約束


とても暖かい、春の昼下がり。

「っ…ひっ…」

とある孤児院の部屋の隅っこで、一人の女の子が泣いている。
他の子供たちは、みんなで楽しそうに遊んでいるのに。

「っ…だれかっ…」

誰か私を見て…。私はここにいるのに…。
このままじゃ…。

「私…消えちゃうよ…」

そうつぶやくと、また涙が溢れてきた。
女の子は抱えた足の膝頭に額をくっつけ、うずくまった。
その時。

「つぼみ!」

名前を呼ばれ、ゆっくりと頭をあげると…。
そこには猫目の男の子が笑顔で立っていた。

「どうしたの?」

男の子はそう言って、彼女の頭を優しく撫でる。
すると…。

「…やっ…」
「?」
「しゅうやぁっ…」

男の子の名前を呼び、飛びつくように抱きついて、ぎゅうっと抱きしめた。
彼は少し驚いたようだが、彼女の背中に手を回し、再び優しく頭を撫でる。

「つぼみ、泣かないで」

優しく声をかけながらなだめていると、彼女も落ち着いたようで、涙を拭いだした。

「大丈夫だよ。僕がずっと一緒にいるから」
「ほんと…?」
「うん。約束」

そう言うと、小指を彼女の目の前に出した。
すると、彼女も小指を出し、小さな指をお互いに絡め合う。
彼が笑うと、彼女も笑った。









* * * *









ゆっくりと目を開けると、そこには見慣れた天井があった。
あぁ、夢か…。
そう呟き、気怠い体をゆっくり起こす。
すると、目の前に茶髪の猫目の男がいた。

「おはよう、キド」
「あぁ…」

俺は水分を求めて台所へ向かった。

「ねぇ、キド。何か夢でも見ていたの?」
「何でだ?」
「いや、優しい顔して笑っていたからさ」

そう言うと彼は笑った。
いつから見ていたんだ…。
いつもなら、イラッとしてどうでもいいだろとか何とか言って、その場から立ち去るんだろうが。

「…昔の夢をな…」

悪い気分じゃない。

「へぇ、昔の…」
「あぁ」

俺は、彼の分の飲み物を持ち、彼の隣に座った。

「なぁ、カノ」
「ん?」
「いや、何でもない」

えーっ、とカノは口を尖らせた。
それを横目に見ながら、俺は少し微笑んだ。
まぁ、少しこいつの話につき合ってやるか…。








「昔は泣き虫だったよね、キド」
「うるさい!」








あとがき
初のカノキドです(>_<)
ぐだぐだです…。
こんなので申し訳ないです(;´Д`)

13/06/28 桜音

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