Tattoo 02

「なんだなんだぁ?犬でも食えねぇようなことやってんじゃねぇぞ」
そう言って豪快に笑いながら座るように促すリュウガに、二人は明らかに不本意そうながらも席に着く。
「シン、一体何があったんだい」
昼食を食べながらソウシが訊くと、シンが不機嫌そうに口を開いた。
「こいつが刺青を入れたいなんて言うからですよ」
「刺青?」
ハヤテが尋ねる。
「だって!シリウスのメンバーはみんな右手首にその証の刺青をしてるじゃないですか。私も仲間だって言うなら、入れたっていいでしょう?!」

そう、確かにシリウス海賊団はその右手首にCanis Major…おおいぬ座を象った刺青をしている。
シリウスの星は髑髏になっていて、その下に世界中を航海した印である海の上を飛ぶ燕が描かれている。
シリウス海賊団の名と同じくこのデザインは広く知られ、その刺青を見れば海賊でなくとも多くの者が尻尾を巻いて逃げるほどだ。
尤もそんな印を必要としないほどの強さを誇る彼らが自らそれを見せることはなかったが。
リュウガやソウシ、シン、そしてハヤテのように長い袖に隠すか、ナギやトワのようにリストバンドをしているのが通常である。

「俺達だって基本他人には見せないんだ。必要ないだろう」
「見せなくたって、仲間ならする権利があると思います!」
「…ほう、権利とは随分難しい言葉を知っているようだな」
「話を逸らさないで下さい!」
再び白熱化しそうな二人を制するようにまぁまぁ、とソウシが割って入る。

「○○ちゃん、刺青っていうのは一度入れたら消えないんだよ」
「そんなこと、わかってます!」
即答する○○に、ソウシは頭に手を当てる。
「…でも、女の子が自分の身体に傷をつけるものじゃない」

別にしたっていいんじゃねぇか、と能天気に言うハヤテの横で、トワが口を開く。
「そんな刺青なんかしなくても○○さんは僕たちの仲間ですから、必要ないんじゃないですか?」
ハヤテの言葉に一瞬嬉しそうな顔をした○○だったが、トワの台詞にトワくんまで…とショックを受けている。
ナギが空になった皿を持って立ち上がりながら言う。
「わざわざ痛い思いしてこんなモン入れなくたっていいだろ」

昼間だというのにもう3杯めのラムを傾けるリュウガが苦笑しながら言った。
「ったく、何を争ってるかと思えば…シンやナギの言う通りだろ、こんなモン入れたって何の得にもなりゃしねぇ」
グイッとグラスを空けると、ガハハと笑って○○の頭をポンポンと叩く。
「お前がこのシリウスの一員だってのはみんなよーくわかってるよ。こんな形式的なモンに縛られんじゃねぇや」
そう言ってリュウガは食堂を後にした。

「でも…」
未だ不服そうにぶつぶつと呟く○○に、シンが言った。
「そんなに俺達と一緒がいいなら、次の街でメヘンディとかいうボディペインティングでもやらせてやるよ」
○○の頭を撫でながら言うシンに、○○は不満げながらも頷いた。


この時代、刺青はまだ先住民が独自の文化で入れているものだった。
興味を持った貴族がそれらの先住民を見世物として商売することはあったが、彼らが実際に自らの肌に刺青を入れることはなかった。
ヤマトでの認識のように罪人扱いされることはなかったものの、決して喜んで受け入れられるものでなかったのは事実である。
完璧な衛生が約束される環境もないこの時代、○○を大切に思う彼らが刺青に反対するのは仕方なかった。

[ 2/9 ]

[*prev] [next#]
[contents]
back home


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -