しばらく飛び続けていると、悟飯は頭に地形が入っているのか、もうすぐだと言う。 感心したクリリンだが、すぐに強い気がこちらに向かってくるのに気付いた。 「隠れろ、はやくっ!!」 再び地に降り岩壁に背をつけて身を潜める。 「こ、こんなところじゃ見つかってしまうんじゃ…!」 「いいからさっさと気を消すんだ!あとは運に任せるさ!」 叫ぶように言うクリリンだが、何故スカウターがないのにわかったのかと疑問を口にする。 ライも息を呑んで身を潜めるが、そっとクリリンにしがみついているナメック星人の子供を見つめた。 「ねえ、」 そして小さな声で呼びかける。 ナメック星人の子供は少し驚きつつも、ライを見上げた。 「大丈夫だよ。だから、少し力を抜いて」 ライは安心させるかのように笑みを浮かべ、ナメック星人の子供を見つめた。 その笑みを見て、ナメック星人の子供は目をしたばかせる。 初めてライを見たときがあれだったため、少しばかり怖いという気持ちがあった。 だが、この笑顔を見ると、自然とその恐怖心は薄れていった。 ライがナメック星人の子供を落ち着かせていると、悟飯が何か気付いたのか空を見るように促す。 クリリンとライはそれに従い、空を見た。 「ベ…ベジータ……!」 ライは驚き思わず小声で呟く。 そして見つかってはいけないと本能で感じ、しゃがみ身を小さくする。 「あ…あいつ…あのスカウターって機械をつけてなかったぞ……!な…なのに、なんでオレたちのいる場所を……」 不思議に思うクリリンは、ベジータが何かを探っているような仕草をしていることに気付いた。 「ま…まさかあいつ…気を感じる能力を……!そ…そうとしか思えない…!」 「そんな……」 「だ、だとしたらまずいぞ!オ、オレたちが気を消しても、この子のわずかな気が…!」 言うクリリンに、ライははっとしたようにナメック星人の子供を見る。 きょとんとしているナメック星人の子供の背中を、不安げにそっと触れた。 「こ…こっちに来た……!」 「…も…もうダメだ…!見つかる…!」 こうなったら戦うしかないと覚悟を決めたクリリンだが、次の瞬間、川で大きな魚が跳ねたのを見て、その場に踏み止まる。 「ちっ…あいつか……」 どうやらベジータは小さな気をあの魚だと思ったらしく、この場から去って行った。 そして緊張の糸が解けた4人は大きく深呼吸をしながら地面に手をつけた。 「た…助かったあ〜〜……!」 「よかった……」 ライはほっとしたようにナメック星人の子供を見る。 目が合うと、ライはまたにこりと笑った。 そして気配を消しながら、ライと悟飯はナメック星人の手を握り、ブルマのいる場所まで戻ってきた。 洞窟の入り口まで来てもブルマがいないことに不思議がるが、クリリンは奥にいると言って洞窟の奥を進んだ。 そして洞窟の奥でカプセルハウスが建ててあるのを見つけた。 するとカプセルハウスの中からブルマが姿を見せ、なにをのんびりしていたんだと怒鳴られる。 「ん!?」 だが、ナメック星人の子供を見つけると不思議そうに指を指した。 「な、なに!?その小型のピッコロみたいな子は!」 怯えた様子のナメック星人の子供に、ライと悟飯は大丈夫だよと微笑みかける。 いったい何があったのかと聞くブルマだが、すぐにあることを思い出したのか笑顔で4人を見た。 「孫くんがここに向かって飛び立ったの!到着はなんとたったの6日後!」 「「「え!?」」」 思わぬ発言に、3人は同じように驚いた顔をブルマに向ける。 「それがさあ!孫くんが赤ちゃんのときにのってきたサイヤ人の宇宙船を父さんが大改造したらしいの!しかも孫くんはすっごい修業をしながら…って話よ!」 「お…お…おとうさんが……」 その言葉を聞いて、悟飯、ライ、クリリンは嬉し涙を滲ませる。 「「やったぁーーっ!!」 飛び跳ねて喜ぶライと悟飯は思わずナメック星人の子供の手を取る。 いまいち状況が理解できていないナメック星人の子供は驚いているが、お構いなしに双子は素直な喜びを見せていた。 その後、一同はカプセルハウスに入り、クリリンの口から今までの状況が語られた。 ほんとうにだめかと思ったと呟くクリリンは、ふと、ブルマに出された弁当にナメック星人の子供が口をつけていないことに気付いた。 「おまえ、食べろよ。遠慮なんかすんなって。うまくはないけどさ」 無言のままでいるのを見て、ブルマはムリないわと言う。 「村のほとんどの人が殺されちゃったんでしょ…」 「そうか…」 納得したのか、険しい表情になるクリリン。 ライも切なそうに見るが、ナメック星人の子供はぽつりと口を開いた。 「ボクたちこういうの食べません……水を飲むだけでいいんです…」 言うナメック星人の子供に対して、村に畑があるのを見ていたクリリンはその言葉を嘘だと口にした。 だが、ナメック星人の子供はそれをアジッサの苗木だと説明した。 異常気象が起こる前のナメック星はアジッサの木が生い茂る綺麗な星だったため、その以前の星の姿に戻そうと、今またアジッサの木を増やそうとしているのだと。 それを驚いたように聞いていた悟飯は、弁当を食べながらナメック星人の子供を見つめる。 「…………ねえ、キミなんて名前なの?」 「デンデ……あ…あの…あなたたちは、何者なんですか?」 デンデはまだ緊張した様子で聞くが、それに答える間もなくライ、悟飯、クリリンは何かに気付き洞窟の外に出る。 「なっ、なによ急に…!ま、また何者かくるわけ!?」 心配してあとをついてきたブルマに、クリリンは気がつぎつぎと減っていくと説明した。 「ま…また、ナメック星人が、こ…殺されている……!」 「この気……やっぱり……」 「こ…殺しているのは…オ…オレたちがよく知っている気だ……ベ、ベジータ…!こ、今度はヤツがべつの村を襲っている…!」 拳を振るわせるクリリンの言葉に、ひどいと息を呑むブルマとデンデ。 ベジータとフリーザ、どちらがドラゴンボールで永遠の命を手に入れてもこの世はおしまいだとも言うクリリンに、ブルマも真剣な目つきで言う。 「ひとつのドラゴンボールをわたしたちが見つけて隠してしまえば、あいつらにはぜったいに揃えられないんだけど……」 「ダ…ダメですよ……そ…そんなことをしたら、あいつらすべてのナメック星人を殺すまで探し続ける……」 悟飯の言葉を聞き、絶望するデンデ。 その悲しそうな表情を見て、ライは唇を噛み呟く。 「それだけは、ぜったいにさせちゃだめだよ……ぜったい……」 そして無意識のうちに拳を強く握ってしまうのを自分で気付き、はっと手を開いた。 また、自分は感情的になろうとしていた。 さっきクリリンに注意されたばかりだと自分に言い聞かせ、ライはそっと頭を振った。 「あ、あなたたちのことを教えてください…!ど、どこから来たのか…な、なぜドラゴンボールのことを知っているのか…」 意を決したように言うデンデに、ライははっと振り向いた。 「ほ、星のみんなを助けてください!」 そして必死に伝えるデンデの姿を見て、ライは怒りを全て忘れてしまったかのような、穏やかな気持ちになる。 なぜだか、デンデの姿……いや、ナメック星人の姿を見ると優しい気持ちになれる。 そのことをライは不思議に思っているが、考えても原因がわからなかったため、深く考えようとはしなかった。 デンデへの説明はクリリンが行った。 自分たちが地球という星の人間だということ。 ナメック星のドラゴンボールを使って、仲間を生き返らせてやりたいということ。 そうすれば、地球にあるドラゴンボールもよみがえるということ。 「……そ……そういうことだったんですか…や…やっと、あなたたちのナゾがとけました…」 話を聞いて驚いた様子のデンデだったが、すぐに強い目で4人を見た。 「お願いします!ボ、ボクについてきてください!最長老のところへ案内します!」 「え!?」 「最長老……!?」 不思議そうに繰り返すブルマやクリリンに、デンデは説明する。 「ボ、ボクたちナメック星にいるみんなを産んでくれた人です。昔の異常気象でたったひとりだけ生き残って、ふたたびナメック星に活気を与えてくださった…ボクは最長老の108番目の子供です…」 言うデンデに、ブルマは疑問を感じたのか、どうやって子供を産むのかと聞く。 対して、当たり前のように口から卵を産むと答えたデンデ。 しばらく二人の間にすれ違いがあったらしいが、ナメック星人には男も女もない、無性だということがわかってブルマはクリリンを見る。 「き…きいた!?男も女もないんだ!つまんない星よねーー!」 そして、自分がナメック星人じゃなくてよかったとも言うブルマをさておき、クリリンは最長老のところへの行き方をデンデに聞く。 どうやら最後のドラゴンボールは最長老が持っているらしく、気を読めるようになったベジータが相手では危ないとクリリンは焦りを見せた。 急いでデンデに案内をするように頼むと、クリリンはライと悟飯を見た。 「オレがついて行く!悟飯とライちゃん、ブルマさんはここで待っててくれ!たくさんで行っても意味がない」 「わ、わかりました。気をつけて……!」 「デンデも、気をつけてね……」 クリリンに向け頷くと、ライはまたデンデを見た。 はいと頷くデンデを見て、ライは名残惜しそうに見つめる。 ベジータに気付かれないように歩いていこうとしたが、30日もかかると聞いて仕方なく飛んでいくことにしたクリリン。 「いいかー!そっちも気をつけろよーっ!」 「「はーーい!」」 そして3人を気遣いながらデンデと共に飛び立っていったクリリンを双子は手を振り見送った。 ×
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