※狂愛?



私は桜花。

昨日、私の双子の姉、深雪が死んだ。
それは、突然の事だった。
深雪は、屋上から飛び降りた。
何の前触れも無しに。


「……うっ、うぅ…」


涙が、止まらない。
大好きだったもの。


「……学校、行かなきゃ…」


皆きっと悲しんでる。
特に、深雪の恋人……。





「皆、おはよう」


教室のドアを開けた。
すると、


「あ……深雪さん」


―――――――――え?
何言ってるの?
私は、桜花だよ……?


「……桜花ちゃんの事……残念よね……」


悲しそうにクラス全員が私に近づく。
何を、言ってるの?


「……っ!?」


自分の机を見た。
そこには、菊が飾られていた。


「彼氏の跡部くんも、あんなに……っ」


私の彼氏、跡部景吾。
席は隣。


「………」


黙っていた。
何も言わない。
一体、何が起こってるの……?


「深雪……」


景吾は、私を見ている。
でも、呼んでいるのは深雪の名前。
私は、桜花だよ?


「……悪いが、今は、お前の顔を見たくない。……桜花を思い出す……」


違うでしょ?
だって、私は桜花で――――――
絶望的な気持ちで景吾を見ていると、急に後ろから手を掴まれた。


「深雪、ちょっと行こうや」
「……っ!」


深雪の恋人、忍足侑士―――
私はそのまま、忍足に屋上まで連れて行かれた。
皆、おかしい。
死んだのは…………深雪だよ?


私は、桜花だよ?





「ねぇ…忍足…」


屋上で、静かに私の声が響いた。


「……驚いたか?桜花……」
「!?」


忍足は、私の名前を呼んだ。


「そら驚くやろな。…深雪が死んだのに、自分が死んだ事になっとるんやから」


何を、言ってるの?
忍足は、知っている……?


「っ、何で……」
「ああ、何も言わんとき。……気持ち抑えられへんくなるから」


そうして、笑った。
それは、凄く狂気的で――――――


「………っ」
「そんな顔せんでも、全部教えたるよ。実は……俺と深雪はな、好き合うてない」


忍足は、ゆっくりと話し出す。


「深雪は跡部、俺は桜花が好きやったんや」
「…!?」


その言葉は衝撃的で。
私にショックを与えた。
だって、深雪は喜んでくれた。


「跡部と桜花は付き合うた。……俺らは、嫉妬に狂ってもうたんや」


何も、言えない。
展開についていけなかった。


「深雪は、こう思ったんや。自分が幸せになれへんのなら、桜花も幸せになんかならなくていい。ってな」


………。
どういう、事……?


「つまり、自分と桜花が双子やから、自分が死んで、それを桜花が死んだ事にしようと思うたんや」


私が、死んだ事に―――――――?


「そして、それは実行された。……桜花は、見たか?深雪の遺書を」


遺書?
そんなの、知らない。


「その遺書の最後には、桜花、自分の名前が書いてあったんや」


っ、そんな……!


「何でっ、そんな……っ」
「深雪は、死なな跡部に想われんかった。たとえ、桜花と思われても、跡部の気持ちが、桜花から離れれば良かったんや」


深雪は……、それで満足なの……?
何で、何も言ってくれなかったの……?


「そして、俺も、桜花が死んでくれな困るんや。一応、深雪と付き合うとる事になっとるんやでな」


っ―――――――


「これで、お前は俺のもんや」


とても、満足そうな顔をして
私に微笑んで。
とても、狂気的に
私を抱きしめ。

二度と離さない。

そう予告するかのように、
強く抱きしめられた――





「愛しとるで――――桜花」


そっと、頬にキスをして。





「これからよろしくな――――深雪」


これから、私は深雪≠ニして過ごさなければならない。





自分の存在が判らなくなる時
(いや、私≠ヘもう死んだんだ)