普通さ、 照れるとか、謝るとか……… そういうリアクションが欲しくない? * 「セーラちゃん、今日は先にお風呂入ったら?」 「え、いいの?」 「ええ。今日はナミは海図書いてるし、私はこの本を読み終えたいから」 「ありがと〜ロビン!」 普段はナミが一番に入って、その次にロビン、その次に私。 男たちはちらちらと。 私がルフィやチョッパーと遊んでいる間にお風呂に入っちゃう、みたいな感じだ。 「初めての一番風呂……!」 少し感動しながらも服を脱いでシャワーを浴びた。 「んんー!気持ちいい……」 思う存分にシャワーから流れるお湯を浴びる。 一番でなくても気持ちの良い瞬間だが、少し気分がいい。 「よーし、お風呂浸かろっと」 軽く体を流したところで湯船に浸かる。 肩まで浸かったところで思い切り息を吐いて温度をため込む。 いやぁ、極楽だね。 湯加減も丁度いいし。 思わず眠ってしまうくらい心地よかった。 「ふぅ〜………こんなに気持ちいいのに、何で皆は毎日入らないんだろ」 サンジは別として、ゾロはすぐ寝ちゃうし、ルフィは一日中遊んでるし、ウソップは工場で集中してる。 チョッパーは何故か少し嫌がるし。 信じられないよ……。 何も汚いとは言わないけど、こんな気分を毎日味わえないのが残念だと私は思う。 「あ……考えてたらのぼせちゃう。出よ」 ゆっくり湯船から立ち上がり、ぴちゃ、と音を立ててタイルに足をつける。 そしてタオルを取ろうとしたその時、 ガチャ。 お風呂、トイレをつなぐ一つの扉が開いた。 私は一瞬、時が止まったかのようにそちらを見る。 「あ、なんだ、入ってたのか」 ひどく素っ気ない言い方で私を見たのはゾロ。 そう、私の恋人である、ゾロ。 そしてぱたんと扉を閉める。 私は呆然と扉を見つめたまま、全裸で立っていた。 一拍遅れて、喉から悲鳴が出た。 「きゃあああああああああああっ!」 その悲鳴はきっと船中に響いただろう。 「うっうっ……私、もうお嫁に行けない……」 入浴後、すぐさま着替えてナミに泣きついた私。 そんな私を、ナミは頭を撫でながら慰めてくれた。 「照れるとか……言い訳するとか、リアクションが……っ」 「まー、あいつにそんなリアクションを求めるのもどうかと思うけど……」 「ふふ、それが剣士さんの反応なんじゃない?」 理由を話していると、いつの間にか女部屋に全員が終結していた。 ……ゾロ以外。 「どうしたんだい?セーラちゃん」 「びっくりしてカナヅチ自分の指に打っちまったじゃねーか」 「何か怖いものでもあったのか?」 「う、うっ……」 皆の言葉に私は答えることができない。 「腹減ったのか?肉あるぞ」 「うぅ……」 私は激しく首を横に振る。 男たちは首を傾げるばかり。 ……普通、異性の裸を見たら恥ずかしいよね。 例えば、「あ、悪ィ!」「み、見てねェからな!」とか……。 そういう反応が来ると思うのよね? それがなかったって事=恥ずかしくない。 恥ずかしくない=萌えない。 萌えない=私の体が貧弱!! そんな方程式が思い浮かび、私は涙も出ないほどに落ち込んだ。 「……負のオーラが出てるわね」 ロビンの言葉に、私はむくっと上半身を起こした。 「ねぇ………皆、」 くるっと後ろを向き、男たちを見上げる。 「私の体って……貧弱?」 少し胸元をはだけさせて、上目遣いでそう呟いた。 そうするとサンジは当たり前のように目をハートにして鼻血を出すし、ウソップもごくりと唾を飲み込む。 チョッパーとルフィは……まぁいいけど。 「ぜーんぜん!むしろキューティクルなボディーです!」 「つ、つかお前っ何があったんだよ!」 サンジは食いつく。 ウソップは照れてる。 うん、これが普通の反応よ。 異性の身体を見たら、恥ずかしくなってどきどきするのが普通なのに……。 ……! もしかして、ゾロもルフィとチョッパーと同じ人外……!? 「それなら本人に聞いてきたら?それが一番すっきりするわよ」 ナミの助言に、私はすくっと立ち上がる。 「それもそうね!恋人の裸体を見て動揺しない男なんていないわよね!」 私はそう決め付け、部屋を飛び出した。 そして、ゾロがいると思われる見張り台に向かった。 「な、何ぃー!クソ剣士がセーラちゃんのお風呂覗きー!?」 「で、『あ、いたのか』っていう一言に対してセーラは落ち込んでたのよ」 「あんの野郎…!なんてそんな羨まし……いや、ふざけたことを……!」 「だからあんなに泣いてたのか」 「ふふっ、可愛いわね」 そういう話になったが、ナミが、すぐに仲直りするでしょ、と言ったことによって解散することになった。 「ゾロー…ゾロー!」 私は名前を呼びながら見張り台に上がった。 ひょこっと中を覗いてみると、呑気にまぁ……寝てること。 あの……私のさっきの悲鳴気にしてないってこと? 「………ゾロ!!起きろ!!」 何だか腹が立って夜にも関わらず大声を出した。 するとゾロは首をがくっとさせて起きた。 「……おぉ、セーラか」 「『セーラか』じゃないわよ!何でこんなとこで寝てるのよ」 「なんでって……見張りじゃねェか」 そんなことは見たら分かる。 私が聞きたいのは、さっきのことがあってどうしてそう平然としていられるかってこと。 だけど、そんな私の気持ちはきっと察せない。 鈍感だし……。 乙女心なんてさらさら理解できそうもないもんね。 「じゃあ聞くけど、さっきのことは覚えてる?」 「さっき?」 「その……お風呂場の、」 「ああ、覚えてるぜ」 「……何でそんなに平然としてるのよ…」 「は?」 「仮にも恋人の裸体を見たのに照れたりしないの!?」 私はすんごく恥ずかしかった! 恥ずかしくて頭が真っ白になって頭がくらくらした。 そういうの……ゾロにはないのかな? 「裸体って……お前、そんなの気にしてたのか」 「そ、そんなのって……!」 私はショックでゾロの隣で体操座りをした。 「………おい」 「何よ…人の気もしらないで……もう私お嫁に行けない……」 本日2回目の発言。 いや、本当にそう思うよ。 「その時はもらってやるよ」 「あぁそうですか…………ってえぇ!?」 びっくりしたので顔を上げてゾロを見てみると、ゾロも横目で私を見ていた。 「大体な、お前な、好きな女の体見て平気でいられるわけないだろ」 「……へ?」 大分間抜けな声が出る。 え、何これ…ここにきてデレてる? 「それって……私の体に魅力がなかったわけじゃ…ない……?」 「あほか。押し倒すところだった」 「!?」 「ってのは冗談として、」 「!?」 こいつ……! 「で、お前はでけェ悲鳴あげるほど恥ずかしかったんだな」 「えっ…」 ゾロの顔を見ると、楽しそうににやにや笑っていた。 「………ゾロの馬鹿」 「何とでも言え」 「変態」 「あぁ」 ゾロがそっと私の肩を引き寄せる。 私はゾロの顔から目逸らし、 「……好き」 ゾロは口で答える代りに、私の火照っている頬にキスをした。 心の中まで見えないけれど (私が貴方のこと好きというのも、貴方が私がを好きというのもバレバレなんだね) |