※狂愛/死



「愛してる、雅治」
「俺も、桜花のこと愛しとぉよ」


私と私の恋人、仁王雅治は、毎日お互いの愛を確かめ合ってる。
別に信用してないわけじゃない。
ただ、それだけ愛が深いと言う事。


「……私、死ぬなら雅治より先がいい」


ポロッ、と出た言葉。
でも、本気。


「なんでじゃ?」
「だって、好きな人が死んでる姿、見たくないから」
「…そうか」


そう言った後の雅治は、何か考え込んでいるようだった。
それから、次の日。
今日も、雅治の家で、愛し合った。


「…なあ、桜花」
「ん、なぁに?」

「死んで」

「……え?」


いきなり言われた言葉。
一体、どういう意味か分からなかった。


「死んでくれるじゃろ?」
「え、それって、どういう……!」


ふと雅治の手を見ると、ナイフが握られていた。


「桜花の事、愛しとう」
「…私も、愛してる…っ」


だったら何で、こんなことをするの?


「俺だって、同じ気持ちじゃよ」


何?
言っている事がよく分からない……。


「だから、」


ズブッ……。

肉に何かが食い込んだ音がした。
それと同時に、私のお腹に凄まじい痛みが響いた。
熱い。熱い。痛い。


「……っ!!」


そう……雅治が、私のお腹にナイフを突き立てた。
とても、満足そうな表情で。


「…ぅ…ぐぁ…っ!」


痛み苦しむ私を見て、雅治は、ふ、と微笑した。


「桜花……俺には、桜花だけじゃよ…」


その言葉が、私の脳裏にやけに響いた。
そして、最後に見せた雅治の悲しげな表情が、妙に焼きついた。

そして。


「…死んだかのう」


そっと桜花の頬に触れてみる。
冷たい。


「…俺より先に、死にたかったんじゃろ?」


それは、自分だって同じだった。


「桜花の死んどる姿を見るのは、辛いからのぅ…」


そっと、桜花の冷たい唇にキスをした。


「でも、桜花の悲しむ姿はもっと辛い…」


だから、




「俺、明日死ぬかもしれんじゃろ?」




運命なんて、分からないから。
何時死ぬのは、運命次第。


「大丈夫じゃ。……俺も、すぐに逝く」


未だ突き刺さったままのナイフをそっと抜いた。


「あっちなら、そんな心配せんでええじゃろ……?」


そして、刃先を自分の胸に向けた。


「また……、愛し合おうな、桜花」


必ず、すぐに、迎えに逝く。



想いは先走り
あの世で巡り会えるか
これも
運命次第……―――





ふたつの「好き」が重なった瞬間
(だからって、言わなければ良かったなんて言わないよ)