翌日、早速グレートサイヤマンに変身して学校へと向かう悟飯を皆で見送る。 変身していれば正体も気付かれないため、筋斗雲を使う必要もなくなったようだ。 今度はきちんと弁当を忘れずに持っていき、ライも安心して空を眺めた。 そして今日は悟天と遊ぶ約束をしていたため天界へは行かず、昼になるまで悟天と遊んでいた。 昼からは久しぶりにカプセルコーポレーションへと向かった。悟飯にスーツを作ってくれたブルマにお礼を言いがてら、トランクスにも会いに行こうと思ったのだ。 そうして向かう途中、遠くで悟飯の気を感じたため、早速変身して何のしがらみもなく人助けをしているんだと思いライも嬉しそうに笑う。 「お久しぶりです、ブルマさん!」 「あらライちゃん久しぶり。相変わらず元気そうね」 笑って言うブルマの言葉にライもにこっと笑う。 「はい!それとブルマさん、昨日は悟飯がお世話になりました」 「いいのよいいのよ、悟飯くんらしくて微笑ましいわ」 丁寧にぺこりとお辞儀をするライを見て、ブルマは手を振って言う。 ライも幼い頃から礼儀正しいのは変わらないと、ブルマはそっと思った。 「あ!ライさん!」 「トランクス!久しぶり!」 近くを通りがかったトランクスがライに気付き、嬉しそうに声を上げて近寄る。 ライも笑顔でトランクスを見た。 「遊びに来てくれたの?」 「うーん、それもあるけど、ブルマさんに悟飯のスーツありがとうってお礼を言いにね」 「あ、あれかぁ……」 トランクスは昨日の悟飯の姿を思い出し何とも言えない表情になる。トランクスには不評のようだ。 「悟飯ってばすごく喜んでて。かっこよくて正体も隠せて、一石二鳥ね」 「……ライさんもかっこいいと思ってるの……?」 「?うん、だってかっこよかったでしょ?」 「………」 冗談を言っているようには見えないライの態度にトランクスは思わず黙り込む。さすがに肯定も否定もできなかった。 「そ、それよりも何して遊ぶ?」 とはいえ、ライが来たことは嬉しいトランクスは話題を変えようとそう提案する。 そうねえと考え込むライだったが、ふと悟飯の気がこっちに向かってくることに気付いた。 「ちょうど悟飯も来るみたいだし、悟飯も誘ってみよっか」 「うん!」 またしても嬉しそうに笑うトランクスを見て、ライもその無邪気な笑顔を見て笑った。 昔自分たちに危機を知らせてくれた未来のトランクス。当時は自分よりずっと大人で、優しくて強くて、しっかりとしたイメージしかなかった。 だが目の前の子供のトランクスは年相応に子供らしく、ちょっぴり意地っ張りでずる賢いところもあるが、とても幸せそうだ。 家族にも囲まれて、そんなトランクスを見るとライも幸せな気持ちになった。 「ライさん?」 「あっ、ごめんごめん。何でもないの」 自分をじっと見てくるライに気付き首を傾げるトランクス。 不思議そうに自分を見上げるトランクスを見て、ライは首を横に振ってトランクス頭を撫でた。 もうそんな子供じゃないよ……と呟くトランクスだが、嫌がったり振り払おうという素振りはない。むしろ少し顔を赤くしていた。 そんなトランクスの表情に気付くことなく、ライは笑ったまま。 そのうちに悟飯がやってきた。 「ねえさん……来てたんだ」 「うん。ちょっとね」 ブルマの元にやってきた悟飯はライを見て言う。驚くことはなかったが、少し気まずそうに悟飯は目を伏せた。 何やらはっきりしない悟飯の態度にライは首を傾げたが、次に出た言葉に驚くことになる。 「えっと……今度の天下一武道会に出場することになって……」 「天下一武道会!?」 まさか悟飯の口からそんな内容が飛び出してくるとは思わず、ライは驚き声を荒げて言う。 ブルマも意外そうに悟飯を見て、なんで?と疑問を口にする。 「いやあ…実はクラスメイトにあの、ミスター・サタンの娘さんがいまして…」 「ミスター・サタン!?ミスター・サタンって、セルと戦った時チョロチョロとジャマしてたやつでしょ?格闘技の世界チャンピオンの…その娘がクラスメイトなんだー!」 びっくりしたように言うブルマに、ライも当時のことを思い出す。 懐かしいなと思うのと同時に、やはり同い年の子供がいたことに驚いた。 「ええ、でもけっこういい子なんですよ。ボクと一緒で、悪いヤツは放っておけないタイプで…」 「そうなんだ!すごいわね」 確かに昔のサタンも、実力はどうであれセルを倒して地球を救おうとはしていた。 その娘がそういった正義感の強い子であっても驚きはしない。 悟飯もうんと頷き、ライの前では言いにくそうにまた口を開いた。 「でもその子に、ボクの変身がバレちゃったんです…声とかで…。で、一緒に天下一武道会に出場しないと正体をバラすって言われて…」 「えっ!正体バレちゃったの!?」 悟飯の告白に驚き眉を寄せたのはライ。 「もうっ、あれだけ気を付けてねって言ったのに……!」 「ご、ごめんねえさん……あっちも上手で……」 ライの責めるような口調に、つい小さくなってしまう悟飯。 だが正体がバレたときのビーデルの誘導尋問もなかなかのもので、と思い出す。 「ドジね〜。そういうとこ、しっかりしてるようでもおとうさんの血を受け継いでんのね」 ブルマも悟飯をまじまじと見て、でも責めるようなことは言わずにおいた。 それはライだけで十分だろう。 「…で、なに?声も変えられるようにヘルメットを改造してほしいわけ?」 「いえ、そうじゃなくて」 ブルマの疑問に悟飯は説明をする。 どうやら、天下一武道会に出場するにあたって、ヘルメットやプロテクターなどの装備は着けてはいけないらしい。 そのため今あるヘルメットの代わりになるものが何かないか、ブルマに助言を求めに来たようだ。 「ふんふん…要するに、ダメージをうんと減らしちゃうようなものを着けてちゃダメってことね…」 納得するブルマ。 それはライも同じようで、そんなルールがあるのねと聞いている。 「どってことないじゃない!悟飯くんだってバレなきゃいいんでしょ?」 そうしてブルマは少しその辺りを漁り、適当なバンダナとサングラスを悟飯に渡した。 「おおっ!なるほど!こんなカンタンなことでよかったんだ!」 それらを早速装着した悟飯は盲点だったと言わんばかりに感心する。 「確かに、顔を隠せるものなら何でもいいんだもんね」 きちんと顔を隠せているし問題はなさそうだとライも呟いた。 「どお!?トランクスくん!かっこいいだろー!」 「ノーコメント……」 だがやはりトランクスにはそのセンスが理解できないのか、悟飯を見上げてぽつりと呟いた。 「でもさあ、どんなに手を抜いてもぶっちぎりで優勝するのが分かってちゃつまんないよね」 ブルマがそう言うが、それに反応するまえに後ろから声が聞こえた。 「そいつはどうかな」 声の正体はベジータだった。顔を出すなんて珍しいとライはベジータを見つめる。 「…そのなんとかって大会……きさまが出るならオレも出る」 「「え!?」」 その発言には悟飯だけではなくライも驚いた。 「あのときは大きな力の差があった…だが、今はどうかな?きさまが平和にうかれている間も、オレはトレーニングを続けていた」 「………」 ベジータの発言に悟飯は何も言えなくなる。 平和にうかれていたわけではないが、トレーニングをしてこなかったのは事実だからだ。 「そう!ぜんっぜん働かないのよ!このひと。あんたたちのおとうさんと一緒!サイヤ人って働かないのかしら」 腕を組んで不満を言うブルマの言葉に、ライも苦笑するばかり。 事実悟空もそのことでよくチチに怒られていたし、慣れているといえばそうだ。 「というか、ベジータさん!悟飯は大事な勉強をしていたんですよ!怠けてたわけじゃないです!」 「ふん、相変わらずキーキーうるさい奴だ」 「あー!今馬鹿にしましたね!」 「ね、ねえさん……ボクは大丈夫だから……」 今でも悟飯を馬鹿にされるのは黙って聞き流せないのか、ライは腰に手を当ててベジータに詰め寄る。 だがこれもいつものこととベジータは気にしていない。 ライの気持ちは嬉しいが、話がややこしくなると思って悟飯もライを落ち着かせた。 「すごいや!おとうさんと悟飯さんが戦うの!?」 そんなライの気持ちはさておき、トランクスにとっては一大事のようで拳を作ってワクワクした表情で言う。 今となっては確かに珍しいか……とライも思ったその時、 『オラも出るぞ!』 どこからともなく、聞き覚えのあある声が聞こえた。 いや、聞き覚えがあるなんてものじゃない。懐かしくて懐かしくて仕方のない声だ。 「お…おとうさん……おとうさんの声だ……!」 「おとうさん……!」 いち早く気付いた悟飯とライはそれぞれ呟く。 「おとうさん!そうでしょ!?」 「カカロット…!?」 嬉しそうに声を上げる悟飯。その隣ではライも嬉しそうにどこともなく上を見上げる。 突然のことにベジータですら驚いて上を見た。 『そうだ!久しぶりだな、みんな』 「ひ、久しぶりなんてものじゃないよ!」 「お元気でしたか!?おとうさんっ」 その声に対して、嬉しいながらもついそんなことを言ってしまうライ。 傍ではトランクスが訳の分からない状況にはてなマークを浮かべていた。 『うん…まあ元気といや元気だったかな。死んでっけど……』 悟飯の言葉に悟空は複雑そうな表情で応える。 だが、声が聞けただけで十分だ。昔と何も変わらないその声が聞けただけで。 「ほんとに…ほんとに天下一武道会に来られるんですか!?」 「嬉しいけど、でも、どうやって!?」 嬉しそうに言う悟飯とライの疑問に悟空は答える。 『ああ!占いババに頼んで、たった1日だけ戻れる日はその日にする!悟飯もベジータも出るんだろ!オラも出るさ!』 「やったあ!!バンザーイ!!」 その有り得ない提案、だが嬉しすぎる提案に悟飯は両腕を上げて喜んだ。 そしてそれはライも例外ではない。 「そ、それならあたしも出る!おとうさんが出るならあたしも出るよ!」 『おう!おめえならそう言うと思ったぜ、ライ!』 話に置いて行かれないように急いでライも決心して言う。 するとそれは悟空には予想通りだったのか、嬉しそうに答えた。 するとライも悟飯と同じように両手をあげ、「やったー!」と喜ぶ。 未だに声の主が分からないトランクスはぽかんとしたままだ。 「だれ?」 ぽつりと呟くと、その疑問はライが拾い上げた。 嬉しさのままにトランクスを抱き上げ、満面の笑みを見せる。 「おとうさんだよ、おとうさん!あたしと悟飯のおとうさん!」 トランクスは恥ずかしそうに「子供じゃないからやめて!」と抵抗していたが、ライの嬉しそうな表情を見て黙った。 トランクスも昔から話には聞いている。ライからだったり、悟飯からだったり、他の人からだったり。 自分が生まれて間もない頃に、地球を守るために戦って死んだ人だと。 「楽しみにしているぞ。覚悟しておけ。オレはずいぶんウデをあげた…」 『オラもだベジータ……』 悟空も参加すると聞き、一層やる気になったベジータがそう語りかける。 悟空も同じように答えた。 『じゃあな、みんな!天下一武道会で会おうぜ!』 そう言葉を残し、悟空との会話もそこで終わった。 「よかったわね悟飯くん、ライちゃん!はやくおかあさんや悟天くんやクリリンくんたちに伝えてあげなきゃ」 「「はいっ!」」 ブルマの言葉に二人は揃って答え、ライはトランクスを下ろした。 傍ではベジータも面白くなってきたと呟いた。 「そうだ!ベジータさんも正体がバレないようにこういうコスチュームを着なければ」 「着るか!オレはべつにバレても構わん!」 悟飯の善意からの提案はベジータにぴしゃりと断られた。 ライはそっと、ベジータが悟飯のように変身スーツを着たところを想像し、面白そうに笑う。 「でも隠した方がいいですよ?ベジータさん、凶悪犯と間違えられちゃいますよ」 「きさまは面白がってるだけだろう!」 そのライのからかいにも似た言葉にも同じようにベジータは答えた。 どうしても嫌なんだなと思うとライはまた余計に面白かったが、とりあえず冗談ですよとベジータを嗜めた。 「じゃあ、ボクたちみんなに教えてきます!」 「トランクスごめんね、また今度遊ぼうね!」 「うん!バイバーイ!」 居ても立っても居られない様子の二人は揃って宙に飛び、そう言って手を振る。 トランクスも残念そうだが、ライたちが嬉しそうなのは分かるため駄々をこねずに見送った。 ×
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