※旧拍手お礼夢



「この気持ちは何だ……」


皇帝と呼ばれる男。
テニス部の副部長であり鉄拳炸裂が有名な男。
その鉄拳を受けた者は身長分吹っ飛ぶという噂もある。
見た目からまず中学生ではないと専らの噂。
本人の知らないところでは子持ちの親父としても幅広く知られている。


「……蓮二、それは……俺か?」
「お前の他に誰が居る」


今までの説明は俺がしていた。
あそこまで詳しいのは達人と言われる俺だからだ。


「…俺の紹介はもういい」
「ふっ、そうだな。俺も飽きてきた」
「!」


そろそろ弦一郎の顔が見るに耐えんものになってきたからこれでやめにしよう。


「ところで、そこで立って何をしているんだ?」
「む……」


弦一郎はさっきからある教室のドアから顔を半分だけ出して中を覗いている。


「何をやっているかは知らないが、とにかくキモイということだけは言っておこう」


せめて顔を隠す為か被っている帽子のツバがドアの角でつっかえて曲がってるのが更に変だ。


「蓮二……聞いてくれないか」
「……いいが、とりあえずそこから離れろ」


そろそろ周りの視線が痛くなる頃だ。
俺は弦一郎を連れて教室から離れる。


「で、何だ?」
「俺は……恋というものをしてしまったのかもしれない」


俺は、一瞬目を開きそうになってしまった。


「…お前がか?」
「…うむ。その……さっきのクラスの女子に……」


キモく肩をすぼめて言った。
妙に乙女だな。


「……だから、さっきの教室をストーカーの如く覗いてたんだな」
「ス、ストーカー!?」


自覚してなかったか……。


「ああ。完璧にな」
「そ、そうだったのか……」


気付くと少し落ち込んだようだ。


「……まぁ、そんなことはいい。それで、その恋の相手の名は?」
「……桜花というらしい」
「ああ、あいつか」
「知っているのか!?」
「俺の幼馴染だ」
「……!!」


その瞬間の弦一郎の顔はとてつもなかった。
そんなに意外そうな顔をするな。


「お、お前には…じょ、女子の幼馴染というのが……」
「ああ、居るさ」
「……てっきり、お前も俺とおなz「お前なんかと一緒にするな」……すまない」


いつの間にか正座をしている弦一郎。


「……桜花のどこを好きになったんだ?」
「ど、どこと言われても……や、優しいところ……とかだな……一言で言えば、可憐だ」


頼むから恋する乙女のような顔をするな。
世の中の女子に失礼だ。


「そうか、桜花をか……」


確かにアイツは優しい。
それに加えて天然だ。
人から好意を受けるのはまず当たり前と言っていいだろう。


「ど、どうだろう、蓮二」
「なにがだ」
「その……俺と…桜花ちゃんの関係は……」


桜花ちゃんとか言うな、気持ち悪い。
恥じらいを込めて指先をくっつけてもおっさん顔には似合わない。


「……はっきり言うぞ」
「…う、うむ」


覚悟を決めるおっさん。
唾を飲む仕草がまさにそのものだ。


「お前と桜花の関係は……」
「……(ドキドキ)」
「……決して上手くはいかない」
「!?!?」


一瞬ムンクの叫びに似たものを見た。


「ななななな何故だっ!ナニユエだっ!」
「落ち着け弦一郎。これ以上読者に不快感を与えるな
「ううううむ……」


真田に代わって謝っておこう。





ジャッカルが。


「それで、理由が知りたいんだったな」
「そ、そうだ…」


難しい顔をして俺を見る。
本当ならあと50mくらい距離をおきたい。


「理由は簡単だ」
「………」


黙って次の言葉を待つ弦一郎。


「俺も桜花の事が好きだからだ」
!!!???


言葉にならない叫びをあげて弦一郎は俺から遠ざかった。
この日から俺も弦一郎も、お互いをライバル視するようになったことは言うまでもない。





恋したっていいじゃないか!?
(ふっ、負ける気がしないな)(キエエエエエッ!)