「ごらんのように、わたしたちはあなたたちのドラゴンボールとやらを集めているフリーザという者です」


自らをフリーザと名乗った、恐ろしい気の持ち主は、丁寧な口調でナメック星人たちに接する。
なんとか聞こえる会話に耳を傾ける3人は、息を殺しながらその会話を聞いていた。
そして、他の人たちはどうしたと聞くフリーザに、ナメック星人たちがなにも答えずにいると、


「なにもいわないつもりですか?殺しますよ」


やはり丁寧な口調で、だが冷酷な言葉を告げる。
それを聞き、この町の長老と思しきナメック星人がナメック語で何かを話す。
が、フリーザは自分たちにもわかる言葉を話せることを知っていると言うと、長老は諦めたように言葉を話し始めた。


「ほ…ほかの者は野良仕事にでかけた…残っているのは、われわれ老人と子供だけだ……」
「そうですよ。そういうふうに素直に答えていただけたら何もしませんからね」


口角を上げ言うフリーザ。
その様子を、3人はただただ見つめていた。


「では続けて答えていただきましょう。ドラゴンボールはどこですか?ここにもひとつあると思うのですが」
「し…知らん。そんなものは持っておらん…!」


否定する長老に、フリーザは不敵に笑った。


「ドドリアさん、確かふたりめに殺したナメック星人さんがおもしろいことを言ってましたよね」
「はい。確か…ドラゴンボールは認められた勇者にしか渡すことはできん…とか」
「そうそう。その人はとてもガンコでしてね、なかなか協力していただけないものですから、見せしめにひとりを殺してさしあげましたらね……」


淡々と言うフリーザに、ナメック星人はもちろん、様子をうかがう3人も目を見開いた。
そして続けて、ドラゴンボールを手に入れることのできた経緯を話すフリーザ。
ナメック星流のドラゴンボールの手に入れ方を試したものの、ぜったいに渡せないと言われたため、つい殺してしまったのだと。


「す、素直にだと……!嘘をいいおって…!
「そ…そうだ…!ほかの長老たちが、きさまなどに素直に渡すわけがない…」


言うナメック星人たちだが、フリーザは言葉を続ける。


「いえいえ、こうしたら素直になられましたよ。ザーボンさん、見せてあげなさい」
「は!」


言うと、ザーボンと呼ばれた人物はドラゴンボールを抱えたまま、一瞬というスピードで一人のナメック星人の隣まできた。
そしてなんの躊躇いもなしに、ナメック星人に蹴りを入れ、首の骨を折る。


「おっ、おのれ〜〜っ!!」


それを見た別のナメック星人が、ザーボンに向けエネルギー波を放つ。
が、ザーボンは軽々と避け、その攻撃は別のフリーザの仲間に当たった。
宙へと跳び上がったザーボンは、そのナメック星人に向け同じようにエネルギー波を放つ。
そして、避ける直前に放り投げたドラゴンボールを片手で受け止めた。


「な…なんてやつらだ」
「ひ…ひどい」
「ゆるせない…」


その非情な行動に、クリリン、悟飯、ライがそれぞれ呟く。


「いかがですか?少しは素直な気持ちになられましたか?」


二人も犠牲を出してしまったことを重く受け止めたのか、長老は両手に二人の子供を守るように抱きながら、ドラゴンボールを集める目的を聞いた。


「なあに、つまらない願いですよ。わたしに永遠の命をいただこうと思ってます」


答えるフリーザに、クリリンは驚いたように呟く。


「な…なんだと……!?じゃ…じゃあベジータは…あ…あいつも永遠の命を…」
「ベジータとは仲間じゃないのかな……」
「どういうことなんだろ……」
「わ…わからん……」


やつらの目的も正体も、未だはっきりとしないことを受け、まだしばらく様子を見続けることにした。
そして、長老は意を決したように口を開く。


「おまえたちのようなやつには、死んでもドラゴンボールは渡せん…」
「ほっほっほっ。わたしに渡すぐらいなら、死を選ぶというわけですか……」


そしてどこか面白そうに、長老を見る。


「でも、その子供たちの死にもガンコでいられるでしょうか?」
「なっなにっ!?きっ、きさまら子供まで……!」


その残酷な言葉を聞き、長老は慌てて、しがみつく子供を強く抱きよせる。


「ぐ……!」
「………!」


フリーザの言葉を聞いたクリリンたちも怒りを感じた様子で睨むように見る。
悟飯は強く、強く拳を握っている。


「あいつら……っ」


同じように拳を強く握るライがそう呟く。
その直後、ライは強い気を持つ人物が数人、この場に近づくのを感じた。
それはスカウターを持っているドドリアも同じなのか、空を見上げフリーザに伝える。


「おおっ!来てくれたか!」


長老が安心したように叫ぶ。


「ナメック星人!助けにきたんだ!」


気の正体がナメック星人だということがわかり、思わず叫ぶクリリン。
そして地面に降り立った3人のナメック星人たちを見つめた。


「困りますね。やっとドラゴンボールを出していただけるところでしたのに。わざわざお仕事を中断して殺されにいらっしゃるとは」


若いナメック星人たちを見ても、フリーザは余裕のまま言う。


「なるほど……村を襲いドラゴンボールを奪っている者がいるというウワサは本当だったか…」
「許さんぞおまえたち…ナメックの平和を踏み躙りおって!」


そして怒りを露わにしたナメック星人たちの言葉を受け、フリーザは面白そうにナメック星人たちを見た。


「ほう!戦うつもりですか!どれほどの戦闘力数をおもちかな?ドドリアさん」
「は!調べてみます」


そしてドドリアがスカウターのスイッチを押すと、口角を上げて笑った。


「ガッカリしないでください。3人とも1000前後です。わたしたちが戦うまでもありませんな」


その様子を見て長老は、あの機械でナメック星に点在する村を見つけているのだと気付く。
戦闘力が1000程度ということに油断したフリーザ一味は、ドドリアたちではない別の手下をナメック星人と戦わせようとしていた。


「ちがう!あの3人は気をおさえているだけだ…あいつら、そんなこともわからないのか…?」
「そういえば、サイヤ人たちもそのことに驚いていましたね…」
「きっと鈍感なのよ、すごく」


ぷくっと頬を膨らませ、ナメック星人たちを甘く見ているフリーザ一味を不満そうに見るライ。
どうやら、ナメック星人をバカにされていることが嫌で仕方ないらしい。


「やっちまえーーーっ!」


意気込みながらナメック星人たちに向かっていく手下たち。
そんな相手にナメック星人たちは一気に気を上昇させ、それぞれ迎え撃つ。
手下相手といえど、圧倒的力の差を見せられたザーボンは眉を寄せてドドリアを見た。


「どういうことだ!?あれが戦闘力1000だって?」
「どうなってんだ!3匹とも3000に増えてやがる」


カチカチと、スカウターを操作するドドリア。
その間にも、ナメック星人たちは次々と手下を倒していく。


「いいぞ!すげえ!やれ!やれ!」


その健闘ぶりを見て、思わず応援してしまうクリリン。
ライと悟飯も、嬉しそうにその様子を見つめた。


「えへへ、ナメック星人が弱いわけないもんね!」


何故かライは得意気な笑顔で言う。
そんな上機嫌なライを見て、悟飯もどことなく嬉しそうに笑った。


「おやおや、なかなかやりますね」
「わかったぞ!ナメックのやつら戦闘力をコントロールできる種族なんだ!滅多にいないタイプなんですがね!」


ナメック星人たちの戦いぶりに、フリーザは面白そうに言う。
そしてドドリアも気付いたのか、スカウターを見ながら言った。
誰もが戦いに注目している中、長老は冷静に、スカウターに狙いを定めていた。
子供たちに自分から離れるように言うと、自らナメック星人を片付けようとするドドリアに指先からエネルギー波を撃った。
それはドドリアのスカウターに直撃し、ボンッと音を立ててスカウターは破壊された。
威力よりコントロールを重視したためか、ドドリアを驚かせるだけで倒せるような力はない。


「そんなチンケな技でこのオレが倒せるとでも思ったか…!」


苛立った様子のドドリアに構わず、長老は飛び上がり残り2つとなったスカウターも同じように破壊した。
戦っているナメック星人たちは不思議がったが、ザーボンは長老の狙いに気付いたのか、声をあげた。


「しまった!ヤツの狙いはスカウターだったんだ!」


そのザーボンの言葉を聞き、クリリンは首を傾げた。
そして悟飯に強さや場所が分かる機械だと教えてもらうと、クリリンはようやくフリーザたちがどうやってドラゴンボールの位置を探し当てているのかが分かった。


「そうか!やっぱりあいつらドラゴンボールのある正確な場所がわかるわけじゃないんだ!スカウターってやつでナメック人を探して強引に取り上げて……!だから、それを知ったナメック人のじいさんがスカウターを全部壊したんだ!」


クリリンの言葉を聞いて、ライもわかったのかすごいと言いたげに長老を見つめた。
だがそれも束の間、同じように長老の狙いを知ったドドリアは怒り大声で叫ぶ。


「皆殺しだぁーーっ!!どいつもぶっ殺してやるぅーーっ!!」


怒りのまま、浮いている長老へと向かうドドリア。
ナメック星人たちが長老の身を案じると、フリーザはドドリアに向け言葉を放った。


「ドドリアさんお待ちなさい!殺すのは、まずお若い3人になさい!」


その言葉を受け、ドドリアの動きはピタッと止まる。
そして悔しそうに方向を変え、3人のナメック星人の戦士たちの前に着地した。


「3人まとめて10秒で片付けてやらあ…」
「バカなことを。われわれ3人にきさまが敵うと思うか!」


ふへへと笑うドドリアに、戦士のひとりが言う。
だが次の瞬間、言い放った戦士の胸はドドリアに貫かれた。


「!!」


一瞬と思われる出来事に、もう一人のナメック星人も反応、反抗を見せる間もなくドドリアにやられてしまう。
その様子に言葉を失ったまま見つめるライたちや長老、子供たち。
最後に残ったナメック星人の戦士はうまくドドリアの攻撃をよけながら、両手でエネルギー波を放った。
それはまっすぐドドリアへと向かい、そして大きな火柱を上げて爆発した。
仕留めたと息を吐いた戦士だが、えぐれた地面の中からドドリアが無傷で出てきたのを見て目を見開く。


「ダメだ!あんな攻撃じゃ倒せない……!」


眉を寄せ言うクリリン。
直後、頭から突進したドドリアはナメック星人を捕え、そのまま岩に叩きつける。
最後の戦士も、ドドリアに瞬殺されてしまった。


「あ……うう……」
「ほっほっほ…これで、逆らうのも逃げようとするのもムダだということがおわかりになったでしょう。まあ、とにかく降りてらっしゃい」


フリーザの言葉に反論できないのか、長老は顔をしかめながらも地面に降り立つ。
これ以上意地をはると次は子供たちが死ぬことになると言うフリーザに、長老はしばらく間を置き、意を決して口を開いた。


「や…やむをえん…だが約束しろ。子供たちには、ぜったい手を出さんと…!」


ようやく素直になった長老に、フリーザはにこっと満足気に微笑んだ。