「ご、悟飯……」


悟飯の邪魔にならないように、加勢もせずに見ていたライだが、すぐにクリリンのことを思い出し川へと向かう。
そのすぐ後に悟飯はフリーザに向け大きなエネルギー波を放ち、その影響で生まれた突風にライの体は煽られる。
だがそれを気にする時間も惜しみ、ライはクリリンの姿を探した。
上から見ても分からないため、いざ潜ろうとした時、クリリンを抱えたデンデが水面から顔を出した。


「だいじょうぶです!まだ、なんとか息が…!」


それを見て一安心するライ。
フリーザにありったけの攻撃を放った悟飯もその手をとめクリリンを心配していたのか、二人の姿を確認すると死なないでと祈るように呟いた。


「そんな心配をしているヒマはないぞ!フリーザがあれぐらいで死ぬと思うか!」
「え!?」


ベジータに言われた悟飯が、フリーザのいる場所に視線を向ける。
すると、倒れていたと思われたフリーザはムクリと立ち上がった。
一方ライはクリリンとデンデを抱えるようにして持ち、ゆっくりと地面へと運んでいた。
その途中、フリーザが無事でさらに気を上げていることを知り歯噛みする。


「あ…あんなの……一体どうすれば……」


クリリンを地面に寝かせたところで、ライはその場からフリーザを睨む。
どうすればいいかと必死に考えていると、悟飯がフリーザの目の前から動かないでいることに気付いた。


「悟飯逃げてーーっ!!」
「バカヤロウ逃げろーーっ!!」


ライとベジータが同時に叫ぶも、遅かったのか悟飯の体はフリーザに払われるようにして地面に叩きつけられた。


「悟飯っ!」


その姿を見て、ライは慌てて叫ぶとデンデに向き直った。


「デ、デンデ、クリリンさんをお願いねっ!」
「は…はいっ!」


デンデが確かに頷いたことを確認し、ライは急いで悟飯の元へ駆け寄る。
だがその時ベジータがフリーザの背後めがけてエネルギー波を放った。
閃光のように眩しく光ったそれに、ライは思わず立ち止まり目を塞ぐ。


「しめた!!いい気になって油断してやがったな!!まともに喰らいやがった!!」


言いながら、高笑いするベジータに気付きライはそっと目を開けフリーザの姿を確認する。
だが、ベジータの攻撃を喰らったはずのフリーザは何事もなかったかのようにその場に浮かんでいた。


「そう慌てるなよベジータ…あのチビの後でたっぷりと遊んでやるって!」


そしてゆっくり振り返って言うフリーザに、さすがのベジータもこのどうしようもない状況に諦めかけていた。
あのベジータの攻撃をまともに受けたのにまだ余裕の様子のフリーザを見て、ライも口をぽかんと開けたまま、瞬きもせずにフリーザの姿を見つめた。


「さて…と…どう料理してほしいのかな?」


ようやくのこと立ち上がった悟飯の背後に降り立ち言うフリーザ。
その存在に気付いた悟飯も急いで構え、フリーザと向き合う。
先制攻撃を放つも、今度はいとも簡単にかわされた。
攻撃を避けられ無防備な状態の悟飯の髪の毛を掴んだフリーザは、そのまま悟飯の腹に膝蹴りを喰らわせる。
その勢いで悟飯の体は飛ばされ、フリーザの足元に倒れ込む。


「あ…ぎゃ……ああ…!」
「ふふふ……」


そして腹を押さえて痛がる悟飯と、今の衝撃で引き千切ってしまった悟飯の髪の毛をパラパラと捨てるフリーザ。


「悟飯ーーっ!!」


一方的にやられてしまっている悟飯を心配し、ライは急いで加勢しようとする。
だがそれよりも先にフリーザは悟飯の体を遠くに蹴り、飛ばされる悟飯の背後に先回りしてまた別の地面へと蹴り飛ばす。


「っ!!」


その素早い動きにライはついていけず、方向転換し急ぐも、悟飯の体は再びフリーザによって深いダメージを負わされる。
地面に仰向けになって倒れている悟飯の頭をフリーザは踏みつけ、そのままゆっくりと力を込めていく。
悟飯の頭はメキメキと音を立て、今にも頭蓋骨が潰されようとしている。
悲痛な悟飯の悲鳴を聞いてライは思いきり飛ばしながら、フリーザに殴りかかろうと拳を振り上げる。


「はあっ!!」


だがそれはフリーザの片手で簡単に受け止められる。
それでもめげずに蹴りを顔面へ食らわせようとするも、フリーザは首を傾け避ける。


「チビのくせに生意気だな…そのちっぽけなパワーで、オレにかなうとでも思っているのか?」
「っ……!」


攻撃をかわされ、さらに余裕の笑みまで向けられライは唇を噛む。
だが悟飯の叫びがそんなライの恐怖心を全て吹き飛ばしたのか、ライは目の色を変えた。


「!」


ライは一瞬にして、こちらを見るフリーザの真後ろをとり、悟飯を踏みつけている足にしがみついた。


「悟飯をっ、離してっ!!」


そして地面にしっかりと足をつけ、フリーザの足を引き剥がそうとする。
フリーザにかなわぬ攻撃をし続けるよりも、少しでも悟飯を助ける方に集中しようとしたのだ。
だがその無防備な姿はあっという間にフリーザに捕えられてしまう。


「ふっふっふ……バカなチビだ」
「あう……っ」


フリーザはライの頭を鷲掴み、自分の足から引き剥がす。
そしてそのまま宙に浮かせると、面白そうにライの顔を見た。


「きさまの顔はこのチビと似ているな……姉弟か?」
「うがっ……ああ……!!」


聞くも、ミシミシと頭を鷲掴みにされ、ライは答えることができない。
少しでも痛みから逃れようと両手でフリーザの手を掴むが、それだけの抵抗ではフリーザから逃れることはできない。
苦しむライの顔を見てフリーザは笑みを浮かべ、そっと囁くように言った。


「片方だけ死ぬのは辛かろう……きさまも、このチビも、同時に息の根を止めてやろう」


言うとフリーザは手と足にかける力を強くした。
一層あたりに響く双子の悲鳴。
そしてフリーザはその状態のまま、空中に浮かぶベジータを見た。


「どうしたベジータ!助けに来んのか!?こいつらはもうすぐ息の根をとめるぞ!」


フリーザの言葉に、ベジータは成す術がないのか拳を握る。


「あ…あのガキどもが死ぬのはかまわんが…そ…想像をはるかに超えるフリーザのパワーに、ど…どうしろというんだ……!」


目の前で見せられたフリーザのパワーにどうしても勝機を見出せないのか、ベジータは悔しそうに見つめることしかできなかった。
その間にも双子は頭蓋骨を潰されそうな痛みに耐えている。


「フィニッシュだ!」


そうしてフリーザが双子にとどめを刺そうとするも、すぐに何かに気付きその場を飛び上がる。
その拍子にフリーザは悟飯を踏みつける足をあげ、ライの姿も地面に落した。


「うぐっ!!」


飛び上がったフリーザだが、迫りくる光の円盤によってシッポを切られてしまう。
驚きでフリーザとベジータは、その円盤を放った人物を見る。
それは、さきほどフリーザによって瀕死の状態にさせられたクリリンだった。


「なっ、なんであいつが…!あ…あいつは、す、すくなくとも相当のじゅ…重症だったはずだ……!な…なぜだ…!?」


驚くフリーザに構うことはせず、クリリンはそのままいくつもの気円斬を放つ。
今度は不意打ちではないためかフリーザに全て避けられる。
そしてフリーザの怒りを買い、フリーザは双子を放ってクリリンを追いかけ始めた。
シッポを切られた怒りでクリリンしか見えていないフリーザに、クリリンは正面から太陽拳を放つ。
そして目が眩んでしまっているフリーザに攻撃するようベジータに向けて叫ぶが、ベジータはクリリンたちではなく、別の方向を見ていた。


「よかった!死んでいない!すぐになおしてあげるよ!」


ベジータの視線の先には、ライと悟飯にまだ息があることを確認し、まず悟飯になにやら念のようなものを送るデンデの姿があった。
しばらくして悟飯が起き上がるのを見て、ベジータは驚いて悟飯を見る。


「ライさんも、いまなおすから!」
「おねえちゃん…!」


今度はライに手を当て、念を送る。
悟飯も心配そうに見つめ、ライが同じように起きあがると、二人とも安心したように笑った。
その様子を見てベジータは理解したのか、そういうことだったのかと呟いた。
そして駆け寄ってきたクリリンに向けがなる。


「あのナメック星人のガキにあんな能力があったことを、なぜ黙ってやがったんだ!」
「えっ!?あ、よかった!悟飯もライちゃんもなおったか!」


ベジータの言葉に、まずは二人の無事を確認したクリリン。
そしてもう一度ベジータに向き直る。


「黙ってたわけじゃない。オレたちだって知らなかったんだ!知ってたら悟空も、とっくになおしてもらってたさ!」


言うクリリンに、ベジータはまた舌打ちをする。
そして、地面ですっかり体の傷が治った双子はデンデを見る。


「お、おどろいたよデンデ!ありがとう!」
「がんばって!」
「うん!ほんとに、ありがとう!」


デンデに礼を告げると、双子は真剣な表情でフリーザを見る。
そして一瞬とも思えるスピードで、同時にベジータたちの元まで来た。


「なんだとっ!?」


虫の息だった双子まで復活したのを見て、フリーザは驚きを隠せない。
そして怒りで全身に力を込める双子のパワーを見て、ベジータは驚きながらも呟いた。


「へっ…さすがサイヤ人の血をひいてるだけあって、復活したら戦闘力がグンとアップしやがった……よ、よ〜〜し!ほんのわずかだけ運が向いてきやがったかな…」


言うベジータだが、すぐに別の気を感じ、その方向を見る。
驚くほどのスピードでライと悟飯のすぐ隣に現れた人物、それは。


「「ピ…ピッコロさんっ!!」」
「待たせたな…」


ライと悟飯二人の師匠であり、さきほどドラゴンボールで生き返らせてもらったピッコロだった。
その姿を見て双子は嬉しそうにピッコロを見上げる。


「よかったーーっ!!待ってたんですよピッコロさん!」
「ほんとに生き返ったんですね!あたし嬉しいですっ!」


ピッコロはその言葉を聞きながら、目の前にいるフリーザを静かに睨んでいた。


「ヤツがフリーザか……なるほど、たしかにとんでもなさそうなバケモンだ…」


そして先程感じた気がピッコロのものだと知り、ベジータは舌打ちをしてピッコロを見た。


「そうか…くそったれが…ドラゴンボールでなにを頼んだかと思えば、こんな役にもたたねえカスを生き返らせやがって…」


呟くベジータにライはむっとした表情で睨むも、ピッコロは常に冷静だった。


「カスで悪かったな。だが、これだけは覚えておけ……フリーザを片付けたあと、今度はきさまの番だということをな……」
「フリーザを片付けたあとオレも…?くっくっくっ…ナメック星人にもジョークが言えるとは思わなかったぜ…」


そのピッコロの冷静な言葉にもベジータは嫌味を言うように返す。
今度はベジータの嫌味なんか気にせず、ライはピッコロのこの妙な余裕を不思議そうに見ていた。


「さて…宇宙のゴミを片付けてやるか…オレひとりでやる。おまえたちは手を出すな」
「「えっ!?」」
「い!?」


静かに言い出したピッコロの言葉に、声を揃えて驚くライと悟飯、そして目を丸くするクリリン。
大丈夫かと声をかける前に、ピッコロはひとりで地面に降り立ってしまった。
それに続くようにフリーザも地面に降り立ち、二人は互いに見つめ合う。


「ム、ムチャだ。あいつフリーザの怖さをぜんぜんわかっちゃいない!」
「ほっとけ。すぐに気づく…」


クリリンは慌てて叫び、ベジータは口角を上げながら呟いた。
だがライと悟飯は、じっとピッコロを見つめた。


「ピ…ピッコロさんは相手の力がわからないような人じゃない…」
「そうだよ…ピッコロさんは相手を見くびったりしない…きっと、何か作戦が……」
「そ…そうさ!ピッコロさんにはきっと勝算があるんだ……!」


双子はピッコロの言葉を信用しているのか、互いにそう言う。
そしてひとりで戦うと言ったピッコロの邪魔をしないよう、静かに見守ることにした。
しばらく間合いを取るようにしていたピッコロとフリーザ。
先に動き出したのはピッコロだった。


「だっ!!」


一瞬にしてフリーザとの距離を詰め、フリーザに殴りかかる。
殴り飛ばされたフリーザの顔面にさらに両手を振り降ろすが、それはあと一歩のところで避けられてしまい、逆にフリーザの蹴りを喰らう。
だがピッコロはダメージを感じていないのか、岩場に足をつけ体制を建て直すとフリーザの顎に頭突きを喰らわした。
そのすぐあとフリーザのシッポに殴られ地面に足をつけるが、フリーザの放ったエネルギー波をピッコロは弾き飛ばすことに成功した。
驚き怯んでいるフリーザに、お返しと言わんばかりのエネルギー波を放つ。
避けることができなかったフリーザは仕方なく防御の体勢でそれを受け止める。
その凄まじい攻防戦に、空中で見ていた4人は驚きで口を開けていた。


「……お…おのれ……!」


受け止めたものの、少々ダメージを喰らったフリーザは眉を寄せそう呟いた。


「す…すげえ…フ…フリーザと互角に戦ってる……」
「いや…いや…それ以上だ…」
「や…やっぱりすごいや…!ピッコロさんは!」
「そうだよ!ピッコロさんが負けるわけないよ!」


驚きを隠せないクリリンとベジータに対し、双子は嬉しそうに叫ぶ。


「オ、オレたち死ななくてすみそうだぞ、悟飯!ライちゃん!」
「「はいっ!!」」


快い返事をして、双子はまたピッコロとフリーザの戦いを見守りはじめる。
フリーザが空中からゆっくりと地面に足をつけると、瞬きをする一瞬でピッコロの顔面に肘打ちを放つ。
まともに喰らったピッコロは地面に叩きつけられるが、すぐに空中へ逃げる。
だがそれもすぐに追ってきたフリーザに頭を殴られ、再び地面に叩きつけられた。


「な…なんて…なんてことだ……あ…あいつ…これまで、ほ…本気じゃなかったんだ…」


それを見て恐ろしげに呟くクリリン。
そんな、とライも心配そうに地面に叩きつけられてしまったピッコロの行方を捜す。


「くっくっく…さっきは悪かったな。きさまをなめてたんだ。だが想像以上にできるんでな、実力をみせることにした。実力をな…」


言い出すフリーザに、ピッコロは何も言わず血を吐き捨てると、マントとターバンを脱ぎ始めた。
そして首を鳴らし手首を慣らすピッコロは、口角を上げて言う。


「オレもだ。本気でやろう…」


それを聞いて少し驚くフリーザだったが、すぐにホラだと断定する。
遠くでピッコロの言葉を聞いていたベジータ以外の4人は、なにかわかったのかはっと声を上げる。


「そ…そうか…!」
「ピ…ピッコロのヤツ、こんな時まで、あ、あんな重いターバンとマントでやってたのか……!」
「ピッコロさん……!」


ピッコロの力はまだまだこんなものじゃない。
それがわかったライは嬉しそうにピッコロの名前を呟いた。
そして意気込むピッコロの姿を祈るように見つめると、フリーザはとんでもないことを言いだした。


「勘違いしているようだな!今見せたのが本気だと思ったのか!?」
「なに!?」


そしてフリーザは飛び入り参加のピッコロに、自身が変身した姿であることを告げる。
さらに絶望感を与えてやると言い、フリーザは不敵な笑みを浮かべながらピッコロを見据えた。


「このフリーザは変身をするたびにパワーがはるかに増す…その変身をあと2回もオレは残している…その意味がわかるな?」
「な……なんだと……!?」


フリーザのその言葉を聞いたピッコロは驚き、ライたちも目を見開いて震えた。
そしてフリーザの言葉が聞こえなかったクリリンに、悟飯はこのことを説明した。


「見せてやろう!光栄に思うがいい!この変身まで見せるのはきさまが初めてだ!」


言うと、フリーザは再び全身に力を込める。
直後、フリーザの背中に角のようなものが生えた。


「ぬううう……!」


変身はさらに続くのか、フリーザはまだ呻きながら力を込める。
そして頭の形まで変わり、変身を終えると第2回戦だと言ってピッコロを見た。


「バ…バケモノめ……!」


フリーザの変身を遠目で見ていた4人は思わず言葉を失う。


「た…たいして変わってないんじゃないか…!?」
「バ…バカめ…!潜在パワーをさぐってみろ…!さ…さっきまでとは、ま、また別物だぞ…!」


見た目に関してクリリンが言うが、ベジータはすぐに否定するように言う。


「し…しかもまた落ち着きを取り戻して冷静になりやがった……」
「そ…そんな…あ…あいつ…ピッコロさんから受けたダメージもなくなってる…」
「こ、こんなことって……」


絶望を見るように呟くベジータ、悟飯、ライ。
だがどうすることもできず、ピッコロの健闘を祈るばかりだった。
そしてフリーザはピッコロに襲い掛かる。
驚きながらも避けたピッコロは、空中の移動を急ぐ。


「くそったれ!パワーがてめえならスピードはオレだ!一生かかっても追いつけんぞ!」


言うピッコロだが、目の前にフリーザが現れ思わず急ブレーキを踏む。


「まっ、まさか…!」
「これはこれは、おひさしぶり……」


そして嘲笑うかのように言うと、指先をピッコロに向け攻撃をし始めた。


「ひゃあ!」


それはまるで銃弾のように、だがはるかに速いスピードで、威力も銃弾などより数倍強いものとなってピッコロの全身を貫いていく。
あまりの素早い連続攻撃に、ピッコロは逃げることさえできずにいた。


「「やめろーーっ!!」」


その様子を見ていてもたってもいられなくなったライと悟飯は思わずその場から飛び出す。
慌てて追おうとするクリリンだが、それはベジータが止めた。
そして今すぐに半殺しにしろとクリリンに言っている間、悟飯はフリーザに向け蹴りを放つ。
蹴りを避けたフリーザに対し、ライも注意を引くように叫びながら突撃した。
それも難なく避けたフリーザだが、ライが注意を引いている間にフリーザの頭上に浮いている悟飯はフリーザに向けエネルギー波を放とうとする。


「おまえなんか死んじゃえーーっ!!」


そしてフルパワーで放ったエネルギー波。
ライはフリーザを置き去りにし、悟飯のエネルギー波の余波で傷ついたピッコロが飛ばされないように支えに向かった。
傷を受けたとはいえ、巻き添えを食らうとは思っていなかった。
だが、それでもライはピッコロが心配だった。


「ぐっ…ぐおおおお……!!」
「でゃああああ……!!」


気の押し合いをする悟飯とフリーザ。
ライは無事ピッコロの元に辿りつき背中を支えると、悟飯にエールを送った。
だが押し合いは悟飯が破れ、エネルギー波を跳ね返され自分の元へと戻ってくる。
それに気付きピッコロは、そっと自分を支えるライを振り返る。


「ライ!肩を借りるぞ!」
「う、うん!」


ピッコロの言葉にライが力強く頷く。
そしてピッコロはライの肩に手を置き、悟飯の作ったエネルギー波に向けてエネルギー波を放った。
ふたつの気はぶつかりあい、ピンボールの要領で弾き飛ばすことに成功した。


「はあっ、はあっ、あ…ありがとう…ピ…ピッコロさん……」


ピッコロの機転に救われた悟飯が、息を荒くしながらお礼を言う。
ライも、悟飯の無事にほっと安心した。


「い…いまのははねかえされちまったが…つ…強くなったな、悟飯……オ…オレは嬉しいぜ……」
「で…でも、もうダメだ……こ…渾身の力を込めてやったのに…フ…フリーザには、通じなかった…」


口角を上げて悟飯を見つめていたピッコロだが、すぐに自らを支えるためにしがみついているライに目を向けた。


「おまえもだ…ライ。ま…まさか、おまえに背中を預ける日が来るとは、思わなかったぜ…」
「ピッコロさん……!でも、あたしなんにも……フリーザには、到底かなわないよ……」


ピッコロの言葉に嬉しく思いながらも、すぐに切なそうに眉を寄せて呟く。
そんなライの肩を、ピッコロは力強く抱く。
それが自分を元気づけている行為だと気付いたライは、泣きそうになるのを我慢してピッコロを見上げた。
そうしてしばらくその場に立ち止まっていたライ、悟飯、ピッコロの3人。
その間にベジータはクリリンに自分を半殺しにするよう詰め寄り、フリーザはサイヤ人の血を根絶やしにするために、信じられないことを言いだした。