セーラは、気がつくといつも泣いている。
俺が傍に居ると、泣く。
声を押し殺して泣く様が、何故か酷く俺の心に焼きついた。
でも、俺はセーラの傍から離れようなんて思ってない。
一緒に居て、こいつの恐怖を取り除きたい。
そう思って暇があればセーラの傍に行くんだが、


「………っっ、――――」


ああ、まただ。
声を押し殺して、泣いている。


「セーラ………」
「っ!!ご、めんなさ……ごめっ……」


セーラが泣くのは、今までずっと独りだったからだ。
独りで生きていて、孤独で。
幸せなんて一度も感じたことがないと言っていた。
こうやって泣きながら謝るのも、捨てられるんじゃないかと怯えているからだ。

幸せ過ぎて、溢れる涙を押さえきれない。

これが、セーラが泣いてしまう理由だとロビンは言っていた。


「謝るな」
「……っ……う、ひっく……」


そう言うと、謝るのは止める。
だけど涙までは止められない。
だから、そのまま泣き続ける………のが、いつものことだった。


「も……泣かない、から……」


だが、今日は違った。
もう泣かないから
そうセーラは言った。
初めての言葉に俺は驚いてセーラを見つめる。


「だから……見捨てないで……っ」
「………っ」


俺は無意識にセーラを抱き締める。
愛らしい、とか、そういう理由じゃなくて。
このまま手離していたら、セーラが戻ってこなくなりそうで。
俺はその恐怖のうちに抱き締めていた。


「っぞ、ろ………」


セーラが俺の名を呟く。
心地良い。
俺を抱きしめ返すセーラの手が震えている。


「……離さねェよ」


囁いた。
このまま強く抱き締めると、折れてしまいそうな細い身体。
脆くて、壊れやすい心に響くように。


「不安な時は泣けばいい……。その時は、俺が傍に居てやるから」
「っ……」
「無理はしなくていい。……少しずつで、いいからな……」


しっかりとセーラに届くように、呟いた。


「……あり、がと……っ」


セーラはぎゅ、と俺の服を掴んだ。


「……っあれ……どうしよ……また、涙が……」


俺の腕の中にあるセーラの頭が下を向く。


「……ゾロ、濡れちゃうよ……」


遠慮がちに呟くが、俺は離れる気は毛頭ない。


「……いいから、泣いてろ」
「っゾロ………?」
「………………てる」


自分でも聞こえないくらい小さな声で呟いた。
だが、セーラには聞こえていたらしい。


「ゾロ……私も、愛してる……」


その言葉を聞いた時、俺まで泣きたくなってきた。
これがセーラの気持ちなんだと思った。

離したくない。
離れたくない。
遠くに行ってしまうのが怖い。

これだけ、相手のことを想っているこの気持ちが。
とてつもなく虚しかった。





今はその滴を拭うことしかできない
(いつか、お前にとって一番安心できる存在になりたい)