「ねぇ、あいつのデータ教えて」


あいつと同じ立海テニス部の柳に聞いてみた。


「……いきなり何だ?」
「どーしてもデータが欲しいの!」
「仁王のか?」


首を大きく縦に振った。
そう、私はどうしても仁王のデータが欲しかった。
テニスだけでなく、プライベートでも皆を見張っ……いやいや、観察してる柳なら知ってると思って。


「……それは、分からない」
「はあぁぁ!?何で?何でよっ!」
「聞いたことあるだろう。仁王の異名を」


――詐欺師=B


「そういう柳は達人≠ナしょ!」
「だが、仁王のデータは取れない」


淡々と、諦めろとでも言うように柳は言った。
もう!使えないわねっ!


「それにしても、何故そんなにデータが欲しいんだ?」
「え?何でって……」


私、仁王のこと好きだもん。
……何て、言えるわけないでしょーー!!


「なるほど、そうだったのか」
「何で分かるのよ」
「お前は表情で分かる」


その目で見えてるのか!?
……おっと、これは禁句だったかな?
それより、その調子で仁王のデータでも取って来てよ!!


「ふっ、お前も厄介な相手を好きになったな」
「ちょっとっ!!言わないでよ!!」


何か照れるじゃんか!!


「これでデータが増えたな……」


私のより仁王のを集めてほしい。切実に。
そんな私の心内を知ってか知らずか、柳は面白そうに、


「仁王は、一筋縄ではいかないぞ」
「だから柳を頼ってるんじゃん」


なのに無いとか言っちゃって……!


「………ああ、そういえば…」
「なになに!?」


何か思い出したのかと思って、私は思い切り柳に近づく。


「最近、ブン太と赤也が噂してたな……」


ブン太と赤也??
ああ、まるっきりコンビね……。
あのテニス部の中で唯一中学生してるあの二人ね。


「あの二人は仁王と仲がいいからな」


そうか……。
今度、何か聞き出そっと。


「で?何の噂?」
「桜花?柳に何を聞いとるんじゃ?」
「に、仁王っ!?」
「仁王か、丁度良い所に……」
「良くない良くない!!さ、仁王、もう授業が始まるから行こっ」
「…ああ、そうじゃな」


ふう、危なかった……。
それにしても……、柳の話聞きそびれちゃった。
仕方ない…また今度聞こう。





「…仁王の噂。それは……」


「アイツ、桜花のことが好きらしぜぃ?」
「マジっすか?」
「ああ。最近ずっと桜花のこと見てるし、そんなようなこと言ってるしよ」
「へぇ。仁王先輩が……ッスか」
「結構本気らしいぜ」



「両想いの確立、100%……」


データに書き加えておこう。




 
No data
(まったく、俺に聞くより本人を観察した方がいいんじゃないか)