※悲恋注意



「桜花、話があるんや」


そろそろ、こうなるとは思ってた。





それはある放課後。
私の腕にある傷に触れないように腕を掴んだのが、


「すぐ……終わるから」


侑士だった。


「………」


私は肯定も否定もせず、黙って引かれるがまま歩いた。
侑士の顔を見ただけで、もう分かるよ。





「俺ら、もう別れよ」





ほら、やっぱり。


「これ以上……桜花を傷つけたないんや」


その理由もちゃんと分かる。
凄く分かる。
私は虐められている。
侑士と付き合っていることが周りにバレてから。


「……桜花がこないに辛い思いしとんのは、俺の所為やから……」


切なそうに呟く侑士。
私はとくに表情を表さず聞いていた。


「……ほんま、悪い思うてる…。やから、俺等、別れた方がええ……」


それは、私の為に思ってると思う。
でも、そんなの全然嬉しくないんだよ。
確かに辛かった。
でも、私は一度も弱音を吐いたことは無いわ。
貴方が居てくれたからだよ?
傷だらけの身体を、壊れ物を扱うように抱き締めて、『大丈夫や』って言ってくれたからだよ?


「………いーよ、侑士がそう言うんなら」


本当は『嫌だ』って言いたい。
この気持ち、全て言いたい。
でも、無理なのよね?


「……今まで、一つも楽しい思い出作れんくて、すまんな…」


私は、貴方が隣に居てくれるだけで幸せだったよ?
昨日までずっと幸せだった。
楽しかった。


「………」


私は何も口に出さない。
『悪い』
そう思うのなら、もっと別の判断があったはずだよ。


「……もういいよ?これで私たちは、ばいばいだよね」


辛い。
虐めを受けてる時よりずっと。
どうして、言ってくれないの?

『お前を守る』

その一言でいいのに。


「……ほんま、すまん。今度は、幸せになりや?」


その言葉に少し微笑する。
幸せになんてなりっこない。
貴方の居ない幸せなんて、私は知らない。


「ほな、な……」
「……さよなら」


少し手を振って、二人別々の方向へ進んだ。





貴方は私のことを思って、考えてくれたんだろうけど。
その気持ち……私は分からないよ。

自分の気持ちを伝えられない自分も憎い。




さよなら、私の恋。





伝えたい想いがあるのに
(私の馬鹿。あの人のこと諦められないくせに……)