分かるよ?
あなたのその行為は、
とても愛のあるものだって。
でも……
ちょっと、我慢しようね?



*

「セーラーー!」
「なーに、ルフィ」


後ろからルフィが駆けてきたから、振り向いてみれば、


「んっ……」


いきなり抱きつかれて、ちゅっとキスをされた。
ルフィらしい、唇が触れるだけのキス。
そして唇が離れると、満面の笑顔で言う。


「にしし、好きだ」
「……さっきも聞いた。それに、さっきもキスしたじゃない」


正確には、『してきた』だけど。
私は呆れたように言うけど、対するルフィはそんなこと気にした様子もなく、


「んーだってよー、好きなんだもん」
「キスが?」
「キスも、セーラも」


なんて、無邪気に答える。
…未だ抱きついたまま離れないルフィ。
いや……嬉しいんだけど。
でも、流石に1日に5回以上は……。
船の上、皆も居るのに……。


「ふふっ、大変ね、セーラちゃん」
「ロビンー!助けてよぅ」
「私に止める権利はないもの」
「うぅ……」


ロビンは何だか面白がってる。
キスは見られなかったみたい……。


「相当懐かれちまったみてェだな」
「ゾロも……そんなこと言ってないでルフィ引き剥がしてよ」
「おーおー分かった」


ゾロも面白がってるみたい……。
他人事だと思って…。
なんだか、後輩の恋を応援してる先輩のような。
そんなオプションが……。


「離せよーゾロー!」
「大人しくしてろ。セーラの迷惑もちったぁ考えろ」


ゾロが引き剥がしてくれて、ルフィも少し大人しくなってる。
はぁ、と溜息。


「なんだよ〜〜セーラは、俺とキスすんの嫌なのかよ」
「なっ!べ、別に嫌じゃあないけど……」


ちょっ、やめてよそんなこと聞くなんて!!
ロビンもゾロも居るのに!!


「ならいいじゃねェか」
「良くない!だって、その……有難味みたいなのが……無くなるでしょ?」
「ありがたみ?」
「例えば……好きな食べ物でも、毎回3食それだと嫌になるでしょ?」
「いや、ならねェ」
「…………」
「セーラ、ルフィにその例えは意味ねェと思うぜ」


私も今すごく後悔した……。
ロビンは横でくすくす笑っている。


「ルフィは一筋縄ではいかないみたいね」
「ロビン……どうしたらいいの……?」
「好きな時にすればいいだろ?」
「ルフィに聞いてない!」


くわ、とルフィに対して言い、ロビンの言葉を待つ。
ロビンは片手を頬に当てて考えてくれている。


「そうねぇ……貴女が1日に何回って決めちゃえばいいんじゃない?」
「え?」
「そうしたら、いくらルフィでも守ってくれるはずよ」
「そっか!良いね、それ!ありがとう!」


お礼を言うと、ロビンはにこっと笑ってくれた。
ルフィの方を向くと、未だゾロに捕まりながらこっちを見ていた。


「船長命令だ。1日10回!」
「多すぎだっ!」


ばこん、と後ろからゾロがルフィを殴った。
って10回って……。
私の身体とかその他もろもろが疲れきるよ。


「恋人命令。1日3回!」
「えぇー!!勘弁してくれよーセーラー」
「「(それでも3回もいいんだ……)」」
「これでも充分少ない方!破ったらサンジに頼んで夕食抜きにしてもらうからね」


一瞬にしてルフィが絶望的な顔になった。
でも、こうでも言わないと絶対に約束破るからなぁ……。
ちょっと可哀想だけど、私の為にも……。


「んじゃあ、これで1回目」


ルフィが首を少し伸ばして私にさっきみたいにキスをした。
ゾロがはっとしてルフィの身体を引っ張る。
パチン、とルフィは首を引っ込めた。


「る…ふぃ……」
「あらあら」
「こらっゾロ離せよ!あと2回残ってんだ!」


暴れ出すルフィ。
震える私の拳。


「っ……今日はもうなしよ!ルフィの馬鹿っ!」


ごつん、と私は初めてルフィの頭を拳骨で殴った。
首が伸びてルフィの頭が甲板にめり込んだけど、今はそれどころじゃない。
私は走って部屋の奥へと逃げた。


「いっちちちち……」
「お前、アホだろ」
「懲りないわね、ルフィも」
「って!!今日は無しだって!?」
「当たり前だ!セーラは怒って逃げちまったぞ」
「ふふ、恥ずかしかっただけよ」


私はあの後、サンジにルフィが近付かないよう護衛を頼みました。





キスは1日3度まで
(もう少し望みを言うなら、雰囲気を尊重してほしいかな……)