暖かい日差し。
ぽかぽかと流れる空気。
そんな穏やかな環境の中、一人の少女は壁にもたれて眠っていた。


「……呑気なもんだぜ」


さっきまでお昼ご飯でルフィたちが暴れていたのに。
それでも目を覚まさず、気持ち良さそうなセーラの寝顔に向かってゾロは呟いた。
規則正しい寝息を立てて眠っている、小さな彼女に。


「おーい、起きろ。お前だけ昼飯食い損ねてるぞ」


寝入ったセーラは簡単には起きないので、全員一致で寝かせることにしていた。
ゾロはしゃがんで言った。
だが、起きない。それは分かっている。


「……ったく、面倒かけさせるな…」


はぁ、と息をつく。
そして、次の手段として肩を揺する。
それでも首がカクカク動くだけで起きる様子はない。


「…こいつの睡眠はルフィ並だな」


いやいや、貴方もですよ。というのは置いておいて。
どうしても起きないのでゾロはセーラの頬をつねってみることにした。
だが、むにっとした柔らかい感触が伝わるだけで起きない。
と思ったら、薄らと瞼が開き始めた。


「ん……あれ、朝……?」
「昼だ。やっと起きたか」
「あー…ゾロだー」


ん、と伸びをして、眠たそうな目をこする。


「ゾロ聞いてーあのね、さっき夢見てたんだけどね……」
「あァ?夢?」
「うん。夢ー。それで見てたら、起きたくなくて……」
「はぁ…どんな夢見てたんだよ」
「ゾロの夢」
「はァ!?」


一瞬にして言葉を失くすゾロ。
というか、どう反応していいのか分からないようだ。


「珍しくね、ゾロが優しくて……」
「(いつもの俺は優しくねェのかよ)」
「両手で柔らかく抱き締めてくれて、優しくキスしてくれて、大好きだ≠チて言ってくれたの」
「………(それは俺なのか?)」


少し疑問を抱えるゾロ。
自分はそんなことをしないとでも思っているようです。


「えへへ、夢の中のゾロは優しかったなー」
「………」
「もうちょっと寝ていたかったけど……仕方ないなぁ」
「………」
「ゾロ、お昼ご飯って残って……」


瞬間、ゾロは前からセーラを抱き締めた。
セーラは、急に抱き締められ困惑気味の表情。


「ゾ、ロ……?」
「夢なんかどうでもいいだろ」


ゾロが耳元で呟く。


「え……?」
「っ……現実の俺を見ろよ。例え俺≠ナも、夢で別の男を見るな……」
「ゾロ……それって……」


嫉妬?と言う前に、唇はゾロに塞がれた。
予想外のことに目を見開いていると、ゾロはもうどうにでもなれというような表情をしていた。
それが、どうしようもなく愛おしくて。


「ん…っぁ……ふ、」


唇が離れると、セーラはゾロを見つめる。
ゾロは、少し照れているのか目を逸らした。


「ふふ、やっぱり現実のゾロの方がずっといい!」
「…分かったんならもう変なこと言うなよ」
「うん。でも、夢が現実になったのは嬉しいなー……」
「……何だよ、その目は」
「まだ、大好き≠チて言われてない!」
「っな……!?」


期待を込められて瞳で言われ、もうゾロはそれを裏切るわけにはいかない。


「……わーったよ。……俺は、お前のことを愛してるかr」
「私も愛してるっ!!」
「って最後まで聞けよ!!」


その後は今度はゾロが抱き締められ、タイミングよく皆集まってきて大変でした。





貴方は正夢を見せてくれる
(これだったらまた夢見てもいいかな〜)(もう二度とやんねェぞ)