※旧拍手お礼夢



「……そんなところで何してんの?」
「お花の水やり」


そう微笑みながら答える彼女は、俺の目に輝かしく映った。
毎日毎日、決まった時間にここに現れる彼女。
俺は部活の合間にたまに見に来る。
その時、彼女はいつも楽しそうに花に水をあげていた。


「……お前って園芸部だったっけ」
「ううん、帰宅部。……だけど、私お花好きだから」


だけど話しかけたのは今日が初めて。
同じクラスでも、ほぼ男子とつるんでる俺はあまり話さない。


「切原くんも部活だよね」
「ああ……今はランニング」


言うと、彼女は笑って、


「知ってる。たまにここ走ってるの見るよ」
「そっか……俺も見てるぜ。お前がいつも水やってんの」
「ふふ、それなのに何してるか聞いたの?」
「う……それは、つい、」


俺がばつの悪そうな顔をすると、彼女はまた笑った。
この空間に、俺は心が和むのがわかった。


「でも、いつも楽しそうに水やってるから……正直、気になってた」
「そうなの?……ふふ、そう見えるのは理由があるのかもね」
「え?」


意味深な言葉を言うと、彼女は先程とは違って、悪戯をしかけた子供みたいに笑った。


「私、このお花に水をあげながら、切原くんが部活頑張れますよーにって、お願いしてたんだよ」
「っな……」
「お花は水をあげると元気になってくれるから。……ほら、これなんて切原くんにぴったりだと思うの」


言いながら、太陽を見上げて元気に咲いている花を指差す。
俺はその花に目を向けながら、柄にもなくどきどきしてた。


「……ふふ、なんてね。自分で言って恥ずかしくなってきた」
「………いや、その……嬉しい、ぜ」


ここで走ってるとき、たまに目が合うときも。
彼女が花に水をあげてる姿を見つけるときも。
同じような気持ちになった。

ああ、そうか。


「……また、ここに来たら会えるか?」
「うん。切原くんが来てくれるなら、私待ってるよ」




俺は、この優しい表情をする彼女に恋してるんだ。





その花の名前も知らないけれど
(お前との距離が近づいたこと、花に感謝したいと思った)