※捧夢のため名前変換無し



「はぁ……もう大分、寒くなってきたね」
「そりゃーな…雪積もってるし」


私と幼馴染兼恋人の向日岳人は、二人並んで下校をしていた。
いくらさっきまで部活で動いていたからって、あたたまることはない。
寒いものは寒いんだ。
私と岳人はマフラーと手袋をつけた完全防備で歩いていた。


「結構積もったね。なんかこの景色を見るとすごく懐かしい」
「へえー。なんでだ?」
「だって昔、よく雪だるまとか作って遊んだでしょ」
「ああそういえば。確かになっつかしーなー」


岳人も思い出したのか、懐かしむように笑った。
そして、


「でも、あの頃作った雪だるまって、しょぼく見えたんだよな」
「え?どうして?」
「だってよ、俺と一緒に作ってるユナの方がよっぽど雪だる…」
「てやあっ!」


岳人が最後まで言葉を発する前に、私は近くにあった雪を手ですくって岳人に向かって投げた。
まさか岳人がそんなことを思っていたなんて!
確かに昔は今と比べてぽっちゃりしてたけど、それは子供特有のあれであって決して太っていたわけじゃないのに!


「ぶっ!つ、つめてー!何すんだよ!」
「岳人が悪いんだよ!乙女の心を傷つけたから!」
「おっ…乙女ぇ?ちょっとそれ初耳なんだけ…」
「ていいっ!」


もう一度投げた。
ふう。昔もこうやって雪投げしたけど、腕は衰えてはいないみたい。


「いってえよ!お前、ちょっとは力加減を考えろ!」
「きゃっ!」


油断していると、岳人も近くにあった雪を少し固めて私に投げてきた。
といっても、私と違って顔面ではなく身体を狙って。
……いや、さすがに女の子の顔面を狙うほど岳人は馬鹿じゃないか。


「やったわね!」
「お前こそ!」


と、しばらくここが歩道で民家がたくさん並んでいるのを忘れ、
ついでに中3だという年も忘れ、
しばらく雪合戦の攻防が続いた。


「はあ、はあ……岳人もしつこいね…」
「お、お前には言われたくねえよ…」


お互い雪まみれになってしまったところで、私たちは手を動かすのを止める。
さっきまで寒いと震えながら歩いていたのに、今では肩で息をする始末。
全く、岳人が子供っぽいから私までついむきになっちゃった。


「あーでも……ほんとに、お前とこうやってはしゃぐのも久しぶりだな」


にかっと笑って、岳人がそう言った。


「お前と両想いになってから、あんまし昔みたいにはしゃぐことなくなったしな」
「……そうだね」


両想いだと気付いたのは今から2年前。
中1の冬。だけど、何の進展もなかった。
気付いたからといって、それから何をすればいいのか分からなかったし、
どう関係が変わるのかも予想できなかった。
そんな曖昧な関係がさらに1年くらい続いて、恋人というはっきりとした関係になったのは今年の春。
岳人が私に告白してきたんだ。
あの時の岳人の表情、絶対に忘れない。
今まで見た事ないくらい顔を赤くして、愛しそうに私を見つめていたから。


「……私たち、恋人なんだもんね…」
「ああ…」


関係は明確になったものの、やっぱり私たちは変わらない。
恋人っていったって結局は幼馴染の延長。
こうやって一緒に帰ったり、休日に遊んだりするだけ。
一つ加えるとしたら、


「岳人、好きだよ」
「っ!」


こうやって、自分の想いを好きな人の為に吐きだすこと。
にこっと笑って……岳人を見つめる。


「ば、馬鹿……反則だろ…」
「だって本当の事だもん」
「っ……お前、可愛い事言いすぎ」


恥ずかしそうにそう呟いたと思うと、小さく「ユナ、」と私の名前を呼んだ。
何かと不思議そうな顔を向けると、急に岳人の顔が近づいてきて私の頬にあたたかいものが触れた。
岳人の、柔らかい唇。


「っ!?えっ、ちょっ…」
「…好きなんだから、当然だろ」


自分からしてきたくせに、赤くなる岳人。
もう……墓穴を掘るくらいなら無理しなくてよかったのに。
だって私は、


「岳人、」
「え……」
「手、繋いで帰ろ」
「……ああ」


片方だけ手袋を脱いで。
お互いのぬくもりを感じながら帰るこの道を。
二人きりで歩くだけで……充分、幸せなんだから。





二人だけの銀世界
(来年も再来年も、こうやって二人でいられますように)




こちらは以前、相互サイト様でありお友達でもあるユナ様に捧げた夢です。
加筆修正せずそのままの状態であげ直しました。