○。
「こっちもだよ、全然収穫ねぇのな!」
何も分からなかったと告げた○○にハヤテがそう言うと、トワはそうですね、と残念そうに頷く。
一方ではファジーがにこにこしながら、手早く○○の分の料理を皿に取ってくれる。
そんなやり取りを、シンは不機嫌そうに眺めていた。

「ねぇシン、次は何飲むの?」
残り少なくなったグラスを目敏く確認して、一人の女が言う。
「また同じの、ロックでいい?」
別の女が、シンの肩にもたれながら尋ねる。
さっきからチラチラと○○がシンの方を見ている。
シンはそれに気付きながら、わざと女の耳に囁くように言った。
「いや、ラムにも飽きた。スコッチをくれ」
カラン、と音を立てて最後のラムを飲み干す。
その飲みっぷりにリュウガが声をかけた。

「今日は早いな、シン。お宝の情報がなくて苛立ってんのか?」
ガハハハ、と笑いながら言うリュウガに、シンは短く答える。
「えぇ、まぁ」
本当のところ何に苛立っているのか、シンにもよく分からなかった。
いつもの酒が、不味い。
そんなシンの横で、ラムをストレートで呷るリュウガ。
宝の情報が一向にないにも関わらず女を侍らして満足げに飲み続けるリュウガに、シンは小さく溜め息をついた。

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