「ねぇ、そこの詐欺師」
「……ペテン師じゃ」
「どっちでもいい」


私は頬杖をつきながら言った。
すると仁王は、少しむすっとしてそう答える。
私からしたらどっちだって同じな気がする。


「ペテンの方がかっこいいじゃろ?」
「……そんなの、知らない」


仁王なりのこだわりがあるのか、何故か譲らない。
呼び方が違うだけなのにね。


「……意味だって違うぜよ?」
「嘘でしょ」
「プリッ」


ほら。すぐようやって誤魔化す。
単に、人を騙そうとしてるだけ。
それなら、呼び名だってどっちでもいい。


「冷めとるのう」
「あっそ」


仁王の真っ直ぐとこちらを見る目は苦手。
何でも、見透かされてるようで。
私の気持ちも…手に取るように分かってるみたいで。
なんかこう……一緒にいると無駄に緊張する。


「のぅ、桜花」
「…何よ」
「お前さんも、呼び名欲しいか?」


俺みたいな、と仁王が笑う。
突然の言葉にびっくりしつつも、私は冷静に答えた。


「……いらないわよ」
「そうか?いい呼び名、思いついたんじゃけど」


くくっと笑い、私を見る。
……ずるい。
私に向けて、そう笑うなんて。


「……何よ」


そんな風に笑う、子供みたいな顔が好きなのよ。
本当、そんな顔するのは反則。


「耳、貸しんしゃい」


くいくい、と私を呼ぶ。


「……はぁ」


内心ドキドキしながら仁王に近づいた。
そして、私の耳に囁く言葉。





「――――――――――」





「……っ!!」
「どうじゃ?気に入ったか?」
「…っ、な、何言ってるのよ!」
「嫌なんか?桜花」


焦ってる私を見て、面白そうに笑っている。
私はさっきの言葉に、顔が熱くなるのを隠せなかった。

……ずるい。
私の気持ち、やっぱり気づいてた。
分かって、そうやって笑う。
仁王、ずるいよ。


「……嫌……じゃ、ない…」
「じゃろ?」


その答えは当たり前とでもいうように鼻で笑う。
そして、少しだけ私を見る目を優しくした。
……ほんと、ずるい…。


「……詐欺師」


そう言うと、仁王は、ククッ、と笑って


「詐欺やのうて、ペテンと言え」



―――仁王雅治の彼女、ってのはどうじゃ?





計画的恋泥棒
(初めから何もかも知ってて、私の事を見てたのね)