「なぁ〜桜花、ガムくれよー」
「……また?」
「い〜じゃん!減るもんじゃねぇし」
「思いっきり減ると思うけど…」


私の彼氏、ブン太が私の顔を覗き込んだ。
今はお昼休み。
屋上で、のんびりひなたぼっこ。


「さっきお昼ご飯食べたばっかじゃん」
「しょーがねーじゃん。腹減ったんだからよー」


……はぁ、しょうがないな〜。


「ん〜……ガムは無いけど、飴ならあるよ?」
「おっ!それでいいぜー」


私は、ポケットから飴を出した。


「はい、イチゴとレモン」
「お〜!サンキュ!」


そう言って、私から飴を受け取り、すぐさま口に運んだ。


「……なぁ、桜花」
「ん?何?」
「俺が今舐めた飴、どっちだと思う?」
「………え?」
「だ〜か〜ら、イチゴとレモン、どっちだと思う?」
「……何?いきなり…」
「いーから答えろぃ。当たったらご褒美やるぜ?」
「…もう」


本当、強引なんだから……。
私は少し考えて、


「んーと……レモン?」


言ってブン太を見ると、にやりと笑い、


「ねぇ、正解は……………んっ」


私に、キスをしてきた。
いきなりのことで、対応ができない。


「ん……ぁっ」


ころ………。
ただ、口を開けていると、何かが口の中に入ってきた。
甘酸っぱい、丸いもの。


「……っはぁ…」


ブン太の口が離れた。
閉じていた目を開けて、ブン太を見ると、ブン太は舌なめずりをして、私を見ていた。


「どう?天才的?」
「っ、何が――」


ふと、口に入ってきたものに気付いた。
………レモンの味。


「正解。だからご褒美だぜぃ」
「……っ!」
「どう?満足?」
「っもう…」
「キスはレモンの味だろぃ?」
「だ、だからって……」


の、飲み込んじゃったらどうするのよ……。


「イチゴの方も食べさせてやろうか?」
「い、いいよっ別に!」
「ざーんねん」


たまにこうやってからかうんだから……。
でも、


「もうブン太にはお菓子あげない……」
「それはやだっ!」


さっきみたいに、からかってくるブン太も
お菓子が欲しくて、甘えてくるブン太も……。


「ブン太」
「ん?」
「大好き」
「……俺も、大好きだぜ」


大好きな人とのキスは、
甘酸っぱい――





甘酸っぱいレモン味
(まだ、唇に残ってるよ…)