「ゾロー!ゾーローっ?」
「っ!うるせーなァもう!」
「あ、居たっ!」


私は船首の近くにいたゾロに飛び付く。
すると、ゾロは「う、」と困った顔をしながらもちゃんと私を受け止めてくれる。
そんな優しさに、私は今日も甘えてる。


「ふふ、本当にセーラちゃんはゾロが好きなのね」
「セーラちゃーん…そんなマリモのどこがいいんだい…?」
「むぅ、ゾロはマリモじゃないよ?私の大切な人なんだから」


そう言うと、サンジがハンカチを噛みながら走り去ってしまった。
……そんなに変なこと言ったのかな?


「しかし、何でそうゾロにばっかり懐くのかしらね」
「……おいナミ、頬杖ついてねェでどうにかしろよ」
「それは無理よ。セーラを無理矢理引き剥がすわけにはいかないでしょ?」
「それを俺は望んでるんだが」


私はゾロにぶらさがってその会話を聞いている。


「もう、ゾロは照れ屋だね」
「お前は黙ってろ!」


……怒られちゃった。


「あーあ。痴話喧嘩なんか聞いてられっかよ。ルフィ、あっちで釣りでもしよーぜ」
「おーいいぞ!」


ウソップとルフィがあっちに行っちゃった。
それにつられて、他の皆も散らばっていく。
うーん……これは、私たちに気を遣ってくれてるのかな?


「ったく……疲れた」
「え、大丈夫?」
「お前のせいだ」


私はゾロから離れてみた。
すると、ゾロは力なしに座り込んじゃった。
私は少し心配になって、ゾロの隣に座る。
ゾロは額を押さえていた。
私はそんなゾロをじーっと見る。


「……セーラ、」
「なに?」
「どうしてお前は、そんなに俺に構うんだよ」
「好きだから」
「………はぁー…」


すごい大きな溜息。
全く、どうしちゃったのかな。


「よくそんなこと軽々しく言えるな…」
「あ、もしかして照れてた?」
「…ばーか」


やっぱり。
これはゾロの照れ隠しだね。


「……でも、ゾロがいけないんだよ?」


ふふっと笑ってみる。
すると、ゾロは少し驚いたように私を見た。


「だって、ゾロがこの気持ち教えてくれたんだもん」
「………俺が?」
「うん。ゾロがあの時、私を助けてくれたから……」


数日前の事を思い出す。
私は山賊に襲われているところをゾロに助けられたんだ。
あの凶悪な山賊を……ゾロは、一撃で倒しちゃったの。
もしあの時助けられなかったら、私は確実に死んでたと思う。


「………あれか」
「うん。……よく考えたら、ゾロに一目惚れしたのかもしれない」
「………」
「だから…私が今ここにいるのも、ゾロのおかげ。ゾロが救ってくれた命だから、私は絶対にゾロの傍にいるって決めたの」
「お前な…」


ゾロはまた溜息をついた。
でも、それはなんだか照れ隠しに近い溜息で。


「どうでもいいけどよ、お前はそれでいいのか?」
「ん?」
「こんな俺のことで海賊船になんざ乗っちまって。お前の人生180度変わるぜ」
「そんなの覚悟してるよ。だって、私は大剣豪のお嫁さんになるんだもん」


すると、ゾロは珍しく笑って、


「ばーか。早ェよ」
「大剣豪が?お嫁さんが?」
「両方だ」


そうしてゾロは、私の頭を自分の方に引き寄せた。
そして何故か分からないけど、私たち二人は笑った。
それは、お互いを認めた証拠。

私たちの旅は、まだまだずっと続いていく。





あなたがいるから私がいる
(もしかしたらあの時、)(目が合った時から…こうなることが分かってたのかもな)