「オラは自分でいうのもなんだが、ずいぶんと強くなったと思っている…それでもフリーザってヤツには絶対勝てねえっていうのか…!?」 「そういうことだ。戦うつもりながら覚悟しておくんだな。フリーザの強さはおそらく、きさまの想像をはるかに超えているぞ」 断言するベジータに、悟空も思わず息を呑む。 クリリンは大袈裟だと言うも、ベジータはだったら戦ってみろと返した。 さらに、ドラゴンボールで不老不死を手にしているであろうフリーザに、どう考えても勝ち目はないとも続けた。 「い…いや、あいつはまだ願いを叶えてはいないと思う……」 そのベジータの言葉に、クリリンはそう否定した。 驚くベジータにクリリンは説明する。 ナメック星のドラゴンボールが地球のものと同じだったら神龍が出てくるときに暗くなるはずだと。 だがその兆候は見られず、まだ明るいまま……そのため、まだ願いを叶えてはいないだろうと。 神龍と聞いて不思議そうにしているベジータを見て、悟空は気付いたのか表情を明るくする。 「そうか!わかったぞ!あいつは合い言葉を知らないんだ!7個すべてを揃えればそれだけで願いが叶うと思ってたんだ!まだオラたちの願いを叶えるチャンスが残ってる!」 合い言葉があるとは知らなかったベジータは驚いたように眉を寄せる。 そして、まだ死んだみんなを生き返らせることができるかもしれないと言う悟空の言葉に、ライたちは笑顔になり喜んだ。 「悟飯!」 「おねえちゃん!」 思わず顔を見合わせる双子。 自分たちのしてきたことが無駄ではなく、まだ希望があるというこの状況にほっとしたようだ。 「なんとかうまくドラゴンボールを取り返せるといいけどな…」 だが肝心のドラゴンボールが手元にないことには話は始まらない。 クリリンの呟きに、双子ははしゃぐのをやめ、真剣な表情に戻った。 「ベジータ…おまえならあいつらのこと詳しいだろ…なにか、良い方法はねえかな…」 ベジータを見て案を求める悟空に、ベジータは口角をあげながらフリーザを倒すつもりじゃなかったのかと聞く。 悟空もそうしたいと言うが、まずは殺された仲間を生き返らせる方が先決だと答えた。 そうして、未だ不老不死を企んでいるベジータだが、ふたつの気がこっちに来ていることに気付きベジータはその方向を見た。 「おいでなすったな。おまえの逃がしたジースがギニュー隊長をつれてきたぞ…!こんどはいくらおまえでも一筋縄でいく相手じゃないぞ」 言うベジータだが、すぐにとある疑問を胸に抱く。 「まてよ…フリーザはどこだ…!?ギニューのヤツがドラゴンボールをもっていった宇宙船の位置にたしかにいたはずだが……」 呟くベジータに悟空は強い気を感じると言ってとある場所を指差した。 その方角を見て、ライたち3人は最長老のところだということに気付き驚く。 「そ…そうか…!フリーザのヤツ、願いが叶わないから直接ナメック星人にどうするか聞き出しにいったんだ…!」 「なに!?まだ生き残っているナメック星人がいたのか!?」 「もしかして、ここのドラゴンボールを作ったのは…!?」 「ああ!その最長老さんだ!まっ、まずいぞ!」 クリリンのまずいと言う言葉の意味に気付いたライははっと目を見開く。 「あ、あいつ願いの叶えかたを聞きだしたら、ぜ、ぜったいに最長老さんたちを殺しちゃうよ!最長老さんが死んじゃったらドラゴンボールもなくなっちゃうのを知らないんだ!」 「なっ、なんだと!?」 「は、やはく行って最長老さまたちを守らないと……!」 焦ったように言うライだが、直後、5人の目の前にギニューとジースが現れた。 ギニューを見た悟空は、さすがにケタ違いの強さだということを感じ取ったようだった。 そしてライたちを振り返り、ギニューたちは自分がくいとめると言い、ドラゴンレーダーでボールを探してくれと頼んだ。 「わ、わかった……!は、はやくしないと最長老さん殺されちまうからな…!」 答えるクリリンに、ライと悟飯も頷く。 さらに悟空は、ベジータにもう一人を倒してくれと頼んだ。 そして一通り指示を出し終えた悟空はギニューたちを見つめ、 「よーし!行ってくれ。気をつけてな!」 と言う。 その悟空の言葉を受け入れ、ライ、悟飯、クリリンの3人は最長老の元へと飛び立った。 そして残った悟空とベジータはギニューたちと戦う……はずだったが。 「あばよカカロットーーっ!!」 「ベジータ!!」 ベジータは悟空の一瞬の隙をついてその場を飛び立った。 悟空が驚いてその姿を見ると、その隙をついてギニューの肘打ちを喰らう。 そしてそのまま攻防を繰り広げ、悟空は逃げたベジータを気にしつつも、ギニューとジースの相手を一人ですることになってしまった。 悟空たちから別れたライたちは、途中ブルマのいる場所によってドラゴンレーダーを受け取った。 そしてレーダーを頼りにフリーザの宇宙船を見つけると、悟飯がレーダーを見ながら言う。 「ドラゴンボールの反応は、あの船の中じゃなくてちょっとズレてます…!」 「はやいとこさがそうぜ…!誰もいなさそうだし」 そうして3人は地面に降り立ち、レーダーを頼りにボールを探し始めた。 船の中では、戦闘力を消して待っているベジータがいるとは知らずに。 「ここですよ!クリリンさん、おねえちゃん、ここ!」 「そういや埋めたようなあとがある!あいつらこんなとこに…!よし、掘り出そうぜ!」 「ドラゴンボールを埋めちゃうなんて……」 とんだ罰あたりと思いながら、ライも地面を掘りだす。 すると、ドラゴンボールが少しずつその姿を見せ始めた。 「あったあった!7個全部ありそうですね!」 「これでやっと…!」 7個のドラゴンボールを掘りだし、嬉しそうに笑う3人。 そしてドラゴンボールを並べ、今までの苦労を思い出すように真剣な表情になる。 「みんな……!」 ライが手を祈るように組んだところで、クリリンは叫んだ。 「出でよ神龍!そして願いをかなえたまえ!」 そしてライと悟飯も待ち遠しそうにドラゴンボールを見つめる。 だが、しばらく待っても神龍は現れることはなかった。 そのじれったい様子を身を潜めて見ていたベジータも、苛立たしそうに眉を寄せる。 「なんで神龍がドワーッと出てこないんだよーっ!」 「ちょっとセリフが違うのかもしれませんよ!」 「クリリンさん、もう1回!」 焦る3人だが、そのすぐあとに悟飯が誰かの気を感じた。 「おっ、おい、ふたつの気を感じるぞ!さ、さっきのギニューってやつらじゃないのか!?」 「ほんとだ、この嫌な気、間違いないですっ!」 「じゃ、じゃあおとうさんは!?やられたのっ!?」 その気がギニューとジースのものだと感じたクリリンは咄嗟に隠れるように言う。 そして遠くからやってきた気の持ち主二人を見て、ライたちだけでなくベジータも驚いた。 「悟空!!」 掘り出されているドラゴンボールを見て驚いている悟空に、クリリンが岩陰から姿を現しながら手を振る。 「ははっ!オレだよオレ!ビックリしたぜ、あのギニューってやつじゃないかと思ってさ!あいつを倒して部下を仲間にしちまったとは知らなかったからな!」 そして安心したように言いながら悟空の元へと歩く。 ライと悟飯は岩陰に隠れたまま、そっと様子を見ていた。 心に、少しの違和感を抱かせながら。 「おとうさん……?」 呟きながら首を捻るライ。 どうも違和感が拭えない。会っても、嬉しいと思えない。 不思議に思うライと悟飯をよそに、クリリンは悟空と話を続ける。 願いがかなえられなかったと聞いて、どこか邪悪に思える笑みを浮かべた悟空に、ようやくクリリンも異変に気付いたのか眉を寄せる。 「……悟空、おまえなんか変じゃないか…?なんていうか、その…フンイキがさ…それになんであいつらのスカウターとかいうやつなんかつけてんだよ…」 「知りたいか?」 クリリンの疑問に短く答えると、悟空はゆっくりと腕を上げる。 そして違和感が何かの確信に変わった悟飯は、急いでクリリンに叫ぶ。 「クリリンさん!!そいつはおとうさんじゃない!!」 「逃げて!!」 ライも続けて言うが間に合わず、クリリンは悟空の攻撃を喰らってしまった。 なんとか着地はしたものの、不思議そうに悟空を見つめるクリリン。 「な…なにをするんだ、悟空…!」 「お、おとうさんじゃない。あ、あれはおとうさんじゃありませんよ…!」 「そうですよ、クリリンさん……おとうさんとは、ちがう…!」 いう双子に、クリリンは眉を寄せながら聞く。 「ご、悟空じゃない…ってど、どういうことだ…どう見たってあれは……」 「わ…わかりません……で…でも、ボクたちにはわかるんです……」 「うん……あれは、おとうさんじゃない……」 敵を見る目で悟空を見つめる悟飯とライに、クリリンも訝しむように悟空を見る。 すると悟空は仕組みを説明するかのように口を開いた。 「カラダを取り替えてもらったのさ。こっちのほうが相当に強かったもんでね…」 言うと、悟空はライたちにとって見覚えのある妙なポーズを決め出した。 「そうさ!このオレはギニュー特戦隊隊長ギニューさまだ!」 「「!!」」 「な…なんだって……!?」 言い切った悟空に、双子は言葉を失い、クリリンも驚いて悟空の姿を見つめた。 そしてこちらに向かって攻撃しようとする悟空に、クリリンは必死になって宥める。 だが、中身はギニューのためおとなしく聞くわけもなく、悟空の姿をしたギニューは3人に向かって襲い掛かった。 「うははははっ!!」 ギニュー入り悟空の蹴りをなんとか避けた3人だが、続く攻撃に防戦一方。 体が悟空であることに変わりはないため、反撃はできないでいた。 するとジースはスカウターに反応する悟空入りギニューの姿に気付いた。 「はあっ、はあっ、み、見つけたぞ…!」 「よくここまで来れたな。くっくっく……もっとひどいキズをつけておくんだった」 胸の傷を押さえながら地面に降り立つ悟空入りギニューを見て、ギニュー入り悟空はそう呟く。 「ク、クリリン、悟飯、ライ…よ、よく聞け…!そいつはオラじゃねえ!カラダをとっかえやがったんだ……!」 苦しそうにしながらも言う悟空入りギニューに、3人はようやく信じることができたのか、悲痛そうにその姿を見つめた。 「あ…あわわ…ほ…ほ…ほんとだったのか……!」 「そそ…そんな…あ…あれがおとうさん…!?」 「やだぁ……あたし、あんな角のあるおとうさんやだよ……」 双子は今にも泣きそうな顔で呟く。 その悲しみはもっともだが、今は構っていられない悟空は3人を見上げる。 「そ、そいつはギニューだ!遠慮なくやっつけてしまえ…!今のおまえたちなら、ぜったいに負けはしねえ!いいか…!ぶっとばしちまうんだぞ…!」 そうは言うものの、どう見ても体は悟空、しかも強さも悟空のギニューを相手にどうしたらいいのかと3人は思い悩む。 勝てるはずがないと言うギニュー入り悟空に、悟空入りギニューはにやりと笑い、やってみればわかると言い出す。 違う体で、界王拳どころか気の使いかただってうまくできないと確信しているようだった。 「くっくっく…このギニュー様にそんなハッタリは通用せんぞ…!いま見せてやる!」 言うと、ギニュー入り悟空は全身に力を込め出した。 そして近くでスカウターを持つジースに戦闘力数値を教えるように言う。 「……に……23000ですが……」 「に…23000…たった23000だと……!?」 思わぬ数値に怯んだギニュー入り悟空にクリリンは先制攻撃を仕掛けた。 そんなバカなと驚愕するギニュー入り悟空に、クリリンはなんとか勝てるかもと勝機を見出した。 そして加勢しようとするジースには、姿を見せたベジータが相手することとなった。 ベジータの登場に驚いたギニュー入り悟空の顔面にクリリンは再び蹴りを決める。 「くっ…くっそぉ〜〜!!」 予想を裏切られたという表情で悔しそうに言い、ギニュー入り悟空は悟飯に向かってエネルギー波を放つ。 が、それも悟飯には簡単に受け止められた。 「どっ、どうしてだ……!こ、このカラダは180000以上のパワーは出せるはずだっ…!」 「さっき悟空がいってたのを聞いてなかったのか?おまえはそのカラダをうまく使えないんだよ。いまのうちに降参したらどうだ?」 「降参……?こ…このギニューさまが降参だと…!?ふざけやがってーーっ!!」 クリリンの言葉に怒りを感じたギニュー入り悟空は拳をクリリンに向ける。 だがクリリンには簡単にかわされ、そのあと攻撃を繰り出すも全てクリリンには受け止められてしまっている。 「はやくおとうさんの体から出てってよ!このバカーっ!」 「……おねえちゃんは戦わないの?」 「だ、だって……中身はどうであれ体はおとうさんだし……なんか、やりにくい……」 「……だね」 悟飯もライの言葉に同感なのか、苦笑いしながら言った。 だが、ギニュー入り悟空がこちらに向かってきて、攻撃を仕掛けてきたため、悟飯は思わずそれを受けとめる。 ライはなんとか避け、その戦いを見守った。 そうしている間に、ジースと戦っていたベジータはジースを塵一つ残さない、圧倒的勝利を収めた。 「ベ、ベジータ…!そ、そこまでしなくても…!」 「くっくっく…せいぜいそうやって、甘い戯言をほざいてろカカロット…。きさまは一生超サイヤ人にはなれん。資格があるのはこのオレさ……」 悟空入りギニューが叫ぶも、ベジータは悪びれた様子など微塵もなく、淡々と言う。 そしてまだギニュー入り悟空と戦っている3人を見て、舌打ちをした。 「バカめ。外見がカカロットなんで思い切って攻めらんようだな…。よ〜〜し、このオレが始末してやる!」 言うと、ベジータは速いスピードでギニュー入り悟空の目の前までき、重い一発を腹に決めた。 「おとうさん!!」 そのピンチに、思わずライは叫ぶ。 中身は悟空じゃないと分かっていながらも、悟空の体がベジータに痛めつけられるのは見ていられないようだ。 そしてベジータは立て続けに攻撃を与え、ギニュー入り悟空はベジータに手も足も出ないまま地面に叩きつけられた。 そしてとどめと言いながら上空からギニュー入り悟空に向かうベジータに、ギニュー入り悟空は不敵な笑みを見せる。 それに気付いた悟空入りギニューは、急いで二人の間に割り込んだ。 ギニュー入り悟空、ベジータは互いに驚いた表情をしていたが、そうしている間にもギニューの技であるチェンジは完了した。 「な…なんだ…!?いま、一体なにをしたんだ……」 状況を掴めずにいるベジータに、悟飯はなにかに気付いたように叫ぶ。 「こ、この感じはおとうさんだ!おとうさん、も、元のカラダに戻ったんだ!」 「おとうさん!ほんとによかった!」 双子の言葉にベジータはまた驚いて二人を交互に見る。 そして状況を理解したベジータは、元の体に戻ったギニューを見た。 だがそんなベジータの体を狙ったギニューは、再びチェンジをベジータに向けて使おうとする。 「チェーーンジ!!」 だがその瞬間、機転を利かせた悟空がそばに居たカエルを掴みベジータとギニューの間に放り投げる。 そして目を開けたベジータが地面を見ると、ギニューは突然四つん這いになり、ピョンピョン飛び跳ねてどこかへ行ってしまった。 その様子を不思議そうに、茫然と見ていた4人だが、すぐに悟空の元へと降り立った。 ×
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