「いいなぁーケーキぃ」
「サンジくんに貰ったら?」
「それ、女専用だって」
「だったらしょうがないよ」


私が甲板でサンジくんに貰ったケーキを食べようとしていると、物欲しそうにルフィが近寄ってきた。
少し涎が見えるけど、私は見て見ぬふり。
本当ならあげたいんだけど、残念ながら私もケーキは大好きだから。


「頼むよ〜一口でいいから!」
「やだ。ルフィの一口は大きいもん」


このくらいのケーキなら全部で一口でしょう?
私はルフィの目の前でケーキをフォークで切って食べる。
それを涙目で見つめるルフィ。
少し罪悪感を感じつつも、目の前の美味しそうなケーキに喉が鳴る。


「うまそうだなぁ〜〜〜……」
「当たり前。サンジくんが作ってくれたんだし」


ケーキを口に運んで、ぱくっと食べる。
その動きをルフィが真似していて少し可愛く思えた。


「いいなぁ〜もっかい頼んでみよっかな〜」
「そうしたら?サンジくんなら作ってくれるよ」
「そうかな〜…」
「ごちそうさま」
「って食べたのか!?」


空になったお皿を残念そうに見つめるルフィ。


「ごめんね?食べちゃった」


元々あげる気は無かったけど。
でも少し可哀想に思えて謝ってみる。
机に顔を乗せて元気がなさそうだから、顔も近付けて。


「んーまぁいいや。ケーキがだめならセーラにする」
「へ?」


にいっと笑ったと思うと、ルフィは私を軽々と抱きかかえて壁にもたれさせた。
ルフィの顔が、すぐ目の前にある。
突然の出来事に、頭の中が真っ白になった。


「ちょっ……ルフィ?」
「セーラ、ケーキと同じくらい甘い匂いする」


次に、肩に顔を埋めさせる。
くすぐったくて、肩に力が入った。


「待っ…て、だめだよ、向こうではゾロがトレーニングしてるし、あっちではロビンが読書……」
「関係ねェ」


早口で言ったのに、一言で会話が終了した。
その一言の後、ルフィは耳を甘噛みしてきた。
それに感じてしまい、声を出すとルフィはまたにやっと笑う。


「…っルフィ……」


私は背中に手を伸ばし、ぎゅっと服を掴む。
半分ほど諦めかけたその時。

ぐうきゅるるる〜…


「あ、」
「っ!?」
「やべ、腹鳴った」
「〜〜…っ……ルフィ!」


ごつん、と鈍い音がしてルフィが頭を抑える。
私は感情に任せてげんこつを下した。
だってだって、雰囲気ぶち壊しじゃん?
いや、別にあのまま続きがしたかったとかじゃなくて、ただ……オチが……。


「……ルフィのバカ」
「いやー悪ィ悪ィ!やっぱ腹が減ってたら我慢できねェや」
「もう……じゃあ、続きは今度でいいや……」
「ん?続きして欲しいのか?」
「ばっ別にそういうわけじゃないわよ!」


たまに核心をつくのがルフィ。
こういう時は止めて欲しい……。


「にししっ、そうだな、また今度にすっか」
「……聞いてない…」
「とりあえず今は、飯だーーーー!!」


可愛いと思えたり
男っぽくなったり
本当、調子狂っちゃうよ。


「ほら、セーラも早く来いよー!」
「あ、ちょっともう、そんなに急がなくてもいいじゃん!」


今は子供みたいに腕を引っ張って楽しそうにしてる。
それにつられて、私も変わってるのかな。

こんな午後の一時、この瞬間が
幸せって言うのかな。





甘ったるい午後の時間
(次からは少しだけケーキ分けてあげるからね)(本当か?さっすがセーラ!)