※捧夢のため名前変換無し



ふと目覚めると、視界いっぱいに真っ白が広がっていた。
私はしばらくそれをぼーっと見つめる。
そして、自分がベッドで眠っていたことに気付いた。
どうして、と考える前にここがどこなのかを確かめようと、身体を起こす。


「ん………いたっ、」
「あ、目が覚めたんだね」


起き上がろうとして、ふいに後頭部に痛みが走る。
小さく声を上げるとカーテンが開き、一人の男性が私を覗きこんでいた。


「って……精市!?」
「ふふ、そんなに驚かなくても」
「お、驚くよっ」


急な人物の登場に、私は目を丸くした。
目に飛び込んできた相手は……私の恋人である精市だったから。


「でも、元気そうでよかった」


それと同時に、ここが保健室だということも分かった。
そして、どうしてこんな状況になったのかも。

………それは、1時間目の授業の時。
私たちのクラスは体育の授業で、私たち女子はグラウンドでバレーをしていた。
運動は楽しいし、得意だから私も凄くはしゃいでいた。
そして、他のチームの子たちが試合をしている間、私たちは審判をしていて……。
バレー部の子の打ったスパイクが、


「―――涼ちゃん、危ないっ!!」


私の後頭部に直撃したんだ。


「わ、私……気絶しちゃったんだ」
「そうだよ。大分強く当たったみたいだね」
「う、うわー…恥ずかしい…」
「そんなに恥ずかしがることじゃないよ?相手は部活のエースだったんだから」


そ、それもそうだよね……。
そんな子のスパイクを受けたら、いくら私でも……。


「って、ちょっと待って。何かおかしくない?」
「え?どうしたの?」


目が覚めたばかりで、つい普通に会話しちゃってたけど。
よくよく考えたら……


「どうして精市がここに?」


精市がここにいるのはおかしい。


「どうしてって、俺が涼を運んだからだけど」
「えっ!?だ、だって…あの時男子は体育館でバスケしてたんじゃ…」
「そうだよ。だけど……俺が涼の身に起きた異変に気付かないわけがないじゃないか」
「………」


だめだ。ありえないって言いたいところだけど……精市が相手だとそうも言えないのが本音。
私がしげしげと精市を見つめていると、


「ふふ、冗談だからそんな顔しないでよ」
「(冗談……!?)」
「ちょうど試合が終わって、外の空気に当たってたところだからね……見えたんだ」
「そ、そうだったんだ……ありがとう」


精市の優しい言葉に、私は心を落ち着かせる。


「……本当に、びっくりしたんだよ」
「えっ……」
「あの頑丈な涼が……ぴくりとも動かなかったんだから」
「……精市…」


心から心配してくれているような顔で、私をじっと見つめる精市。
その視線がなんだか恥ずかしくて。
でも…逸らせるはずがなくて。
私はそのあたたかい視線に返すように、精市を見つめ返した。


「精市……ごめんね」
「…どうして謝るの?」
「だって…心配かけちゃったみたいだし」


済まなさそうに言うと、精市は困ったように笑い、


「そんなの……お互いさまだよ」
「あっ…」


そう呟いた。
……精市は退院してから間もないから。
あの時は、私もすごく心配したっけ……。


「涼、そんな泣きそうな顔しないで」
「ご、ごめん…」
「それに、いいリハビリにもなったから」
「えっ?」


そう言うと、精市は私を元気づけるかのように笑った。
私は驚いてその表情を見つめると、


「涼をグラウンドからここまで運んだけど、あまり腕に負担はかからなかったからね」
「!?!?」
「ふふ…何を驚いてるの?最初に言っただろう?」


そ、そうだ……!
精市、私を運んでくれたって……!


「お、重かったでしょ?ごめんね…精市に無理させて…!」
「そんなことないよ。これでも鍛えてあるからね。涼ならあと5人は軽いよ」
「そ……そんな自信満々に言われても」


…そうだよね。
精市は……見た目華奢なのにすごく体力あるし、力も強い。
私が心配するなんて、余計なお世話なのかもしれない。


「それに、皆言ってたよ?おとぎ話の世界みたいだって」
「へっ?」
「きっと、涼の気を失った表情が綺麗だったんだろうね」
「………いや…逆だと思うけど…」


精市の方が断然綺麗だし、おとぎ話に出てくるような王子様みたいなのに。


「でも……」
「えっ」


ふいに、精市に迫られる。
私はベッドの上だし、逃げ場所がなくて後ろに身を引いた。


「どうせおとぎ話なら、俺のキスで目覚めさせてあげたかったな」
「………っ」


精市の……静かで、吸い込まれるような瞳に見つめられ……低く心地の良い声で囁かれた。
私は突然のことに言葉が詰まる。
心臓がばくばくうるさい…。
そうしている間にも、精市の顔はどんどん近付いてくる……。
どうしよう。どうしよう。
このままだとっ……!


「……ふふ、涼は冗談が苦手みたいだね」
「っえ…?」
「まぁ…俺の冗談も少し度が過ぎてたし、謝るよ」


精市はそう言うと、顔を遠ざけた。
私はシーツをぎゅっと握りしめ、どきどきを隠そうとする。
それに気付いたのか、精市は、


「……それとも、本当にしてほしかった?」
「そ、そんなことない…っ」


意地悪そうに笑って、そう言った。
私はそんな精市を膨れた顔で見つめる。


「あはは、ごめんね。あまり涼が本気にするから……」


そう言いながら、精市は私の頭を優しく撫でた。


「一応、君は怪我人だからね。無理はさせないよ」
「精市…」
「……これでも、俺は涼のこと心配してるんだよ」


優しく……そう言ってくれた。
そして私を横になるように促し、


「今日はゆっくり休むといい。俺も、ついててあげるから」
「え…悪いよ、」
「そんなこと考えなくていいんだよ。大事な涼がこんな状態なのに、俺は離れられないから」
「……ありがとう」


そして横になり…目を閉じた私の頭を、また精市は優しく撫でてくれた。


「涼……」
「ん……?」
「大好きだよ」


私がもう…眠りかけていることを知りながら、
不意打ちなんて、ずるいよ。

私だって、
大好きなんだからね。





ぬくもりを感じながら
(起きたらもう一度、私も同じことを伝えようと決意した)




こちらは以前、相互サイト様である涼様に捧げた夢です。
加筆修正せずそのままの状態であげ直しました。