私たちだって、れっきとした恋人だよ? だから、恋人らしく…… デートの一つもしたいじゃない? * 「ゾロー」 「あァ?」 「島に着いたって。一緒に見に行こうよ」 「なんで俺が、」 「さぁ!いざ町へ!」 「聞いてねェし……」 セーラは座り込んでるゾロの腕を持ち上げ、無理矢理立たせる。 あまり乗り気じゃないゾロ。 重い腰を持ち上げて、立ち上がった。 「ほーら、ゾロー。行ってあげなさいよ」 「ナミ……お前には関係ないだろ」 「関係なくないわよ。二人の恋をちゃあんと応援してるんだから」 にしし、と意地悪な笑みを浮かべてゾロに言う。 ゾロはそのナミの笑顔を恨めしそうに見る。 「船の事は心配しないでー。ウソップが船番してくれるから」 「ほら、ナミもああ言ってるし、行こうよー」 「………」 「マリモのくせにデートとは、熱いねぇ」 「てめェは引っ込んでろ!!」 サンジが現れた途端、牙を向くゾロ。 一番からかわれたくない相手のようです。 「なんだ?照れてんのか?」 「……、おいセーラ、行くぞ」 「え?あ、うん!」 今度はゾロがセーラの腕を掴み、船を降りた。 セーラはウキウキ気分でゾロについて行った。 「ったく、世話の焼ける奴ねぇ」 「本当だな、ナミさん」 「こうでも言わないとデートの一つもできないなんて」 「全くだ。…それはいいとして、ナミさーん!俺と一緒にデートしませんかぁー!」 「嫌。まだ書きあがってない海図があるから無理」 「冷たいナミさんも、これはこれで素敵だぁー!」 そんな声が聞こえるのを後に、見送られた二人は船から遠ざかって行った。 「……ゾロ」 「あんだよ、」 少し不機嫌そうな顔つきのゾロが頑張って後をついてきているセーラを見た。 呼びかけて、ようやく立ち止まってくれたゾロの横で、はぁはぁと呼吸する。 「ゾロ、歩くの早いよ」 「あぁ……悪ィ」 その素っ気ない言葉に、セーラはむすっとした表情を作る。 「顔が怖い」 「はァ?」 目が鋭く、眉も吊り上っている。 不機嫌な時は人相も悪くなるので、いくらセーラと一緒に居ても逆に怪しく思われるだろう。 「一応これはデートなんだよ?ほら、もっと楽しそうに!」 お手本を見せるみたいに、セーラは自分の顔を笑顔にする。 ゾロは内心「できねェよ」と呟く。 だが少し機嫌が落ち着いたようだ。 「…俺は充分楽しいつもりだぜ。お前も居るしな」 「本当?……でも私たち、ちゃんと周りから恋人みたいに見えてるかな」 「周り?」 「うん」 「別に周りなんてどーでもいいだろ」 「どうでもよくない!」 まるで駄々をこねるみたいに両手でこぶしを作り胸の前に持ってくる。 頬も膨らまして、何か不満があるようだ。 「だって、私ゾロのことすっごく好きなんだよ?」 「!……あ、あぁ」 セーラがゾロを思う気持ちは、ゾロ自身もよく分かってるつもりだが、改めて言われると結構照れるようだ。 思わず一歩後ずさる。 「だから……こんな、素敵な恋人が居ること……色んな人に知ってほしいもん……」 少し俯き加減で、瞳を潤わしているセーラに、ゾロはごく自然に可愛いと思ってしまう。 完全にしゅんとなってしまったセーラ。 ゾロは少し考えて、仕方なく行動に出た。 「っ…ゾロ……」 「これなら、……見えるだろ、恋人に」 語尾が段々と小さくなっていくことに、ゾロの気持ちが表れている。 ゾロは、セーラの手を自分の手の中に納めた。 道の真ん中で、二人は手を繋いだ。 セーラは、ゾロが初めて自分から手を繋いでくれたことに嬉しさが湧き上がる。 「うん見えるよ、……恋人に!!」 嬉しくて、セーラは手を握り返した。 だが、その後にお何か気付いたように手を離した。 「……セーラ?」 「ゾロ、こっちの方が恋人に見えるよ!」 セーラはゾロの左腕に自分の腕を絡ませた。 身体もゾロの方に寄せ、身体を預けている状態。 「っ……おいセーラ、」 「ね?それに、この方がゾロと近いでしょ?」 「……お前な…」 全く、敵わない。 ゾロは心の中でセーラに向けて言うと、腕を組んでいるのを許し、歩き始めた。 横目で、嬉しそうに頬を赤くするセーラを見て、自分でも気付かない内に笑っていた。 恋人だと、見せ付けたいの (はぁ〜…なんだか、新鮮で幸せな気分)(今日だけだぞ)(えっ何で!ケチ!) |