「跡部〜!あっそびに来たよ〜っ!」
「帰れ」


両手を広げて跡部にご挨拶。
全力で拒否された。


「もうー素っ気ないなぁ。そんなに私と遊ぶのが嫌?」
「ああ、嫌だな」


肯定するのも早いんだね。


「どうして!?どうして跡部は私と遊んでくれないの?」


ちょっとドラマチックに叫ぶ私。気分は女優。


「お前な………






ここは生徒会室なんだよっ!」


青筋を浮かべながら叫んだ跡部は私より全然ドラマチックだ。鬼気迫ってた。
少し見習いたいと思ってしまった。


「いーじゃん!楽しそうだし」
「全然楽しくねえ。大体、お前部活はどうしたんだよ」


ちなみに、私はテニス部マネージャー。
だから、当然のように跡部と面識もあるわけで。


「つまんないから抜けてきた」
「お前がいねえと練習になんねえだろうが」
「えー。だって、跡部いないからどうしようもなくて」
「だからお前がいるんだろうが。何の為のマネだと思ってやがる」


そうだったのか!


「はぁ……。お前、マネ辞めさせるぞ」
「ごめんって!」


この人は言ったことは実行する人だ。
怖いな、怖い。


「ったく……俺はお前と違ってやる事がたくさんあんだよ」
「え、そうなの?」
「そうだ。俺は生徒会長だろうが」
「生徒会長だったの!?」
「今気付いたのかよ」


だって、跡部はテニス部の部長で……。


「あのな……。テニス部の部長やってようが生徒会長はできんだよ」
「へぇ〜そうなんだ〜凄いね!」


私は何度も頷いて納得する。
そんな私を、跡部は心の底から疲れたような表情で見た。


「……だから、お前は出てけ」
「どうして!?」
「邪魔だからだ」


物凄いうざそうな顔で言われた。


「……じゃあ、跡部のお手伝いするから!ね?」
「結構だ」


私って相当頼りにされてないみたいね。
普段の行いは良いつもりなんだけどなぁ……。


「ま、いっか。で、何をすればいいの?」
「お前な、話の流れを読め」
「いいのそんなの!跡部はこれから何すんの?」
「……はぁ。溜まった書類を片付けんだよ」
「えー!跡部書類溜めちゃってたんだ!」
「お前らの面倒で忙しかったんだよ!」


切れられた。
全く、最近血の気が多いんだから。
マネージャーとして、少しでも負担を軽くしてあげないと!


「よし!じゃあ私も書類を……!」


意気込んで、山積みになった書類に手を触れようとした。
そしたら、


「止めろ!」


きゃ、手握られちゃったっ!
じゃなくて。
止められたんだ。


「もう、何?」
「お前は書類に触るな。分かったな?」


そんなに見つめられると照れるなぁ……。
って、それも違う。
あまりにも切羽詰まった目で見られたから、仕方なく了承した。
どれだけ信用がないのかが垣間見えるね!


「じゃあ、俺はこっちの書類を片付ける」


なんと。
山積み書類は2つもあったのか。


「お前は何もしなくていい」


それだけ言って、私に背中を向け書類に手をかける跡部。
……頑張ってるなあ。


「………暇だなぁ」


何もしなくていいって……。
呟いても跡部には聞こえないみたいで。


「………」


黙々と溜まっていた仕事を進める跡部。
凄いスピードで書類が減っていく。美技だね。


「………」


私はとりあえず、山積み書類の近くにある椅子に座った。


「……ふう」


息を吐く。目の前には大きな山の書類。
これが全部自分の仕事、ってなったら私だったら即現実逃避するだろうなぁ。


「………」


この書類が本当に山になって、私と跡部の間にそびえ立つ。
跡部の方からは、完全にこっちは死角になってる。
私は黙ってその書類に手を伸ばした。
何となくだった。


「………つん、」


暇だったからつついてみただけだった。
本当にそれだけなのに。
書類たちはあっさりと倒れ去っていった。

ズザーーッ!
ドサドサッ。

と、結構な音を立てて。


「何が起きた!?」


跡部は飛び上がった。
まずい。
怒られる。
ボコられる!


「な、何でもないよっ?ただ寝ぼけてたら地面に落ちちゃっただけ!」
「……あんな妙な音でか?」


わあ、疑ってる……。


「ほんとだって!ほら、書類さばきの続き続き!」


何とかこの場は誤魔化した。
跡部は気にしながらも作業に戻った。
そして私は、何とか書類を戻そうと地面にへばりついた。


「って待て。さっきの山積みの書類が………」


なんと、跡部はさっそく気付いて後ろを振り返ってしまった。
丁度私が山積み書類を戻そうとしている時。


「………」
「………あは、」
「………」
「………いやあの、これは、」
「………」
「………」
「………」
「………ごめんなさい!」


跡部の眼力は殺人的進化をこの場で遂げていた。
私が土下座で謝ると、跡部は新たに出来た書類の海に目を向ける。
そして、しばらくして私に視線が戻る。
恐ろしいほどの殺気を全身に感じたため、私は机を飛び越えて逃げた。
しかし跡部が追いかけてこないはずもなく、


「待てゴラァ!てんめえっ!!俺様の手間を増やしやがって!!あれほど触るなっつっただろうが!!」
「だってだってだって暇だったんだもん!!」


書類の倒れる音は、校内鬼ごっこが超スピードで行われる合図だった。





後に彼女は語る、好奇心を抑えられなかったのだと
(初犯じゃない!つい手が出ちゃっただけなの許して!)(それで許されたら警察はいらねーんだよ極刑だ!!)




このお話は元お題夢「つつくと倒れる書類たち」です。
失礼ながらお題から解体させていただき、加筆修正を行い短編ページに移動しました。
私は元々、お話にタイトルをつけるのがとても苦手なのですが……今回は本当に難しかったです。
格好良い跡部様もいいけど、こういう中学生らしい?跡部様も楽しいですよね。