俺の幼馴染、桜花は嘘がつけん。
それに素直じゃけえ。
よう、俺の嘘に引っかかる。


「桜花、知っとるか?」
「……え、マジ!?」


素直に受け止めては、


「ちょっと雅治!」
「なんじゃ?」
「さっきの話、また嘘教えたでしょー!」
「くく、本気にしたんか?」


何度も引っかかって、頬を膨らます。


「ねぇ、雅治ー」
「なんじゃ?」
「あ、あのね…」


引きつった顔で何か話そうとしてくると思えば、


「な、何でもないっ!」


すぐに引き返す。
それは、俺の嘘の仕返しに桜花が嘘を言いに来た印。
相変わらず、嘘がつけん奴じゃな。
……知っとるか?
そんなお前に、惚れとるんじゃよ。


「……桜花」
「…なぁに?」


好いとう。


「…なんでもなか」


嘘なら、言えるのに。
……やっぱ本気は辛いもんじゃのぉ。


「………」


桜花が、俺に向ける視線の意味なんか、深く考えたりしなかった。







そして、今日もいつものように教室に行くと、俺の席に桜花が座っとった。


「……でね、ブン太」
「…………だな」


なんじゃ、ブン太と話とんのか。


「………だから……」
「…桜花なら…………だろぃ」


なんか仲良さ気やのう。
……気にくわん。


「あっ、雅治!おっはよー」


ようやく気付いたんか。


「おっせーぞ、仁王」
「……そか」


適当に言葉を返した。


「なんか不機嫌?」


お前のせいじゃ。


「……そんなんじゃなか」
「……?」


桜花が不思議そうな顔をする。
ああ、情けない。
この俺が嫉妬か。
……ここで担任が入ってきてHRが始まった。
そしてそのまま特に何も無く放課後になった。


「……雅治」


気がつけば、教室には誰も居なくなっとった。


「ん、…桜花か」


まだ朝の事が頭にあるのか、返事は素っ気無く返した。
……心狭いのう、俺。


「……あ、あのね」


何か話したそうな桜花を、俺は机に腰掛けながら横目で見た。


「私……雅治が好き」
「……は?」
「雅治が、好き…」


桜花は嘘がつけん……。
と、言うことは?


「……本当、なんか?」


聞くと、桜花は、こくん、と頷いた。
こんなこと、あっていいんじゃろうか。


「……雅治、は?」
「……俺も……好いとう、よ」


ああ、格好悪い。
いきなりの告白に言葉が上手く出てこん。


「……今度は、嘘じゃないでしょ?」


……俺、そんなにも信用なかったかのう。
じゃが、桜花の気持ちが分かればこっちのもんじゃ。
俺は、桜花の唇にそっと唇を重ねた。


「……!?」


突然のことに驚きを隠せない桜花。


「これなら、信用してくれるじゃろ?」
「……もぉ」


桜花は嘘がつけん。
これから……俺も、桜花の前では嘘がつけんようになるかもしれんな。





−おまけ−


「あん時、ブン太と何話とったんじゃ?」
「あ、あれは……」
「ん?(にっこり)」
「う……。ま、雅治のこと相談してたのっ!」
「…ほぉ。…桜花は本当に可愛いのぉ」
「〜〜っ!」


ほれ、素直に気持ちを言っとるじゃろ?





嘘がつけないあの子
(素直な俺の気持ち、受け取りんしゃい)