「ねぇ光〜」
「何スか、先輩」
「好きって言ってよ」
「はぁ?」


突然の言葉に、俺は眉を寄せて先輩を見た。


「何なんスか、いきなり」
「言葉の通りやん。好きって言うてよ」
「……何で?」
「あたしら恋人やろ!」


頬を膨らませて怒る俺より背の小さい先輩。
覗き込んで怒ってもそう怖くないんやけど。


「最近照れてんのか知らんけど全然言うてくれへんやん」
「いや、全然照れてないんスけど」
「1回くらい言ってよー」
「あーすんません。最近部活が忙しいねん」
「忙しくても言えるやん!」


ケチー、と俺の服を引っ張りながらねだる。
俺は溜息をついた。


「何でそんなに言うて欲しいんスか」


頭をかきながら質問を投げかけた。
すると先輩は、


「それをあたしに言わせる気!?」
「一体何なんスか」


俺の服から手を離したと思ったら自分を抱く感じに腕を自分の身体に巻きつけた。


「……じゃあ、先輩から言うてくれたら言ってあげてもいいッスよ」


ちょっと意地悪っぽく言ったら、う、と先輩は口を噤んだ。


「……後輩のくせに、生意気」
「知ってます」
「……ケチ」
「先輩が先に言うたんスから」


気が済んだのか、それで少し黙った。
そして、


「そーゆーとこが、好きなんやから」


目を合わしてくれなかったのが少し残念だけど、はっきりと言ってくれた。


「よー言えました」


満足気に俺は言うと、忘れてないよね、と言いたそうな顔で、


「次、光の番」


俺を見上げて言った。
こういう時だけ目を合わせるんだからな。


「しゃーないッスね」


はぁ、と短く溜息をして、


「俺、先輩が想っとるより先輩のこと好きッスよ?」


目を見たままは流石に恥ずかしかったから、耳元で言った。


「〜〜っ!」


すると、先輩はおもむろに抱きついてきた。


「っ…恥ずかしいやんか…」
「……俺には抱き着く方が恥ずかしいと思うんスけどね」


これも、先輩の照れ隠しなんだろう。
そういうとこは可愛いんやけどな。


「…なぁ白石、あいつらここがどこか分かっとんのか?」
「さぁ、分かっててやっとるんかもな」


同じ部室内に居た先輩が何か言ってたのが聞こえたが、俺は気にせず見せ付けた。

好きって言ってとねだらせるのもいいけど、
次はもうちょっと自分から好きって言うのもええかもしれんな。





好きと言ってとねだる君
(先輩のくせに、子供っぽいんスから)