唐突ですが。
私は日吉の笑った顔を見たことがありません。


「………なんだよ」


あ、ちなみに日吉は隣の席で。


「………変な顔して見るな」


生意気な奴だ。
こいつとは隣の席暦半年。
同じクラス暦2年。
結構喋っている方だと思う。
なのに……
日吉が笑っている時なんて見たことがないに等しい。


「ねぇ日吉」
「だからなんだよ」
「あんたって、笑える?」


そう言うと、不機嫌そうな顔をする。
というか、何を言ってるだこいつ的な顔で私を見てくる。


「だってさ、日吉が心から笑ったとこなんて私見たことないもん」


先生が面白いことを言っても、無表情。


「……だからって、そんなことお前に関係ないだろ」
「ある!だって、見たいんだから」
「………俺だって笑うぞ」
「嘘!」
「なんで即答なんだ」


同じクラス暦2年の私が言うんだから間違いない!


「笑うとしても、鼻で笑ったりバカにしたようにしか笑わないじゃない」
「…そうか?」
「うん。こう、こんな感じ。……フッ」



ジェスチャー付で日吉の笑い方の真似をしてみた。


「………はは、それが俺のマネかよ」
「え……?」


日吉が……笑った?


「俺、そんなに変な顔してないぞ」
「し、してるんだってば」
「フッ、そうか」


あ……これも、いつものバカにしたような笑い方じゃない。


「お前、面白いな」
「そ、そう……?」
「ああ。全然似てない俺の真似をするとことかな」
「し、失礼な……」


て、ことは……。


「でも日吉、自分の真似されると笑うんだね」
「…は?おい、何もそんなこと……」
「よし!ならこれから私、日吉の笑った顔見たい時は日吉の真似するよ!」
「なっ…やめろ!」
「やーだ。ほら、日吉の真似〜」
「や、やめろって言ってるだろっ」


まだ分からないけど、私が貴方の笑顔を気にした理由。
それは、今後の私の気持ちに繋がっていくのかもしれない。

こんなちょっとした会話で、私の顔はいつも以上に笑ってるんだから。





言葉より、
(フッ……行動だね!)(お前……そろそろ本気で怒るぞ)