暑さのせいだ。


蝉が五月蝿いくらいに鳴いている中。
私と遥は重い足取りで歩いていた。
訂正。
私だけみたい。
…暑い。
夏だから仕方のないことなんだろうけど。
もう、立っているだけで汗が噴き出しそうだ。


「あつい…」

「暑いねー」


隣を歩いていた遥の能天気な返事にむかついて強めに肩を殴ってやる。


「痛いよ、貴音」


ふんっ、とそっぽを向くと目に飛び込んできたのは“アイスキャンディ”と書いたのぼりだった。


「へぇ、今時やってんだ」

「あれ何?」


そっか、知らないのか。


「…食べてみる?アイスキャンディ」


そう言うと、彼は嬉しそうに笑った。
この笑顔に弱いんだよなぁ。
荷台の傍にいるおじさんのもとに近付くと「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた。


「遥はどれにする?」

「じゃあ、僕はいちご」

「いちごとミルク、ひとつずつください」


「はいよ」とおじさんは返事をして、ボックスの中から二本のアイスを取り出して。
一本ずつ私たちに渡してくれた。


「ありがとうございます」


おじさんにお礼を言ってその場を離れた。
近くの小さな公園へ入ってベンチに座る。
すると、遥が隣に来て座った。


「いただきます!」


彼は早くもアイスを口に入れていた。


「はや…」


小さく呟いて私もアイスを口に入れた。
冷たくておいしい。
少し涼しくなったような。
気のせいだろうけど。


「ねぇ、貴音」

「ん?」


名前を呼ばれて振り返る。
すると、遥は羨ましそうに私のアイスを見ていた。
まさか…。


「僕のもあげるから貴音の少しちょうだい?」


やぱっり。


「嫌だ」

「えー、何で?」

「何でじゃない」


だってそんなことしたら…。
私は考えている事を振り払うように頭を横に振った。


「とにかくダメ!」


「えー」と彼は口を尖らせた。
そんな顔してもダメなんだから。
私がそっぽを向こうとした、その時。


「あ。貴音、あれ何?」

「え?」


そこで遥の魂胆に気付かなかった私が馬鹿だった。
彼の指差す方を見る。
何にもないじゃん。
そう思った時。


「いただきます」

「え…?」


その声に釣られて振り向くと、私が手に持っている物を咥えていた。
これって所謂、『間接キス』。
その瞬間、顔が一気に熱くなった。


「なっ、何やってんの!バカ遥!!」

「だって、溶けそうだったから」


だからって…。


「顔、真っ赤だよ?熱があるかも…」


え…?
ゆっくり遥の顔が近付いてくる。
私の思考回路は停止してしまって。
動くことが出来なかった。
こつん…。


「っ!!」


額がくっついた瞬間。
ドクンッ、と心臓が大きく跳ねた。
張り裂けそうなくらい心臓が高鳴っていて。
遥に聞こえちゃうんじゃないかってくらい五月蝿くて。


「熱はないみたい?」


遥が私から離れていく。
私はその場から動けずにいた。
そんな私を疑問に思ったのか。


「貴音?」


顔をのぞきこんできた。


「っ…!バカ遥っ!!」


殴ることすら出来なくて。
私はその場から逃げ出すように歩き出した。


「ちょっと待ってよー」


後ろから追いかけてくる遥なんて気にしている余裕なんてなくて。
私はただただ足を動かしていた。
何でこんなにドキドキするの?
私が遥なんかにドキドキするなんてありえない。
これは全部暑さのせいだ…。
私はそう自分に言い聞かせた。

暑さのせい…。

だから、早く止まれ…。


私の鼓動…。















あとがき
初の遥貴小説です!
どうでしょう…?
全く成長してないですけど…
ごめんなさい(泣
こんな作品でも気に入ってくれたら嬉しいです><
何かありましたらご報告くださいませ

最後になりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!


2013/09/10           桜音

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