貴方に守ってもらうなんて、
そんな弱い女になりたくないわ。



*

「………ん〜」


今日も良い天気だ、と言わんばかりに起きて早々伸びをするセーラ。
そしてゆっくりベッドから降り、着替えを済ます。
もう少し部屋に居たいところだが、あまり朝遅いとキッドが怒るので、セーラは部屋から出た。


「あ、居たの」


部屋を出るとすぐ、キッドが居た。
セーラは大して驚きもせず、キッドを見る。


「……たまたま通っただけだ」
「そう、じゃあ、朝食食べに行きましょ」


そう言い、隣を過ぎようとすると、キッドはセーラの腕を掴む。
一瞬セーラの動きが止まると、ゆっくり振り返る。


「………痛い」


少し顔を歪めて告げると、キッドはセーラの体を引き寄せて太腿に手を伸ばした。
その顔は無表情……というより、少し怒りを表している。


「っ……」


スカートの中をもぐるキッドの手を止めようと反抗するが、力では負けてしまう。
キッドは少しスカートの中を弄ると、一丁の拳銃を取り出した。


「………返して、」
「こんなもの、持つなって言っただろ」
「………」
「お前は女だろ」


キッドのその一言に、セーラは掴まれている右手を振り解いた。


「女だから、何?」
「……武器なんて持たなくていい」
「なんで?」
「お前は俺が守るからだ」


セーラはキッドに気付かれないように唇を噛む。
セーラは女だから守られる≠ニいう考えが嫌いだった。
女だから、どうして男に身を預けないといけないの?
まして、自分の愛している人に。
自分の身を守る代わりに傷つけられたら元も子もない。
自分の身は自分で守る。
セーラはそう心に決めていた。


「……別に、守られたいなんて思ってないわ。私は、自分の身くらい自分で守れる、」
「………」
「だから、返して……。キッドの、足手まといになりたくないのよ……」


キッドに取り上げられた拳銃に手を伸ばすと、その手は再び捕らえられ、後ろから抱き締められる形になった。
キッドは拳銃をポケットに仕舞う。


「っ!……き、っど……」
「自分の身は自分で守るんだろ?だったら、俺から逃れてみろよ」


耳元で囁かれたと思うと、いつの間にか両手を拘束されていた。


「ちょ、キッド……!」


キッドの左手がセーラの上着に侵入する。
セーラは急の出来事に声を荒げた。


「ほら、自分の身を守ってみろよ。今俺は、お前を襲ってるただの男だ」


そうキッドに言われるものの、セーラは両手の自由を奪われている為、抵抗できない。
そうしている間にも、キッドの手は下着に届く。


「……っ止め……!」


必死で両手の拘束を解こうとするが、キッドの大きな手に自分の両手首はすっかり収まってしまっている。
もう声で抵抗する他なかった。
だがその手段も、キッドがついに下着のホックを外したことで出来なくなってしまった。
悔しくて、声が出ない………。


「………っ」
「……泣くくらいなら、何で素直に聞かねェんだよ」


声の代わりに、セーラは涙を流していた。
それに気付いたキッドは手を離し、セーラを自分の方に向かせた。


「っ……だって、……もし、私が弱くて……キッドに……怪我させたら……」


いつもキッドは自分の為に、セーラの為に戦っていることにセーラは気付いていた。
強いとはいえ、怪我をしてしまう時はある。
その時に、キッドは気にするなと言うけど、少し自分を責めていた部分もあった。
セーラは、キッドが怪我をするくらいなら守られたくないと思った。


「はぁ……馬鹿かお前は」
「な、馬鹿って……!」
「俺が好きで守ってんだよ。グダグダ言わずに守られてろ」
「っ……」
「それに、男が惚れた女を守るのは当然だろうが」


本当に当たり前のことを言うように、キッドはセーラに告げる。

……そんな言葉、キッドに似合わないよ。
そんな事目の前で言われて、私どんな顔すればいいの?
さっきまで、あんなに拒否してたのに。


「いいな?俺にお前を守らせろ」
「……そんな事言うと、私本当に何もしないよ?」
「上等だ」
「キッドだって、怪我しちゃいけないから」
「する気なんてねェよ」


どの言葉にも、強気で返事してくれる貴方が居る。
………ずるいよ。
もう、何も反論できないじゃない。


「……それなら、分かった」
「ああ。それでいい。……飯、食いに行くぞ」
「うん」


もしかしたら、
私が貴方に怪我をさせたくない、って思っている以上に、
貴方は、
私に怪我させたくないのかなって。
ほんの少し、
嬉しくなってしまった。





我儘じゃなくて、愛なのを知っていて
(最後にこれだけ、覚えていてくれたらいい)