現れた二人組を見て、ライは思わず目を見開く。 二人組のしている服装に、見覚えがあったからだ。 「あ…あのカッコウ見てみろよ……サイヤ人が着てたのとそっくりだ……だが、サイヤ人じゃない……」 クリリンも気付いたのか、そう呟く。 どういうことなのか状況が理解できないクリリンだが、嫌な予感はしてしまう。 そして二人組もこちらに気付いたのか、フワッと宙に浮いて近付いてきた。 「おい、気配を殺しながら気をためておけ…」 「は…はい」 「ライちゃんは、ブルマさんを守ってくれ」 「わ、わかりました…」 クリリンに言われ、ライは二人組を気にしながらブルマの傍に行く。 宇宙船の足の部分に掴まっていたブルマは、ライが傍に来てくれ少しばかり心強さを感じた。 そして浮きながら何かを話していた様子の二人組のうち片方が、武器のようなものを宇宙船へと向ける。 ライはそれを見て両手を広げ、ブルマを守るように前に出た。 だが次の瞬間、武器からはエネルギー波のようなものが放たれ、あっという間に宇宙船を貫いていった。 思わず体制を崩したブルマを支えたライだが、宇宙船を壊されてしまったことで二人組を睨むように見上げた。 そしてぐっと拳を握ったが、すぐに視線を悟飯とクリリンへと向けた。 「やるぞ!」 「はいっ!」 気を開放した二人を見て、ライはすっと肩の力を抜く。 それは脱力ではなく安堵。 あの二人ならなんとかしてくれるという、信頼によるものだった。 「へ!?」 「な…なんだ…!?こっ、この戦闘力の数値はーー!」 二人組が驚いたと思えば、悟飯とクリリンの姿は消え、一瞬にして二人組の目の前に現れる。 そして二人はすぐさま攻撃を与え、勝負は簡単についた。 二人が着地すると同時に、謎の二人組も川へと落ちていく。 「やった!さすが悟飯とクリリンさんっ!」 「ふう」 「へーい!ナイスナイス!」 「ナイスじゃないわよーーっ!!」 だが一人、ブルマはこの状況を楽観視できないのか、涙目で叫んだ。 ライが振り向きブルマを見るが、ブルマはとぼとぼと壊れた宇宙船の破片の前でうずくまった。 「も、もうダメよ…もうおしまいだわ……も…もう二度と地球には戻れないのよ〜〜っ!」 泣きながら言うブルマに、ライも壊れた宇宙船を見上げる。 「ブ…ブルマさん…とりあえずここを離れましょうよ……や…やばいすよ…もっと強いやつがやってくるかも…」 「そ…そうですよ。たくさん感じた気はナメック星人じゃなくてベジータの仲間たちみたいだから…ま…まずどこかに隠れないと…」 「な…なんとかなりますって……」 「き…きっと、ナメック星人さんが宇宙船直してくれますよ…」 一生懸命励ます二人に、ブルマも仕方なさげに立ち上がる。 それを見て、ライも励まそうと思ったのか笑いながら言う。 「まあ、いいじゃないですか!あいつらくらいなら、あたしたちがちゃっつけちゃいますから!」 「……その、まぁいいかで済ませられる軽い性格…誰かさんを思い出すわ……」 ライの言葉に、ブルマは深く溜息をつき、この場を離れる準備をする。 すでに準備を終えていたライは、きょとんとブルマを見つめた。 そんなライの表情に気付いたブルマは、なんでもないと言って歩き始めるクリリンたちについていく。 ライも同じように後に続いた。 しばらく歩き続けた4人だが、そのうち、疲れを感じたブルマが歩くスピードを遅くしていた。 早くと急かすクリリンに、ブルマは空を飛べるなら自分を連れて飛んでと言った。 「そうしてあげたいんですが、ボ…ボクたち気配を殺して歩いてますから……空をとぶのはたくさんの気が必要で、そうすると敵に居場所がわかってしまうんです…」 説明する悟飯に、ライもうんうんと残念そうに頷く。 そのすぐあと、クリリンが洞窟のような場所を見つけた。 「あ…あんなとこで……い…いつまで暮さなきゃいけないの…!?」 ひっくひっくとしゃくりあげながら、仕方なしに洞窟に近寄るブルマ。 みんなで洞窟に入ろうとするが、また別の気を悟飯が感じ取った。 「さっきの連中とはちがう感じの気だな…こんどこそ、ナメック星人かも……」 言った直後、クリリンははっとまた別の方向を見た。 「隠れろ!あっちから別の怪しい気が近付いてくる!!」 え?と振り向くブルマに、クリリンは言葉を続ける。 「ブルマさんも早く隠れて!ぜったいにさっきやっつけたやつらの仲間すよ!!」 そして4人は洞窟に身を潜める。 息を殺すようにしながらも、ライ、悟飯、クリリンは気の正体が気になるのか外を気にして見る。 「来たっ!」 そしてその気が洞窟の近くを通りすぎようとした時、4人は岩壁にくっつき、場を凌げるように息を呑む。 大きな気が洞窟を通り過ぎたのは一瞬で、すぐに4人がいる場所は静かになった。 「い…行っちゃった……よかったわ、わたしたちが目的じゃなかったみたい…!」 安心したようにブルマが言うが、クリリンはガクガクと震え、悟飯は呼吸を荒くし、ライは今まで呼吸ができなかったのか、ぷはっと息を吐いて大きく深呼吸をした。 膝に手をつけるクリリンが、ブルマにレーダーを確認するように言う。 言われた通りレーダーを確認したブルマは、今の連中が4つのドラゴンボールを持っていると言った。 「や…やっぱりそうか……」 クリリンは予想が当たってしまったことを嫌に思いながらも、ライと悟飯を見た。 「ご…悟飯…ライちゃん…見たか…?前から2番目に飛んでたへんなやつ…」 「は…はい……み…みました…」 「あ、あたしも……」 何とか答えるが、ライは思い出すだけで再び体が震えた。 「あ…あのチビ…ベ…ベジータよりもっと…もっととんでもないかもしれない……。み…見た瞬間に金縛りにあっちまった…」 恐る恐る呟くクリリン。 桁違いの強さを、その身で実感したようだ。 「ベ…ベジータより強いって、そんな……い…いったい何者なの……?」 「わ…わからない…だ…だけど、ベジータの仲間だと思う……。同じような服をみんな着ていた…」 言い、あんなやつらからどうやってドラゴンボールを奪うんだと危惧する。 ライと悟飯も、難しそうな表情で俯いた。 するとブルマはレーダーを見て気付いたのか、3人に声をかける。 「いまの連中、ここのドラゴンボールにまっすぐ向かってるわ……!」 やつらもレーダーを持っているのかと心配するブルマに、ドラゴンボールのある位置を聞く。 するとそこは、先程クリリンがナメック星人の気かもと感じた場所だった。 「オレ…そこに行って様子を見てくる…!」 「ボクも行きます!」 「あたしも!」 言いながら荷物を置き始める3人に、ブルマは思わず声をかける。 「ちょ、ちょっと待ってよ!わ、わたしひとりでこんなとこに置いとく気!?」 言うが、クリリンにここのほうが安全だと言われ、ブルマもしばらく間を置いたが納得した。 そして洞窟の中にカプセルで家を作って待つと決めたブルマは、気をつけてと3人を見送る。 「悟飯、ライちゃん、なるべく気をおさえながら急ぐんだ!できるな」 「「はい!」」 言うや否や、3人は舞空術を使わないながらも、素早い動きであっという間に洞窟から離れて行った。 しばらくはその移動法を使っていたが、目的地に近付いたことで、気を完全に消して歩き始めた。 「あのガケの向こうだ……!」 クリリンが指を指した方向に、確かにものすごい気を感じる。 ライと悟飯はごくりと生唾を呑みながら、そっと崖の上から顔を覗かせる。 そこには、自分たちが乗ってきた宇宙船と同じような形の家がいくつかあった。 村の真ん中には、さっきの強い気を持つ3人がいる。 「ほ…ほかのやつらはともかく…あ…あの3人……と…とくにあの丸いのに乗ってるやつ…お…おっそろしく強い気だ…」 言うと、クリリンは両側のふたりが手に抱えているのがドラゴンボールだということに気付く。 それを見て、思わず声をあげたライと悟飯。 その際に力んだ分がスカウターに反応してしまったのか、こちらを振り向くドドリアから咄嗟に身を隠す3人。 「どうしました?ドドリアさん」 「……いえ、あっちのほうにほんの僅かな力の反応があったもんですから……今は消えてます…まあ、小動物か虫でしょう」 が、すぐに気配を消したためか何とか気付かれずに済んだ。 安心したライと悟飯はふうと息を吐く。 そしてもう一度様子をうかがってみると、家から5人の姿が出てくるのに気付いた。 「(一目でわかる……ナメック星人さんたちだ……!)」 ライはその姿がピッコロにそっくりなのを見て、そう心で呟く。 クリリンや悟飯も同じなのか、じっと出てきたナメック星人たちを見ていた。 「あ…あいつらナメック星人をどうするつもりだろう……」 「ク…クリリンさん……あいつらみんなサイヤ人なの?」 じっと見つめながら問う悟飯に、クリリンは戦闘服はいっしょだがサイヤ人ではないと答えた。 「だいたいサイヤ人で残ってるのはベジータひとりのはずだからな…悟空やおまえたちをのぞいて…」 そして例の連中を、ラディッツの言っていた地上げ行為の仲間ではと推測する。 ベジータの姿がないことも確認し、3人はしばらく様子をうかがうことにした。 ×
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