マイハニーっ!


来た。
うざいくらいデカイ声で。


「大好きっ、若!」


すぐに抱きつく。


「…桜花、抱きつくなって言ってるだろ」
「いいじゃない!私と若の仲でしょっ」
「知らんな」
「いいじゃないっ!若に会いたかったんだもんー」


だからって。


「今は部活中なんだよっ!!」


しかも、周りにはレギュラー全員揃っている。


「日吉、こいつ誰だよ」
「見たことねぇな」
「自分の彼女なん?」
「日吉!彼女が出来たのに何で教えてくれなかったんだよ!」


来た。
うざいくらいの質問攻め。
忍足さん、これが彼女に見えるのか?
鳳、何故お前に教えないといけない。
何度も言うが、今は部活中だ。


「日吉、答えろ。アーン?」


貴方もですか。


「わっ!若モテモテじゃんっ!」


どう見たらそうなる。
その思考回路が信じられない。


「へぇ、可愛ぇやん、日吉の姫さん」


何が姫≠セ。
こんな奴が姫だったら世界はおかしくなっている。
と、いうか。


「こいつは彼女じゃありません!」
「「「じゃあ誰なんだ?」」」
「………」


こいつとの関係を言うのは、俺にとって屈辱だ。


「もうっ、若ったら恥ずかしがっちゃって!」


どこがだ。
たまにこいつの目は腐ってるんじゃないかと思う日がある。
それは……気のせいじゃない事も知っている。


「私が代わりに言ってあげる!」


普通に言えよ。


「私は若のお姉ちゃんなのっ!」
「「「えぇっ!?」」」


皆が信じられないという顔で俺を見る。
……だから嫌だったんだ。


「自分の姉ちゃん、めっちゃ可愛ぇやん」


忍足さん?
それは俺に言ってるんですか?
視線が桜花の脚に向かってますが?


「日吉!お姉さんがいるのに何で教えてくれなかったんだよ!」


だから、何故お前に教えなければならない、鳳。


「へぇ、若、姉貴が居たんだな」
「似てるでしょっ?」
「似てません」


俺はこんなうざい性格じゃない。


「へぇ…。結構可愛いじゃねーの」


跡部さん……。
貴方は忍足さんと同類ですか?
何で腰を引き寄せているんですか。


「どうだ?これから俺様の家に来いよ」
「跡部なんかやめとき。俺ん家に来ぃや」
「俺と一緒に飛ぼうぜ!」


俺の目の前で口説くか?普通。


しつこいが、今は部活中だ。


「え〜、いいのっ?」


桜花は桜花でテニス部のメンバーはかっこいいとか言ってたしな……。


「でも、今日はだめっ」


跡部さんの腕から逃れ、俺の腕を引っ張る。


「今日は若と一緒にぬれせんべい作るんだあー」
「……桜花…」


って、何少し感動してんだ、俺は。


「だから、急いで帰ろっ、若!」
「あ、おい……っ」


俺は桜花に腕を引っ張られ、強制的に家に帰ることになった。





「若、ぬれせんべい、食べさせてあげるからねっ?」
「遠慮する」
「若の為に、頑張って焼いてあげるから!」
「……勝手にしろ」
「うんっ」


こんなメチャメチャな姉貴だが、結構楽しかったりする。







―残された人々(鳳side)―



「「「(ぬれせんべいに負けた)」」」


どうやら、あのお誘いは全て本気だったみたいですね。


「……チッ」


跡部さんは、何としてでも調べあげて捕まえてやる、的な表情をしてますね。


「…んんっ」


忍足さんは、咳払いをして(自称)セクシーボイスに磨きをかけているようです。


「……ふんっ」


向日先輩は、今日もよく飛んでいます。
さて、俺はどうしようかな……。





こいつは俺の…
(憎めない姉貴だよ)