「ジロ、ジロ」
「んむ〜〜……」


屋上で日向ぼっこをしていたら、いきなり声がした。
寝ぼけながらもその顔を見ると、俺の顔は一瞬にして微笑む。


「桜花…」
「気持ちよさそうに寝てるわね」


俺の幼馴染の桜花。
また、俺の大好きな人でもある。


「ん、だって……すっごいいい天気だC…」
「ふふ、そうだね」


俺の寝ているすぐ横に座る桜花。


「桜花は、何しに来たの?」
「ジロに会いに来たの」


そのふんわりとした声で言われると、すごく嬉しい。


「でも俺……寝ちゃうよ…?」
「いいよ。私はジロの傍にいるから」


こんなマイペースな俺をここまで見てくれるのは桜花しか居ないと思ってる。
ずっと一緒だった、桜花だから。


「………でも、」
「?」
「ジロもどこにも行かないでね」
「ん…?」
「私はジロと一緒に居る。ジロも、私と一緒に居てくれる……?」


今までと少し雰囲気が変わって、儚く問う。


「……どうしたの?」


俺はその変化に気付き、声をかける。


「だってね、ジロがとても幸せそうな顔をしてるから」
「………」
「まるで、天使みたいに」


俺は、その言葉に驚いた。
桜花がそんなことをいうのは初めてだったから。


「天使みたいに……どこかに飛んで行ってしまいそうで」


切なそうに言った。
俺は、桜花の手を掴んで、


「大丈夫だよ、桜花」


桜花を見つめた。


「俺は、どこにも行かない。ずっと桜花と一緒に居る」
「……ほんと?」
「うん。俺だって桜花の傍に居たい」


すると、桜花の顔は微笑して、


「ありがとう」


俺の手を桜花のぬくもりが握り返して言った。



俺はどこにも行かないよ。
キミが望むのなら。

キミの為なら飛べない天使になるから――





飛べない天使
(だいすきだから、きみのこと)