突然だけど、感じた。
こんな特別何もない日常に、
幸せ≠チてもんを。



*

今日も一段と日が照ってて、良い昼寝日和だった。
とりあえず船首のところで腰を降ろし、じっとしていること1分で夢の世界。
今さっき眠りから覚めたが、瞼を開けようとは思わない。
なんだか気持ちがいい。
風が心地よく吹いてるし、なんだか良い匂いもする。
もう少し、このままで居たいと思った。
きっと、外はいつも通りだ。
今も変わらず船は進路を進んで、甲板ではルフィやチョッパーが走り回ってる。
ナミとロビンは日陰で話でもしてんだろ。
んで、クソコックはその二人に何か貢いでる。
そして、セーラは……、


「ゾロ、起きた?」
「……………!?」


ぱち、と目を開けるとそこにはセーラが俺の顔を覗き込んでいた。
俺が起きたと分かると、微笑んで俺の頬に触れる。
ああ……こいつか。
さっきからしていた良い匂いは。


「もう、もう少しで足しびれちゃうとこだった」
「……ん?」


今気付いたが、俺はセーラに膝枕されていた。
自分のいる状況を理解すると、急いで飛び起きる。


「な、何してんだよ……」
「何してんだよって……それはこっちのセリフ。ゾロが勝手に私の膝を使ったんじゃない」
「はァ?」


セーラの話によると、眠っている俺の横に座ると、俺の姿勢が崩れてさっきの膝枕状態になったらしい。


「何か用でもあったのか?」
「え?」
「用も無しに俺のとこに来るのか」
「………」


お、赤くなった。
もしかして、図星か?


「……だって、少しでも多く、ゾロの近くに居たかったから……」
「っ」


俺は予想外の言葉に思わず言葉が詰まる。
まさかこんな答えが返ってくるなんて。
いつもなら下手な嘘で誤魔化すくせに。
不意打ちだ……。


「ゾロ、いつもこの時間寝ちゃうんだもん……」
「ああ……」


確かに、朝飯食ってから昼飯の間は寝ることが多いな。
そこまで暑くもなく、暖かいから、この時間帯が好きなだけだった。
少し切なそうな顔を見せたセーラだったが、ぱっと顔を上げると、


「でも、ゾロの寝顔たくさん見たもんね!」


と笑って言った。
ああくそ、可愛いな……。


「ああ、そうかよ」


船首にもたれて、セーラの腕を引っ張る。


「え、え?」


戸惑いながらも、抵抗することはない。
セーラはあっさり俺の足の間に来た。


「ゾロ?」
「もっかい寝る」
「え!また寝るの?」
「ああ」


後ろからセーラを抱き締める。
結構この感じは好きだ。


「また私まで?」
「いいだろ……別に」
「首、こっちゃうもん」
「後で揉んでやる」
「そういう問題じゃなくて……」


顔を俺の方に向かせたセーラの唇にそっとキスをした。
隙だらけだ。


「っ………ゾロ!」
「眠る前のキス、だ」
「……また…我儘なんだから」


そしてセーラを抱きしめながら目を閉じる。
セーラの良い匂いがまた鼻に届く。
風がまた吹いて、セーラの長い髪がちらちら顔にぶつかってくすぐったい。


「……ゾロ、おやすみ」


こんな一時がすげェ手離したくない幸せって思えるなんざ。
ほとんど初めてだった。





おはようとおやすみ
(これからも、お前がずっと傍に居たら……って、これも我儘か?)