全員がついてきたことを確認した謎の少年は、どこか嬉しそうに口角を上げる。 そして機械で位置を確認すると、その場に降り立った。 それに続くようにして降り立つ一同。 だが、謎の少年との一定の距離は保ったまま。 すると謎の少年は、カプセルを取り出すと何やら四角い箱状のものを出した。 「孫悟空さんが到着するまで3時間近くあります」 カチャ、と謎の少年がその箱の扉を開けると、その中には飲み物がたくさん入っていた。 「飲み物たくさんありますから、よかったらどうぞ」 そして皆に勧めながら、自分も缶ジュースのプルタブを開けた。 その行動に驚いた一同だが、 「いただくわ!」 「ボクも」 「あたしも」 ブルマ、悟飯、ライはにこりと笑って謎の少年に近付く。 謎の少年もその返答を微笑みながら受けた。 そしてライたちは冷蔵庫の中を見て、飲み物を選ぶ。 「「いただきます!」」 「うちの製品でこんな冷蔵庫あったかな……」 双子が揃って言うと、冷蔵庫からひとつずつ飲み物を取り出した。 冷蔵庫がCC製品だと気付いたブルマは、不思議そうに呟きながらも飲み物を取り出す。 その様子を見てか、クリリンも同じように飲み物をもらった。 「……あんた、どこかで会ったかしら?」 「え?…い…いえ…べつに…」 飲み物を飲んでいたブルマは、謎の少年がこちらを見ていることに気付き声をかける。 だが、謎の少年はそう煮え切らない態度で否定をした。 すると悟飯も聞きたいことがあるのか、謎の少年を見上げる。 「どうしておとうさんの事を知っているんですか?」 「オレも話で聞いたことがあるだけで、会ったことはないんです…」 そんな悟飯を見ながら、謎の少年はそう答えた。 そして隣で同じように見上げているライを見て、気まずそうに視線を逸らした。 そのことに気付き、ライはきょとんと首を傾げる。 「……じゃあ、なんで3時間後にここへ悟空が来るって知ってんだ?」 「……それは……すいません……言えないんです……」 クリリンの疑問に、謎の少年は済まなさそうにそう答えた。 「言えないってのはどういうことだ?きさまは一体何者だ。どうやってあんなパワーを身に付けた…」 「す…すいません、それも……」 その会話を聞いていたベジータが遠くから責めるように言う。 それには、謎の少年は視線を向けることもなく、俯いてただすいませんと謝った。 「あの〜……フリーザ達を倒した時…あなたは超サイヤ人…でしたよね」 「あ…はい、そうです…」 悟飯が聞くと、謎の少年はそのことは答えられるようで頷いた。 「ふざけるな!サイヤ人はオレとカカロット、ここじゃそのソンゴクウって名前だがな…それに地球人との混血であるそのガキども…この4人しかもう残っていないんだ!きさまがサイヤ人であるはずがないだろ!」 苛立たしげに言うベジータ。 答えられないのか謎の少年は黙って俯いたままだった。 「ベジータさん、そんなに怒鳴らなくてもいいのに……」 「で…でも、実際に超サイヤ人になってフリーザを倒したという事実が……」 その声に、思わず口を尖らせるライ。 そして悟飯もそう呟くと、ベジータは眉を寄せてしばらく黙る。 「だいたいサイヤ人はすべて黒髪のはずだ…」 やはり解せないのか、そう呟いた。 するとブルマは謎の少年が着ている服を見て驚く。 「ねえ…それ、うちのカプセルコーポレーションのマークじゃない!?なんで?うちの社員?」 「……そういうわけじゃないんですが……」 「それも秘密?じゃあ名前も年もぜんぶナイショなわけ?」 「名前はいえませんが、年は17です…」 謎の少年がそう答えるのを聞いて、天津飯たちは遠くで呟く。 「名前もいえんというのは妙だな…」 「ああ…隠す意味がないだろう…」 やはり怪しいという印象は消えないのか、訝しむ視線で謎の少年を見つめる。 そんな様子を見かねたのか、ブルマが両手を広げて口を開く。 「よし!質問はもうやめましょ、困ってるじゃない!この子はわたしたちや地球を救ってくれたのよ!」 仕切るようにそう言うと、皆も納得せざるを得ないのか、各々悟空を待つために腰をおろしていた。 「ピッコロさん」 その中、皆に背を向けて立っているピッコロにライが声をかける。 「ピッコロさんは、飲み物いりませんか?」 「……必要ない」 こちらも向かずにそう答えるピッコロに、ライは少しばかり残念そうに眉を下げる。 ナメック星人は水のみで生きていけるとデンデから聞いたが、水が飲めるのであればジュースも飲めるだろうと思いこうして勧めたライ。 味覚もきっとあるだろうと思ったが、こうもあっさり断られては、しつこく勧めても無駄だろうと思った。 「美味しいのに……」 呟くライを、ピッコロは横目で見る。 すると短く溜息をつき、 「だったらオレの分はおまえがもらうといい」 「あ、あたしそんなに食い意地はってないもん!」 優しさのつもりで言ったピッコロだが、ライにそう言われ不可解そうに眉を寄せる。 その会話を苦笑交じりで聞いていた悟飯も、ふとピッコロの背中を見つめた。 「あの…ピッコロさん、ずっとききたかったんですけど…」 「なんだ……」 悟飯の言葉を聞いて、ライも気になったのか二人の姿を見つめる。 「あの……どうして、あのときほかのナメック星人の人たちといっしょに行かなかったんですか?」 「たいした理由じゃない。刺激のないたいくつな生活はゴメンだからだ……」 その悟飯の言葉を聞いて、そういえばとライも今初めて気付く。 ピッコロが地球にいるのは当たり前だと思っていたライにとって、ピッコロがナメック星人たちと共に新しいナメック星へ移住するというイメージが沸かなかったのだ。 「じゃあ、いまでも毎日厳しい修業をして過ごしておられるんですか?」 「まあな……」 答えるピッコロに、ライはどこか嬉しそうにその背中を見つめる。 ピッコロが自分と同じ地球にいるという当たり前に思えていたことが、本当は当たり前ではなかったのかもしれない。 それでもピッコロが、こうして会える距離に居ることを、ライは感謝したくもなった。 「ピッコロさん、あたしなんだか嬉しいです!」 「……あ、ああ……そうか……」 さっきまで不機嫌そうな態度だったライから一転、笑顔で言うライを見て、ピッコロは再び眉を寄せる。 キラキラとした視線をピッコロに向けていたが、ブルマたちの会話にふと耳が反応した。 「ベジータもね、昼間はずっといないの。きっとどこかで特訓してんのよ」 「ああ…どうせいまでも悟空を倒そうと思ってんだろうよ…あいつ、すっげープライド高いからな……」 その会話を聞いて、ライはふと座っているベジータに視線を向ける。 初めは戦闘服を着ていないことに違和感を感じたものの、なんだかんだ地球に慣れてきた様子のベジータ。 そんなベジータを見て、ライはもう恐怖を感じることはなくなった。 そして地球に悪さをしているという話も聞かないため、どうやら特訓に意識を集中させているのだと、二人の会話を聞いて思った。 「おとうさんとベジータさんのことを、ライバルって言うんですよね!」 「う、う〜〜ん……そう言っていいのかな……?」 ライバルというには激しすぎる関係のような気もしなくもないクリリンは、ライの言葉に大きく首を傾げる。 だが他に二人の関係を表す言葉も思いつかなかったため、思わず苦笑した。 「似てるとおもわない?」 「なにが?」 「?」 唐突に話すブルマの言葉に、クリリンとライはブルマを見つめる。 「あのふしぎな子とベジータよ。ほら、なんとなくフンイキがさ…」 「そうかなあ…似てるかなあ……でも性格はぜんぜん違うと思うけど…」 「そうですよね……あのお兄さんのほうが、ずっとずっと優しそうです」 そう言いながら視線を謎の少年へと向けると、その謎の少年はベジータのことをチラチラ見ていた。 それに気付いたベジータが苛々した様子で謎の少年を睨むように見ていた。 「それに、目つきはベジータさんのほうがものすごく悪いです」 「……ライちゃん、よくそういうことを普通に言えるな…」 二人の様子を見て、思ったことをそのまま口にしたライ。 そんなライの言葉に、クリリンは苦笑しながら言った。 そしてしばらく、また静かな時間が流れる。 ふいに謎の少年が時計を見たと思えば、立ち上がって、 「そろそろ到着するはずです」 と言い出す。 それを聞いて、悟飯の隣で座っていたライは嬉しそうに立ち上がる。 「ホ…ホントだ…!感じる!気を感じるぞ……!」 「た…たしかになにかが来る…!」 「じゃ、じゃああの子のいった時間も場所もズバリだったってわけ!?」 それぞれ悟空の気を感じ取ったのか、天津飯とヤムチャが空を見上げる。 ブルマも驚いたように、空を見上げ探した。 「おとうさんだ!おとうさんの気だ!」 「懐かしい気!おとうさん…!」 待ち遠しそうに空を見上げていると、空のある一点に丸い宇宙船のような姿を見つけた。 それは速いスピードで地上へ向かい、ライたちの居る場所からすぐ近くに到着した。 「あっちだ!」 皆急いで宇宙船の元へ駆けつける。 すると小さな宇宙船の扉がゆっくりと開き、その中から悟空が顔を出す。 「あれ?」 「やったあ!」 「悟空!」 「「おとうさん!」」 嬉しそうに次々と声をかける皆。 だが悟空は不思議そうに皆の姿を見つめた。 「どうやってオラのことがわかったんだ?」 宇宙船から離れ、皆の元へ近付く悟空。 「この子よこの子!この子がここに帰ってくるって教えてくれたの!」 「知ってるんでしょ!おとうさん」 ブルマが謎の少年を指し、悟飯も言葉を続ける。 だが、 「……?だれだ?」 「「「へ!?」」」 悟空には見覚えがないらしく、謎の少年の姿を見ても不思議そうにそう呟いた。 その悟空の態度を見て、同じように皆も不思議そうに目を丸くして悟空を見つめた。 ×
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