お化けなんて・・・


原作の遊園地へ行った後のお話を書いてみました。
怖がりキドさんです。








幽霊なんているはずない。
童謡でも言っているじゃないか。
お化けなんて嘘だって。
寝ぼけた人が見間違えたんだって。

あのお昼のお化け屋敷のせいだ。
電気をつけていても、テレビをつけていても。
お気に入りの音楽を聴きながら、お気に入りの雑誌を読んでいても。
集中できない。
背後が気になってたまに振り返ったり。


「あーっ、くそ!」


気が散って仕方がない。
マリーはキサラギの家でセトはバイト、カノは部屋に籠もっていてリビングには俺一人だなんて普段ならゆっくり出来るのに。
その瞬間、カチャリと音が聞こえた。
反射的にそちらの方を向くと。


「な、なんだ…、カノか…」

「なんだって、なに?」


少しびっくりしたじゃないか。


「どうかした?」


そう言いながら、俺の隣にくる。
内心、カノが来てくれてホッとしているなんて、絶対言えない。
俺はただ、「別に」とだけ返しておいた。


「てか、みんなは?」


くぁっと大きな口を開けて頭を掻いているのを見ると、たぶん寝ていたのだろう。


「マリーはキサラギの家で、セトは夜のバイトがあるとか言っていた」

「そーなんだ。じゃあ、今は僕とキドの二人きりなんだね」


何だ、その笑みは。
俺が眉間に皺を寄せたと同時くらいに、カノの顔が一気に近付いた。


「なっ、何だよ…」


こんな近距離で見られているのが恥ずかしくて顔を反らすが、すぐにカノの手で元に戻される。


「っ…」


どんどん顔に熱が集中して、それすらも俺にとっては羞恥で。


「キド。顔、真っ赤」

「っるさい!!」


カノの体を思い切り押し返すと、思っていたよりも体が傾いて。
はたから見ると、俺が押し倒しているような格好になってしまった。


「キドってば、大胆」

「ーっ!!ふ、風呂入ってくる!!」


その場から逃げ出すようにリビングを出た。


「たく、あいつは…」


誰もいないが、誰にも聞こえないような声でブツブツ文句を言いながら。
俺は自室に着替えを取りに行って、風呂場へ向かった。
ドアを開くと。
キィ…
と、少し甲高い音が響いた。


「そ、そういえば、この扉馬鹿になっていたな…。セトに頼んで直して貰わないとな…」


こんな些細な事でさえビビってるなんて…。


「はぁ…」


たかが子供騙しのお化け屋敷ごときでこんなことになるとは。
自分でも呆れる。
服を全部脱いでしまい、浴室のドアノブに手をかけた瞬間だった。

カタン…


「え…」


浴室の中から物音が聞こえた。
誰かいるのか?
てか、今は俺とカノの二人のはず…。
サーッと血の気が引いていくのがわかった。
いやいやいや。
待て。落ち着け俺。
気のせいに決まっているだろう。
電気をつけて、固唾を呑み一気に扉を開けた。


「…ほ、ほら、何もいないじゃないか…」


自分に言い聞かせるように声に出した。
だが、この緊張感は消えないわけで。
中に入りながら、カノにドアの向こうで待ってもらおうかなどと考える。

髪、体を洗い終え浴槽の中に浸ると、全身の力が抜けていく気がした。


「ふぅ…」


気持ちいい…。
落ち着く…。
ウトウトしかけた、その瞬間。
一瞬にして暗闇に包まれ。


「きゃあぁぁあぁっ!!」


俺の緊張の糸がプツリと音を立てて切れた。


「キド!!大丈夫!?」


その声を聞き、本能的に声の主の所へ走り、抱きついた。
今の俺に何かを考える余裕なんて持ち合わせているわけがなくて。
ただ、ぎゅうっと彼の服を握り締めていた。


「キド、大丈夫だから。ブレーカーが落ちただけだよ」

「え…?」

「ブレーカー、戻してもいい?」


彼は優しい声でそう言い、俺と離れて。
幸いにもブレーカーは俺たちの頭上にあったらしく、カノが立ち上がってそれに手を伸ばすと、パッと明るくなった。


「もう、大丈…」


俺の方を見るなり、みるみる顔を赤くしていく彼に疑問を抱き、首を傾げると。


「キド。それは、やばいって…」


顔を反らしながらそう言った。
やばい?


「っ!!!」


見ると、素っ裸。
近くに置いていたバスタオルを手繰り寄せ。
今更かもしれないが、自分の身体を隠す。
俺は頭の中が真っ白で。
きっと今、情けない顔をしているだろう。
言い表せないほどの羞恥が全身を突き刺しているようで。
発火しそうなくらい全身熱を発していた。


「あのっ…、これはっ…」


俺がよくわからないことを口にしていると、いきなり何かに包み込まれ。


「か…の…?」

「大丈夫?どこもけがしてない?」


耳元に彼の優しい声がして、少しくすぐったくて身を捩らせた。


「うん…」


一言、そう返事をすると「はぁぁ」と気の抜けたような大きな溜息が聞こえた。


「あ、ブレーカー落ちたと思ったらいきなりキドの悲鳴が聞こえるんだもん」

「ご、ごめんなさい…」


俺のことを心配してくれて、急いで来てくれたのかと思うと少し申し訳なく思う。


「昼のお化け屋敷でしょ?」

「えっ?」


ズバリ言い当てられ、思わず間抜けな声を出してしまった。


「わかるよ。何年一緒にいると思ってんの?」


誰にもわからないようにしていたのに。
何でこいつにはわかってしまうのだろう。
なんだかおかしくて、俺は少し笑った。


「お前には隠せないな」

「怖かったんでしょ?」


口で認めるのが少し恥ずかしくて。
俺はただ、首を縦に振った。


「じゃあ、その不安僕が消してあげる」

「?」


お互い少し離れ、顔を合わす。
と、カノがニヤリと笑った。


「な、何だよ、その笑顔…」


嫌な予感しかしない。
逃げようとしたらカノの顔が近付いてきて。
思わず、ぎゅっと目をつぶった。


「つぼみが何も考えられないようにしてあげる」


耳元で声がしたと同時に背筋を何かが駆け抜けた。
逃げようとしても体が動かなくて。
俺は彼に抱えられ、部屋へと連れて行かれた。










あとがき

うわぁぁぁ
ごめんなさい、ごめんなさいっ大泣
グダグダすぎるぅー
文がまとまってなさすぎ
もう、だめやん
ホントにごめんなさい…

2013/08/01 桜音

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