「じゃじゃーん!!」


突然目の前に現れたユズ。
何やら得意げに自分の前で両手を広げたりくるくる回って見せたりする姿に、至極面倒そうな視線を向けるピッコロ。
眉を寄せ、ぷいっと視線を逸らしてみると、ユズはめげずに何事もなかったかのように視界に入り、また一から同じことを繰り返す。
知ってはいたが、強靭なメンタルの持ち主だ。
これは無限ループになりかねないと思ったピッコロは、仕方なく口を開く。


「なんだその服は」
「オレンジスターハイスクールの、チアガールの衣装!」


びっくりするくらいの即答だった。
やはり、聞いてほしいことはそこだったかとピッコロは心の中で溜息をつく。
明らかにいつもと違う格好だったのはすぐに分かった。
もちろん珍しいし、ユズの見てくれは良いから、ピッコロも素直に言ってもらえれば褒めることは容易い。
目の前でいかにも変わったところを言ってというオーラを出すユズが面倒なだけだった。


「そうか、ちあがーるか。それで、そのちあがーるとは何だ」
「簡単に言うと、頑張ってる人を応援する人のことだよ。こんな可愛い子にこんな可愛い恰好で応援されたら、ピッコロさんもたまんないでしょ?」
「笑止」
「笑止!?」


思わぬ単語にユズは目を見開いて驚く。


「せめてもっと分かりやすく呆れてよー!ピッコロさん冷たいよー!」
「ふん……用を伺うこともせずに来たお前に付き合ってやってるんだ。これ以上の情けがあるか」


突然目の前に現れ、無言の褒めてアピールを受けたピッコロの心象は悪いと言えるだろう。
褒めて欲しいがためにやりすぎたかなと、ユズもごめんなさいと謝った。


「初めての衣装だし、頑張った成果も見て欲しくて……つい。はしゃぎすぎちゃった」


ありありとしょぼくれて見せられると、ピッコロは少し言い過ぎた気になり、誤魔化すように鼻を鳴らした。


「別に、悪いとは言っていない。いつもよりは腰回りがフリフリとしていて動きにくそうだな」
「似合ってる?似合ってる?」
「調子に乗りやがって……似合っているかいないかだと、まぁ、似合っているが……」
「やったー!ピッコロさんに可愛いって思ってもらえた」


そこまで言っていないのだが……まぁ、ユズが喜んでいるならいいか、とピッコロは閉口する。
そして嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるユズを見て、ピッコロはある点に気付いた。


「……なんだか服の裾、短くないか。中が見えそうだぞ」


見慣れぬチアガール衣装のスカート部分がユズが動くたびにつられて動くのを見て、ピッコロは親切心で言う。
スカートの中身はあまり人に見られてはいけないと以前ユズから聞いたことがあった。


「あ、ピッコロさん心配してるんだ!でも大丈夫だよ!これは、見せパンって言って、見せてもいいパンツなんだから!」


ピッコロの指摘にも、自らのことを心配してくれていると思い嬉しがるユズ。
えっへんと胸を張る勢いでピッコロに教えてあげた。


「そんなものがあるのか」


ひらっ。


「!?」


ほう、と好奇心からかスカートの裾を指で掴み、適当な位置まで捲り上げるピッコロ。
予想だにしていなかった行動に、ユズの動きが一瞬にして固まる。


「見せてもいいと言っても、お前がいつも穿いてるのと同じじゃゴフッ」
「ピッコロさんの変態!エッチ!スケベ!!」


覗き込むようにして見ていたピッコロが最後まで言い終えるまでに、ユズはピッコロの腹部に蹴りをいれた。
そしてスカートの裾を抑えながら、その場をダッシュで逃げていく。


「(見せてもいいんじゃなかったのか……)」


まだまだ乙女心はよくわからないピッコロさんなのでした。





乙女心は複雑怪奇
(本当にもう!ほんっとうに、もう!!有り得ない!ピッコロさんってば手が早いんだから!)
(訳がわからん……いい加減、殴る蹴るじゃなく説明をしてほしいのだが……)




今回は短いですが、ひらってさせたかっただけなのでこれで満足です。笑
なんだかピッコロさんの夢を書くと、話が繋がっているわけではないのに今までと同じヒロインを相手にしているような気がしちゃいますね。
それにしてもピッコロさん、どうしてヒロインがいつも穿いているものと同じだと知っているんでしょうねえ……。