貴方はいつも、他人に興味を示さない。
一匹狼、っていう言葉がぴったりな貴方は。
中々一筋縄ではいかないところばかり。
周りの気持ちに鈍感で。
自分の気持ちにも鈍い。
そんな貴方を好きになってしまった私は、完全なる負けです。


「………」
「どうしたの?ゾロ」
「いや、寝てんのかと思った」
「ゾロじゃないんだから」


見張り台で蹲ってると、ゾロが登ってきた。
いや本当、貴方じゃないんだから寝ないよ。
ロープに掴まって、ふーんとこっちを見る。
すると、ひょいと見張り台に入ってきた。


「……?」
「暇だからな。下はうるせェし、しばらくここに居る」
「…あっそ」
「何なら代わるぜ?」
「いいよ、少し考え事してたし」


視線だけを送る。
ゾロはそうか、と言うと隣に座った。
急に距離が縮まり、私の心臓はどきどきが止まらない。
ばか。
ばかばか。
鈍感マリモ。
そして……自分に腹が立つ。
こんな気持ちになってるのに、思いを伝えようと思わない自分に。
怖い、怖い。
自分の気持ちを伝えるのが、こんなにも怖いものだとは思わなくって。
遠くの空を見ているゾロを、横目でちらっと見てみる。
でもすぐに視線を戻す。
見つめる勇気もない。
体操座りをして、自分を抱えるようにしていた腕に力が入る。
人を好きになって、想うってことがこんなに辛いものだとは知らなかった。
寂しいものだなんて、思わなかった。


「………セーラ、お前……」


名前を呼ばれるだけで嬉しくて。
見つめられるだけで恥ずかしくて。


「泣いてんのか………?」


嬉しいような、哀しいような。
色んな気持ちが混ざって、涙となって溢れてきた。
説明できる涙じゃない。
ましてや、想い人の貴方に。


「っ……泣いてなんかないわよ、」


言葉の代わりに、想いを吐き出しているのよ……。
なんて、きっと貴方は気付かないと思うけど。
私は何も言わない。
ただ、溢れる涙が止まることを願っているのに。


「………」
「っ……ゾロ…」
「何だか分かんねェけど、泣くな」
「……、あんたが、言うな……」
「あ?」
「……っ―――」


貴方の大きな手が私の頭を包み、胸板に押し付ける。
そんなことされたら、止まる涙も止まらないよ……。
私に興味なんてないくせに、こんなことしないでよっ……。

想いとは裏腹に、私はゾロの胸の中で泣き続けることしかできなかった。





貴方が泣かせたくせになんて言えない
(言えてしまえたら、この気持ちも打ち明けられるのに)