好きな人の事を知りたいって思うのは、誰だってそうでしょ?





「ねぇ、日吉〜」
「……なんだ」


放課後に、図書室で黙々と読書を進める日吉に私は話しかけた。


「今、何してるの?」
「……見て分からないか?」


ここは図書室。
日吉の手には本。


「……本、読んでるよね」
「どう見てもそうだな」


何を言ってるんだ、という顔をして本に目を戻した。


「じゃあさ〜、今何読んでるの?」


読んでいる本にはブックカバーが掛けられていて、表紙が見えない。


「……そんなの知ってどうするんだよ」
「知りたいから……じゃ、だめ?」
「……まぁいい。これは……『学園七不思議』の本だ」
「……七不思議、好きなの?」
「まぁ…興味はあるな」


なるほど……。
一段落着くと、日吉はまた読書に戻る。


「…ねえ日吉〜」
「…今度は何だよ」
「テニスってさ、楽しい?」
「……いきなりだな」
「うん。ねぇ、教えて?」
「……まぁ、楽しいな。楽しくなければ部に入らないしな」


一言で答えて、また読書に戻る。


「………ねぇ、日吉」
「……まだ何かあるのかよ。さっさと言え」
「今……何考えてるの?」
「……はぁ?」
「私はね……やっぱり私は日吉が好きなんだなって考えてた」
「……っ?お前……」


日吉は本を閉じて、私に何か言おうとした。


「ねぇ、日吉」
「………」
「日吉は……誰が好きなの?」
「……っ俺は…」


一瞬、日吉の表情が変わった。
私は、日吉の言葉の続きを聞くのが怖くなった。


「っ日吉……」
「…なんだよ」


急に、不安な気持ちが込み上げてきた。
分からないって、こんなにも怖いんだね。
何だか、涙が込み上げてくる。






「日吉は………私の事好き……?」






これが、最後の質問。
貴方は、何て答えてくれるの……?


「…っ俺は……お前が好きだ」
「っえ……?」


日吉の言葉に、私はびっくりした。


「……お前、俺に聞いておいて俺の答えを無視するな」


机を挟んで、少し抱き締められた。


「……次は、俺の質問に答えろよ」
「う、うん……」
「桜花、お前は……」


その質問は、凄く嬉しいものだった。





「俺と、付き合ってくれるか?」





答えはもちろん……


「っうん…!好きだよ……日吉…」
「俺もだ。……あんな紛らわしい事言いやがって」
「っだって……不安…だったんだもん……」
「……まぁいい。これで、不安はなくなっただろ…?」
「うんっ…」


その後、日吉は優しく、私の頬にキスをしてくれた。
もう、安心しろ。
とでも言うように―――





教えて、知りたいの
(答えてくれて、ありがとう)(…当たり前だろ。好きなのは本当だからな)